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こういう絵を描いていると、絵は上手くならない

 あおり気味のタイトルですが、そして僕も決して絵が上手いわけではありませんが、それでも長らく絵を描いてきた身として「こういう絵を描いていると、絵は上手くならない」という傾向があります。

 自分の絵だけではなく、仕事として他人の絵を見てきた人間の一人として、思うことをここで述べさせていただこうと思います。

 今回は、デッサンについては基本触れません。そういう話は、僕が説明しなくても立派な方がたくさんおられますので、そちらをご参照ください。

 では、10分ほどで描いた、ダメな絵の例です。

ダメな絵 1

 僕は消しゴムを使わない一発描きなもので、線が雑だったりするのはご容赦ください(それにしても、右下に進むに従って如実に集中力が落ちてますね。我ながら酷い)。

 この絵の何がダメなのか?

 「顔しか描いていない」ことです。顔を描くことは、頭部のデッサン力の向上や、表情の描き方の練習にはなりますが、絵が上手くなることにはつながりません。キャラクターを掘り下げる絵と、絵が上手くなる絵は別物なのです。

 さて、もう一つ、20分ほどで描いたダメな絵を挙げてみます。

ダメな絵 2

 絵の丁寧・雑はここでは問わないものとします。

 どこがダメなのかはなんとなくお分かりいただけるかと思いますが、「足の先を描いていません」。なんだよ足くらい、と思われるかもしれませんが、顔付き、腕や指と同じくらい、足でも表情を付けることができます。バストアップばかり描いていたり、靴や足の形が苦手だからと描かないでいると、いつまでも全身を描くことはできません。

 絵が上達されない方の傾向として、例えば「顔だけ」を描く時に、描かれていない胴体や足がどうなっているかを想像せずに描く方が多いのです。

 役者さんやアーティストの顔写真を想像してみましょう。カッコよかったり、かわいかったりしますよね。でも、それは顔だけで成立している美しさでしょうか? 違います。役者さんもアーティストも、全身で演技して表現しています。その全身の表現を、カメラマンが顔から写し取っているだけの話です。

 絵も同じです。キャラクターはイキイキと動き回っています。僕らはその一瞬を、なんらかの基準で切り取っていくのです。これが絵を描くということです。顔だけを描くのだとしても、そのキャラクターがどんな気持ちで、どんな姿で、どんなポーズでいる一瞬なのか。考えてから描くか、考えずに描くか。その差は歴然です。

全身を描いた

 先ほどの絵を、続けて足の先まで描いてみました。足を描かなかった状態と比べて、皆さんはどう感じますか?

 絵そのものは大変雑です。が、顔だけ、腰まで、といった中途半端な絵を繰り返すより、雑で良いので全身を描き切る方が、絵が上手くなりそうな気がしませんか?

 雑に描いたのも理由があります。絵が上手くならない人ほど、絵の細かい部分を描き込んでしまう、という傾向があります。

 部分を描き込めば絵としての情報量が増えるので、一見上手くなったように見えますし、描いた自分の満足感も得られます。しかし、難しいのは「雑だけど、しっかり描けている絵」なんです。これが一番難しいですし、これができると絵が量産できるため、自ずと絵が上手くなるスピードも上がります。絵が上手い人は、描くスピードが速い人が多いです。速く何枚もしっかりした絵を描き続けていけるので、そりゃ上手くなりますよね。細かく描き込むことは、絵が上達するためという点に限っては遠回りになってしまうのです。

 ただ、もちろんですが「雑でちゃんとしていない絵」を量産しても上達しません。そこで「デッサン」が重視されるわけです。デッサンにおいて、細部を描き込むことは求められません。対象の構造を把握して、絵に落とし込むことが重要です。デッサンが把握できていれば、雑に描いても構造が正しいので、しっかりした絵につながっていくのです。

 なに? そういう僕のデッサンが狂ってる? 分かっとるわい、そんなことは。だから練習するんでしょうが。

 ……とまあ、偉そうなことをグダグダ書きましたが、半分は自戒みたいなものです。絵に行き詰まった人が、「ふーん」程度に思っていただければ幸いです。

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