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「自分は何者なのか?」を問われ続ける、”再帰性”のよのなかをひも解く〈3分で読めるシリーズ#2〉
こんにちは。
3分で読めるシリーズ二回目の今回のテーマは『「自分は何者なのか?」を問われ続ける、再帰性のよのなか』です。
近頃はフリーランスや副業・複業などで、会社以外で生計を立ている人も増え、「これからはYouTuberだ、インスタグラマーだ、個人の時代だ!」なんて話もずいぶん聞きなれた話になったでしょうか。
自分らしさ、個人の時代、なんていうことを聞くと現代だけのことのように思うかもしれませんが、色々な学者さんたちが昔から考えてきた人や社会の普遍的なテーマでもあります。
今回はそんな話の背景について書いてみます。
話に入る前に、はじめに今回の記事の概要を図にしてみたので、なんとなくこれを頭において読んでもらえると分かりやすいと思います。
昔はただ権力や伝統に従っていればよかった
まだ家柄や身分などで生き方が決まっていた伝統的な世の中では、「自分は何者?」なんてことは考えるまでもなく、生まれたときにはほぼ決まっていたので、考える必要がありませんでした。
例えば江戸の時代、百姓の家系に生まれた人のほとんどは結婚し、出産をし、その子供もまた農業をし、ということを続けてきました。
今みたいにスマートフォン一つで世界中のことを知ることが出来る時代とは違って、情報を得るには実際に行ったり人づてで聞くくらいしかできないので、そもそも今の生活とは別の選択肢を知ることすら難しかったでしょう。
また、自動車や電車などはなかったり今ほど発達していないので、色々なところへ移動することは難しく、特定の集団に属して生きている人がほとんどの中、その集団で仲間外れにされると生きていけないのでその集団や社会の制度に従って生きることになります。
「自分は何者なのか?」を考えなくてはいけない状況とは?
しかし伝統的な社会から近代になっていくにあたり、技術の発展などにより社会の変化は激しさを増し、村社会や組合、身分制度などの伝統的な集団・共同体から、個人は解放されていくことになります。
変化が激しくなるということは、仮に法律や条例など制度を作ってもすぐにそれが通用しなくなり、仕組みや制度の作り替えが起きます。
そうして生まれた社会の変化に応じて、また仕組みが作り替えられ、ということがひたすらに繰り返される中で、私たちはある種の選択の自由を手にするとともに、変化す「自分とは何者か?」ということが常に問いかけられ続ける状況が生じます。
この状態をアンソニー・ギデンズというイギリスの社会学者・思想家は再帰性が増大した世の中であるといいました。
(ギデンズはイギリスのブレア首相がかつて資本主義でも社会主義でもない第三の道の元となる考えを世に出した人です。)
ちょっと難しく書いてしまいましたが、つまりは社会の変化が激しくなり、確かなものがない不安な中で、自分の居場所やあり方を考え続けなくてはいけないということです。
再帰性のしんどさによる影響
常に「自分とは?」を問われる状況を想像してみると分かると思いますが、結構しんどいことだと思います。
案外会社に勤めてサラリーマンをして、普通に上手く暮らしている人ほど、普段こういう面倒で緊急性の感じられない問いは困ってしまうのではないでしょうか?
こうしたしんどさは生きづらさを感じる人を増やし、引きこもり、不登校、ドメスティックバイオレンス、薬物依存など挙げればきりがないほど様々な問題の原因となっているといわれます。
生きづらさと個人化をどう考えるか?
自身の生きづらさから逃れるために様々な犯罪が起きてしまっているのは確かでしょう。当然これらをそのままにしておいてはいけません。
しかしではどうしたらよいのでしょうか?
先ほどあげたギデンズは、再帰性は止めようとするのではなく、再帰的に対処しなくてはならない、と言っています。
激しい変化の中で、その変化を元に戻すことはできないので、私たちの在り方を変えていく。そのためには対話を通して自分も、その周りも変化していくことでどうにかやっていけるのではないか、と。
堂々巡りで答えにはなっていないかもしれませんが、結局のところ私たち個人個人が、自分で納得できる自分の『物語』を、自分で書き続けていくことでしか道は開けないのだと思います。
企業や家族などの集団の一員としての物語(某大企業で~長をしている)だけではなく、初めは外伝やサブストーリーだとしても、自分自身の物語を語っていくことが必要になっていくと、私は思います。
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参考:
小熊英二(2012). 社会を変えるには . 講談社現代新書
出口剛司(2019). 大学4年間の社会学が10時間でざっと学べる . KADOKAWA出版
長谷川公一・浜日出夫・藤村正之・町村敬志(2007) . New liberal arts selection 社会学. 有斐閣