記念樹が一つ増えた日
「記念樹」
それは、記念となるように植えられた植物のこと。
長い年月を経て成長する記念樹は、贈られた人の人生を見守る大きな存在になると言われている。
私が産まれてしばらくして、記念樹が植えられた。
サルスベリ(別名:百日紅)
・ミソハギ科サルスベリ属
・落葉小高木
・夏から秋の長期にわたって花が咲く
どうしてこの木にしたのかはよく知らない。
サジェストで「植えてはいけない」などと表示されることもある。
でも私はこの木が大好きである。
鮮やかなピンクの花に深い緑の葉、青空とのコントラストが実に美しいからだ。
私なりにこの木を大切に思ってきた。
先日、庭に木が植えられた。
その木に私は一瞬で心が奪われた。
『サルスベリ ブラックパール』
真っ赤な花に黒い葉、触れたら取り込まれそうだった。そのくらい美しく、危うかった。
どうしてこの木を植えたのかはわからない。
同じ木が植えられるのは少し不思議な感覚だった。
でも、とても嬉しかった。
記念樹は大変立派に成長し、毎年綺麗に花を咲かせる。強くて明るくて見応えのある木だ。
私もそんな人間でありたいと思っている。
一方、私はどうしようもないくらい神経を尖らせて、息を潜めて過ごすような日々も抱えている。
あの赤と黒に心が溶けるような、最も生を実感する瞬間。
黒の植物に「なんか病んでるみたい」という家族に、後者の私も受け入れてほしいというのは烏滸がましいことだと思っていた。
家族があの植物に私ほど意味を見出しているとは思わないし、投影される植物も不憫だと思う。
でも、ブラックパールが植えられた日、少しだけ受け入れられたような気がした。
サルスベリ(別名:百日紅)
同じ名前、同じ分類だけど、纏う世界はそれぞれ。
どっちも大切な私。
どっちも大切な記念樹。