noteでノベルゲーム『薔薇の城』 *5 敢えて剣を深く刺し、腕を貫通させる
敢えて剣を深く刺し、腕を貫通させる
「言ったはずよ。私は貴女を恐れないッ!」
私は刺さった剣を、より深く、剣の根元まで一気に貫通させる。
「うわぁァアアアアアッ!」
熱い。剣が貫通した肩から流れる血が沸騰しているようだ。私は肩で息をしながら、それでも勝ち誇った笑みを浮かべる。
「ここまで深く刺してしまえば、剣を抜くことができないわね?」
「ク……ッ!」
苦々しく薔薇姫が言う。
「自分の心配をしたらどう?」
薔薇姫の表情が青ざめる。
私はもう一本の腕で薔薇姫の喉を締め上げる。4本の指で首をつかみ、親指で気道を力任せに押さえ付ける。
「グッ……う、あッ、ッハ?!」
「苦しいでしょう? 息ができないでしょう? 私が、私が、貴女に好き放題されるだけの女だと思ったなら大間違いよ!」
息ができず小刻みに痙攣する薔薇姫の頭は、それでも少しずつ私の方を向く。
「図に、図に乗って!」
次の瞬間、薔薇姫は突き刺さった剣を力任せに横に振り抜いた。ブチブチと筋肉が裂ける嫌な音がして、私の肩から下の肉がだらりと垂れ下がる。
「ウッ……ク、ぐッ」
私は声を抑えるが、想像以上の痛みに嗚咽が漏れる。対する薔薇姫も、冷や汗を流しながら肩で息をしていた。
「認めて、あげるわ。貴女、諸王よりはマシね。でも、私に勝とうなんて」
すうっ、という音を立てて薔薇姫の剣が私を見る。
「無駄な足掻きよ!」
薔薇姫は大きく踏み込み、勢いよく横薙ぎを繰り出す。間合いが近すぎて、後ろに下がってかわすことができない。やむなく私はその場に身体を低くして頭を下げ、横薙ぎをかわす。
「肩はどうにか耐えたようだけど」
頭上で空を切った剣の風の音が、途中で変わる。横薙ぎの途中で薔薇姫は手首を返し、剣先を真下へ、剣を垂直に構え直す。身をかがめてしまった私に、真下への突きを避ける術はない。
「ここならどうッ?!」
両手で柄を握った薔薇姫の剣が、かがんだ私に垂直に突き刺さる。首と肩の間、骨のない部分の肉がたやすく縦に切り裂かれる。
「ギャァアゥああッ!」
「殺してやる、このクソ女!」
引き抜かれた剣が再び振り下ろされる。後頭部と首の間を狙い澄ましたその一撃は、受ければ無事では済まない。瞬時に私は身を引く。剣は私の右の乳房をえぐり取り、右太股を貫通して床に縫い留めた。気を失いそうな痛みを、歯を食いしばって堪える。
私の股の間が熱い。最初は太股からあふれる血の温度かと思ったが、違った。私は失禁していたのだ。辺りに血とアンモニアの臭いが充満する。
「傑作ね。血と尿まみれの薔薇姫。大人しく刺されていれば、美しい赤い薔薇になれたっていうのに。やっぱり貴女には白い薔薇なんて似合わないのよ」
遠くで、ズン、と何か大きなものが倒れる音がした。
「正門が破られたみたいね。そろそろ終わりにしましょ」
軽々と床まで突き刺さった剣を引き抜き、薔薇姫が再び構える。
「死んで、蝿と蛆にまみれた薔薇になればいいわ」
貫かれた足が痛みで動かない。目の前には、切り落とされた私の右の乳房が白い脂を見せて転がっている。痛みを通り越し、朦朧とした頭で、私は薔薇姫を見る。
そんなに私が憎いの?
私を愛してはくれないの?
なら、私は──。
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