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水族館年間パスポートの楽しみ方

始めに

 大分県別府市に住んでいた際に、1年間だけ、「うみたまご」という大分市の水族館の年間パスポートをとっていました。

 当時、友達を水族館に行こうと誘っても、「高いから」「友達と行くところじゃない」など、様々な理由で水族館に一緒に行ってもらえなかったため、何度行っても面白い、年パス所持者にしかわからない水族館の楽しみ方を伝授しようと思います。
(あくまで「うみたまご」をどのように楽しんできたかという話が基になりますので、ほかの水族館に当てはまらない場合があります)

そもそも、水族館とは、以下のような4つの役割を持つ施設であると定義づけられています。

①種の保存
動物園や水族館では、珍しい生き物を見ることができます。でも、珍しいということは、動物の数が少なくなっていることでもあるのです。
生き物は、個々の動物園や水族館のものではなく、私たちみんなの財産です。動物園や水族館は、地球上の野生動物を守って、次の世代に伝えていく責任があると考えています(希少動物の保護)。
動物園や水族館は、数が少なくなり絶滅しそうな生き物たちに、生息地の外でも生きて行ける場を与える、現代の箱舟の役割も果たしているのです。

②教育・環境教育
本や映像からでは得ることのできない、生き物のにおいや鳴き声を実際に体験できるのも、動物園の特徴です。また、生き物を見ているうちに「この生き物は、どんなところに住んでいるのかな」「何を食べるのかな」などと思うでしょう。それに答えてくれるのが、動物園や水族館です。 動物園や水族館を訪れると、ガイドが生き物の説明をしたり、動物教室を開いています。また、動物園や水族館の中には、野外観察会を開いて、実際に生き物が住んでいる場所や生態の勉強に出かけたりもしています。動物の生態を理解してもらい、環境教育にも結びつけたいと考えているからです。今、野性の生き物が住むことのできる場所がだんだん少なくなっていることなどを知り、人間がどうすればいいのかを考えるきっかけになれば、とも思っています。

③調査・研究
人間が住む場所をだんだん広げてきたり、戦争したりすることで、野生の生き物が住める場所が少なくなっています。ですから、野生の生き物をなるべくつかまえないようにしなくてはなりません。動物園や水族館も例外ではありません。今では、ほとんど動物園や水族館では、新しくつかまえてくるのではなく、飼育している生き物を増やそうと努力しています。そのためには、その生き物たちの生態をよく知り、動物園や水族館で快適に暮らせるようにしなくてはなりません。そうした生物の研究もおこなっています。その結果、飼育されている生き物の多くは、野生のものより長生きで、子どももたくさん増えるようになっています。

④レクリエーション
(中略)動物園や水族館は、みなさんに楽しい時間を提供しているのです。楽しく過ごしながら、「命の大切さ」や「生きることの美しさ」を感じ取ってもらえるレクリエーションの場は、動物園や水族館にまさるところはないでしょう。ただ、生き物たちも見られることで緊張したり、疲れたりするので、生き物たちが快適に暮らせるように気を配っています。

日本動物園水族館協会(n.d.)「HOME」「JAZAについて」「4つの役割」<https://www.jaza.jp/about-jaza/four-objectives〉(ホームページ)2022.11.22

 つまり、定義の時点で、水族館とは、学術的な意義を多分に含んだ最先端の研究施設でありながらも、それを、体験できるだけでなく、老若男女にわかりやすく伝えるプロであり、みんなが楽しめる場所として提供されている施設であると言えます。
 この定義を踏まえたうえで、改めて、年パスの楽しみ方を解説していきます。

①ショーの裏側


 ショーで披露する技を練習したり、ショー自体の準備をしている期間のことです。そこでは、まだ第1線で活躍していないイルカやアシカが、練習している様子や、水しぶきが増えてくる夏のショーに向けて、どこまでのベンチに水がかかるかを、はかっている様子などが見られます。
 長期的な変化を楽しめる年パス所持者にとって、生き物とトレーナーさんの技術の向上や、次の季節に出すショーを予測しながら楽しむのがおすすめです。

②研究成果を知る

 年次報告や、館内の展示をぜひよく読んでみて下さい。
 そこからは、近くの水族館や大学と協力し、長期飼育の記録に挑んだり、他の水族館と協力して、絶滅寸前の種の、交配に挑んでいたりすることが分かります。
 水族館では時々、水族館同士で、生き物を交換し合うことがあります。そのため、お目当ての生き物が見られなくなってしまうことがあります。しかし、そんな時は、「種の存続のために出張している」と考え、帰ってきたころにまた見に行ってみてください。
 このように、最先端の研究をし続けている研究施設としての側面に気が付くと、1度や2度では分からない、水族館の奥深い魅力に気付けると思います。

うみたまご2020年度年次報告〈https://www.umitamago.jp/wp-content/uploads/2022/04/2020-annual_report2.pdf

③展示(お魚)の変化

 当然ですが、生き物には寿命があります。
 珍しい生き物が入ってきたら、その生き物の寿命が尽きるまでの間しか、その生き物を見ることができません。
 群れで行動している魚などは、年間とをして安定的に観察することができたりしますが、反対に、単体で行動している魚は、なかなかお目にかかれない場合があります。
 水族館は、目を引く有名なおさかなに目が行きがちですが、実は知られていない取っても珍しいお魚がいたりします。

 また、季節ごとに企画展をしている水族館もあります。その際は、同じお魚でも、展示のされ方が変わることで、そのお魚の見えてくる側面の違いを楽しむことができます。
 例えば、同じクラゲでも、「幻想的なクラゲの世界」という展示の中で見るのと、「ハロウィン企画『毒』展」という展示の中で見るのとでは、見え方が変わってくると思います。
 変化を楽しむというのが、なんといっても年パス所持者にしか味わえない特権だと思います。


おまけ
④水族館同士の比較

 これは年パス所持者の楽しみ方という趣旨からは少し逸脱してしまいますが、これまで述べてきたように、水族館は企画部の方々が、それぞれの土地柄や目的に合わせて様々な工夫を凝らしています。その工夫がいかに独自性のあるものであるかは、ほかの水族館との比較でより明らかになります。

 例えば、茨城県にある「大洗水族館」は、サメとマンボーの展示が目玉です。その他にもショーが屋内で楽しめる為、雨の日も暖かい中で過ごすことができます。大阪にある「海遊館」は、中心の大きな水槽を取り囲む水槽の配置が特徴的で、それぞれが各大陸の海を再現しています(私が行ったときはそうでした)。東京にある「すみだ水族館」は、最新技術とペンギンやクラゲの融合が美しく、音楽やにおいなど、五感で生き物を楽しむことができます。

 このように、各水族館の展示の違いは、土地柄(どの水族館と仲がいいか、どの漁港と面しているか、客の年齢層)などにも左右しますので、気分に合わせて様々な水族館の違いを堪能してほしいと思います。

終わりに


 ①~③までで、年間パスポートのオススメの楽しみ方を述べてきましたが、これらをしても、逆に何もしなくても、いいと思います。 (空いていれば)本を持っていって水槽の前で読んでもいいし、食事をするためだけに行ってもいいし、友達といっても一人で行ってもいいと思います。
 年パスは、意外と高くありません。大抵の水族館は年パスの料金を、年間で3回行けば元が取れるくらいに設定していることが多いです。
 なにも、毎年買わなくてもいいと思います。「今年は水族館の年にしよう」などと決めて1年間過ごすのも、いいのではないでしょうか?
ぜひ、自分流の水族館の年間パスポートでしか味わえない楽しみを経験してみてください。

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