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映画『ゴッズ・オウン・カントリー』を観ました

 映画『ゴッズ・オウン・カントリー』を観ました。前から観ようと思ってはいたものの、なかなか手を出せなかった一本なのですが、ようやっと観ました。

 イギリスのヨークシャー地方で農家に生まれた主人公ジョニー。身体が自由にならない祖父からの厳しい叱責を日々受けながら、牛や羊の世話をしています。自分の人生に自由を見出せず、母親に見放された孤独の中で、酒とその場限りの肉体関係に溺れる自堕落な生活を送っています。ジョニーはゲイ。祖父・祖母の手前、それをオープンにすることはできません。

 農場の繁忙期が訪れ、ジョニー一人では農場を回せないと判断した祖父は、季節労働者ゲオルゲを雇います。ゲオルゲはルーマニア人。ゲオルゲはジョニーとは違い、農業を愛し、牛や羊を愛し、勤勉に従事します。最初は朴訥と真面目に取り組むゲオルゲを雇用者側から馬鹿にしていたジョニーでしたが、次第にこれまでになかった気持ちが芽生えて──というお話。

 お話はおおよそ予想通りというか、終盤までジョニーの稚拙さが目に付いてイライラしっぱなしでした。が、最後にちゃんとジョニーなりに一歩成長するのでヨシ! ってなりました。これなかったらイライラするだけの映画やったわ。

 対して、ゲオルゲの勤勉さには胸打たれます。なぜゲオルゲがそこまで農業に必死になるのか。それを知るとより一層、ゲオルゲへの共感が高まります。

 僕が元々、農業に携わっておられる方々に強い敬意を抱いているのもありまして。小学生の時に河川敷の畑をしている近所のお爺さんのお手伝いをさせていただいたり、お爺さんから畑の一部をお借りして自分で作物を育てていた経験も加味されているのでしょう、農業従事者の働く姿自体を、とても美しく感じるのです。それは同じく小学生の時に宮沢賢治の世界から受けた衝撃と感動ともつながっているのですが。イーハトーヴォ、僕もできることなら一度訪れてみたいものです。

 ヨークシャー地方の荒涼とした荒地の風景も、非常に美しい。鮮やかな空も、輝く太陽も、咲き誇る花も一切現れません。あるのは重くのしかかってくる空と、石造りの壁、あとは泥と雑草。それが美しい。誰しもが感じることではないかも知れませんが、僕には確かに美しい。どこか村上春樹『羊をめぐる冒険』を連想させます。

 子羊がかわいいのも見どころです。親羊が育ててくれなくなってしまった生まれたての子羊を、必死に育てるゲオルゲ。冷えないように自分のシャツの中に子羊を入れて、胸元から子羊が頭を出しつつ鳴く姿を見て、かわいいと思わずにおられようか。

 結末は「えー? そんな上手いこといくー?」と思いつつも、どこかで二人が農場を上手く続けていって欲しいと願っている自分がいました。

 そう言えばタイトル、Gods own country(神の恵みの地)ってどういう意味かなーと思って調べたら、ヨークシャー地方のことをそう呼ぶそうです。なるほどー。

 Instagramの投稿BGMはArctic Monkeys「When the sun goes down」。この曲の出だしが大好きなんです。え? なんでArctic Monkeysかって? ヨークシャー出身だからですよ!

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