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OpenAIのDeep Researchの概要を徹底解説|何ができるようになった?

OpenAIから新たなエージェント機能であるChatGPTの「Deep Research(ディープリサーチ)」が公開され、大きな注目を浴びています。

この記事では、Deep Researchとは一体何なのか、その特徴や導入背景、具体的に何ができるのか、公式ドキュメントの内容とあわせて徹底解説します。

Deep Researchとは?

公式アナウンスでは、このDeep Researchが「人間が数時間かけて行う複雑なウェブリサーチを、数十分でこなせる」高い推論力と情報統合力を備えていると説明されています。

ポイント

  • 強化された推論力:大規模言語モデルが大容量データを参照しつつ、複雑な推論を行う

  • Webブラウズ能力:目的に応じてインターネット上のソースを自動収集

  • 段階的検証:情報を見つけるたびに方針を修正し、必要なソースを深掘り

Deep Researchが可能にする新機能

Deep Researchで追加されたエージェント的な要素は、以下の能力を大きく向上させます。

  1. マルチステップのタスク処理
    ただ1つの質問に答えるだけでなく、回答に必要な外部情報を自動的に探索し、複数回にわたって検索条件を更新しながら最終結論へたどり着きます。

  2. 数百もの情報源の統合
    従来のGPTモデルは既存知識に基づく会話が主でしたが、Deep Researchはリアルタイムでウェブを参照・クロールし、数百ものオンライン文献やサイトを横断的に分析。見つけた情報をまとめ、根拠を示しながら結論を提示します。

  3. 大規模データの解釈・構造化
    PDFや画像を取り込んで解析し、表やグラフとして出力したり、テキスト要約を行ったりする機能も強化。データ分析〜レポーティングを自動化できる可能性があります。

  4. 思考の可視化(ステップログ)
    実行中のサイドバー(GUI上)には「どのサイトを見たか」「どんな情報を得たか」の要約が表示され、参照元や検討過程が追跡しやすくなる設計が検討中と発表されています。

なぜ深層リサーチが必要なのか?

OpenAIがこうしたDeep Research機能を開発した背景には、以下のような狙いがあります。

  • 専門的リサーチの省力化
    科学・金融・政策・エンジニアリングなど、高精度・大量の調査が必要な専門領域で、リサーチ作業の多くを自動化するニーズが高まっています。例えば新薬の文献探索、競合他社のデータ分析、国際市場の金融リサーチなど、時間のかかる工程を大幅に短縮可能です。

  • AGI(汎用人工知能)への布石
    リサーチや知識統合は、新たな知見を生み出すうえで不可欠。OpenAIは「知識の統合こそが新知識創出の前提」と位置づけ、Deep Researchを通じてAGIに近づく一歩としています。

  • ユーザーからの要望
    ChatGPTに対して「もっと調べてから答えてほしい」「複数ソースをまとめて信頼度を示してほしい」という要望が以前から多くあり、それらに応える形でもあります。

公式によると「ディープリサーチは我々が描くAGIの一部機能であり、さらに発展させることで、高度な科学研究さえ自動生成可能になる可能性がある」と述べられています。

Deep Researchの活用例:実際に何ができるのか

公開デモから見えている具体例をいくつかご紹介します。

  1. ビジネスリサーチ
    「新規アプリを海外展開する際、各国のiOS/Androidの普及率、言語学習意欲、モバイル端末の普及推移などを調べ、主要マーケットを提案」など、大量の統計データを一括で検索・分析。表形式にまとめるだけでなく、戦略提案まで行います。

  2. 医療・サイエンス分野の文献検索
    「特定のタンパク質に関する最新の研究データを網羅的に探し、研究動向をまとめる」「特許公報を横断的に検索して、類似技術をレポート化」など。

  3. UXデザインやユーザビリティの調査
    世界中のブログや論文を深掘りし「アイコン+ラベル付きボタンのユーザビリティを示す研究」を網羅。そのうえで表形式で論文リストを作成し、最適なUI設計の推奨事項もセットで回答する、といった使い方が可能になります。

