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「ハロウィン」/鳶沢みさき

ハロウィン

みさき「う〜っ。片付けめんどくさ〜い」
晶也「めんどくさいって……みさき、全然やってないだろ」

みさきに文句を言いながら窓に貼ったカボチャのシールを剥がす。
ハロウィンパーティーで着た仮装のままゴロゴロするみさきは、そんな俺を見て手足をバタバタさせた。

みさき「晶也が構ってくれない! もうあたしには飽きたんだ!」
晶也「飽きてない。それより起きて片付けを手伝えよ」
みさき「猫の手も借りたいってこと?」
晶也「みさきは猫じゃないだろ」
みさき「違うにゃ〜。今のあたしは可愛い黒猫ちゃんだにゃ〜」
晶也「ハロウィンはもう終わりだ」
みさき「まだ日付変わってないもん! ほらほら、みさにゃんと遊ぼうよ〜」

椅子の上に寝転がったみさきは、招き猫のように手をくいくいと動かす。
正直その格好は可愛いけど……ここでみさきのペースに飲まれるわけにはいかない。無視して天井から下げていたオレンジ色のリボンに手を伸ばす。

みさき「ちょっと、晶也……って、うにゃあ!?」
晶也「みさき!?」

どんっ! と大きな音がして振り返る。
みさきは椅子から転げ落ちていた。しかも落ちたときにリボンを引っ掛けてしまったらしい。

みさき「いたた……」
晶也「大丈夫か!?」
みさき「なんとかね……ありゃ、リボンが絡まっちゃった」
晶也「もう怪我しないように、そのまま静かに待ってた方がいいかもな」
みさき「えー!? 放置プレイだー!? 晶也があたしに放置プレイをしようとしてるー!!」
晶也「違う!」

放っておこうとしても構われようとするみさきの執念は恐ろしい。
する予定もないプレイの話をされるくらいなら、助けた方がマシか。

晶也「仕方ないな……ほら、リボンほどくから」
みさき「はいはーい。んじゃ、よろしくー」
晶也「ったく……がっつり絡まってるな。結び目に引っ掛かったのかな」
みさき「みたいだねー」
晶也「じゃあ、ここを……あれ、ほどけないな」
みさき「わ、わわ! くすぐったい! くすぐったいよ晶也!!」
晶也「ご、ごめん。じゃあ、こっちを引っ張って……」
みさき「あんっ」
晶也「ダメか。……こっちかな?」
みさき「あ、ぁん! ちょ、ちょっと! そこ引っ張っちゃダメ!」
晶也「……わざとやってるのか?」
みさき「ちーがーうー! 晶也が変なところばっかり触るからでしょー!」
晶也「そんなつもりはない! ほら、今度こそほどくぞ。みさき、腕をこっちに伸ばしてくれ」
みさき「了解〜」

それから何とかして、絡まったリボンは無事にほどけた。
みさきは拘束から放たれ、ぐぐーっと猫のように伸びをする。

みさき「あーあ、晶也に新しいプレイを覚えさせちゃったなー」
晶也「バ、バカ、そんなわけないし、そんなプレイをするつもりはない! ほら、さっさと片付けるぞ」
みさき「は〜い」

流石のみさきも懲りたのか、天井から下がっているおばけのオモチャに手を伸ばす。
まあ……ちょっと役得だったと思ったのは、言わないでおこう。