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きみの鳥はうたえる
日常がだらだらと続いているような映画が好きだ
聞こえが悪いかもしれないが、まるで私の日常の延長に存在しているかのような映画がたまらなく好きなのだ
毎日の生活は自分で思っているより複雑で面倒くさい
自分にも他人にもある程度は気を遣うし
日常を描いてくれる映画を観ると、誰かとそんな面倒くさい日常を共有している気分になれる
だから私は、日常がだらだらと続いている映画が好きだ
映画『きみの鳥はうたえる』を観た
主人公の”僕”は最初、とても自由に、気ままに何の気なしにその日暮らしを繰り返すお気楽者であるように見えた
発する言葉はどれもどこか適当で
「誠実じゃない」といろんな人から言われる
そもそも誠実って人が決めた物差しだよな、と思いつつ
なんとなく人の視線を釘付けにしてしまうような不思議な魅力に
スクリーンの前の私も気づいたら虜になっていた
物語が進んでいくうちに、だんだんと”僕”の人間性が現れてくる
『違うんだよなあ』
”佐知子”を想っての同僚への暴力、
言語化できない心のもやもやが爆発した瞬間だった
『あいつは大丈夫ですよ』
同居人”静雄”の母にあげた2つのりんごも印象深い
”僕”の中には重雄が大丈夫な理由がなんとなくではなく確かにあるのだろうと思った
”僕”の優しさに不思議と少しホッとした
惰性が本気になることもある、けれどそうなったとしても言葉が届かなかったら相手はもう自分の前からいなくなってしまう
言葉は脆くて危ういから、自分から出た言葉が本心なのか自分に問いかけることは難しいけれど、対人関係特に恋愛において最も重要なことなんじゃないかと思った
いくらでも嘘はつけるし
「やっぱり嫌だ」と思ったら
それはその時その場所で伝えるべきなんだと思う
お互いに
ひとつひとつのセリフ、なんともいえない一人ひとりの視線
全てがリアルでぞわっとした
「言葉と裏腹な気持ち」を細かく描いた映画だと思う
『きみの鳥はうたえる』
誰から誰への言葉なんだろうか
ハナレグミの『オリビアを聴きながら』を流して考えることにする
(佐知子の歌声、仕草素敵だったな)