  4. 金融商品・マーケット分析
    数多くの経済指標やアナリストレポートを自動で精査し、「今後注目すべき新興国市場」をリスク面から検討するなど、投資判断の参考情報をまとめられます。

要するに、膨大なオンラインリソースに対して自動的に総当たりで調べ、要点を抽出・統合するタスクが得意になったわけです。

他のモデル(GPT-4oなど)との違い

Humanity’s Last Exam(人類最後の試験)の比較

OpenAIはGPT-4oやo1 Pro、o3-miniなど、多数のモデルを公開していますがその中でDeep Researchは「ツール利用やWebブラウジングを自律的に行う能力」が強化された点が大きな差異と言えます。
直近の動きを見ると、OpenAIはそれぞれの目的に特化した機能を発表してきています。

  • GPT-4o
    画像やテキストの多モーダル入力をリアルタイムで処理し、会話形式で応答するモデル。汎用性が高く日常会話やクリエイティブ文章生成に強い。一方、外部Webへのアクセスは標準では搭載していない。

  • Deep Research
    インターネット検索+要約+分析を自動で繰り返し、複雑なマルチステップリサーチを実行。最終的に研究レポートのような完成度の高いアウトプットを提供。
    ただし、リアルタイムで対話を続けるというよりは、大きなタスクを渡して時間をかけて最適なレポートを返す「エージェント型」の動きが強い。

公式の比較表では、「Deep Researchは素早い回答より正確で包括的な回答を重視するため、最大30分ほど処理時間がかかる場合がある」と記載があります。

例:Help me find iOS and android adoption rates, % who want to learn another language, and change in mobile penetration, over the past 10 years, for top 10 developed and top 10 developing countries by GDP. Lay this info out in a table and separate stats into columns, and include recommendations on markets to target for a new iOS translation app from ChatGPT, focusing on markets ChatGPT is currently active in.

日本語訳:GDPの上位10か国の先進国と、GDPの上位10か国の発展途上国について、過去10年間のiOSおよびAndroidの普及率、他言語を学びたいと考えている人の割合、そしてモバイル普及率の変化を調査してください。調査結果は表形式にして列ごとにデータを分けて提示し、さらにChatGPTが現在活動している市場に焦点を当て、新たに提供予定のiOS用翻訳アプリを展開すべき優先市場について推奨事項を示してください。

回答の精度としては以下のように違いがあります。
左:GPT-4o、右:Deep Research

公式で詳細を確認

今後の展望とまとめ

OpenAIによると、Deep Researchは「Proユーザー向けに先行公開」され、その後PlusやTeam、そしてEnterpriseへと拡大していく見込み。将来的には以下が期待されます。

  • より多様なデータソースへのアクセス
    現在はオープンウェブが中心ですが、企業内ドキュメントやサブスクリプションベースのデータソース、論文データベースなどと連携することで、さらに専門性の高いリサーチが可能に。

  • 強化された解析・実行機能
    「Operator」などの実行エージェントとの連携により、オンライン調査だけでなく、リアルのタスク実行まで含めた高度なオートメーションが目指されるとアナウンスされています。

  • 精度・スピードの向上
    まだリリース初期段階のため、処理時間やハルシネーション率の改善、出力フォーマットの安定など、段階的にブラッシュアップされることが予想されます。

まとめ

OpenAIのDeep Researchは、従来のチャット的回答の枠を超え、大掛かりなウェブリサーチやデータ解析を自動で行える画期的な機能です。専門性の高い分野や時間のかかるリサーチ領域で特に有用であり、人間のリサーチアナリストが丸一日かけて行う調査を数十分で完了できる可能性を秘めています。一方で、誤情報や情報源の信頼性評価などの課題も残っているため、使い方次第ではさらなる注意と補完が必要です。

今後のアップデートにより、企業レベルの大規模導入が進み、「人類の知的活動を強力にサポートするエージェント」としての地位を築いていくことでしょう。

公式サイト:https://openai.com/index/introducing-deep-research/


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