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ボクと塔と通天閣さんと。

バベルの塔とインターネット

ボクは塔が好きだ。ふんぞり返っていっちょ前に威張っているようにも見えるし、どこか寂しそうで独り細々としているようにも見える。その天と地ほどの振り幅に何故だかいつも安心感を覚えてしまう。どちらかというと後者の方に惹かれ、ボクと同じじゃないか、なんて思ったりもする。ついつい「大丈夫、お前は独りじゃないよ」と何キロも離れているのに声を掛けてしまうことが多々ある(不審者ではない)。しかし慰めの言葉を掛けた瞬間、塔がボクに「別にお前に心配されなくても平気だし」とツンデレのツンの方で返してくる。間髪入れずに「そんな大きな口開けて喋らなくてもいいのに」と笑ってボクがイジると、決まって嫌な顔をしてそっぽを向いてしまう。この一通りの会話はいつもの挨拶みたいなものだ。

3か月ぐらい前に、高さ390メートルの日本一高いビルが東京に建てられるというニュースを見た。完成は2027年度を予定しているらしい。どんな外観になるのだろうかと思ったけど、なんというか正直これまた大層なビルぶっ立てるんだなーとちょっと呆れてしまう部分もあった。ほとんどの人は日本一がどうとかあんまり興味ないんじゃないかな、というのが率直な意見だ。2か月前には、iPhone12が発売されるらしく、5Gの話題になった。通信速度が最速だとかなんとか。

はぁ、全く疲れてしまうな。心底どうでもいい。最速だとか日本一高いだとか、なんでみんなそんなにお山の頂上を目指したがるのだろう。そういう言葉を聞くたびに、自分が新自由主義的な社会システム、すなわち「競争社会」に放り込まれていることに自覚的になる。みんなが上位数%に入るために死に物狂いで山を登っていく。ある時は力尽きた人間の顔を屍にして次の一歩を繰り出していき、ある時は舌なめずりしながら他人が失敗するのを今か今かと待ちわびている。力無き者はどんどんと脱落していくこのランキングバトルにボクは疲れてしまった。最近流行りのゲームもバトルロワイヤル方式のものが多く、勝ち残った1位しか幸せになれない。

一番高いビルや5Gは、彼ら、つまり成功者の権力を具現化させたものだとボクは思う。手に入れた権力をこの世に刻み込んでおくために、ナンバーワンのものを作る。自分の力を示すために造り上げる。昔から人間は変わっていないのかもしれない。

旧約聖書の「バベルの塔」のように神様が5Gの電波を急に妨害したり、日本語をバラバラにしてボクらを混乱させたりしてくれれば「競争」は止められるんじゃないかなぁ、と日々変な妄想をしては他人に気持ち悪がられている。

【バベルの塔】
"人々は技術を手に入れたことで傲慢になり、自分たちの力を示すために名をあげようとしました。
その様子を見た神は、人々が神の力を脅かすのではないかと危惧します。そしてこの状況になったのは、すべての人が同じ言葉を使う々民族だからだと考えたのです。
そして神は、ひとつだった人々の言語をバラバラにし、地上を混乱させました。お互いを理解できなくなった人々は散り散りとなり、街作りも中止に。"

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シャイガール、根暗ボーイ、通天閣さん

ボクは塔が好きだ。街中でタワーを見ると、砕けたポッキーの袋の中から1本だけ折れていないものを見つける感覚、いわゆるラッキーという気持ちになり、心が躍る。そんな塔は、噂によると隠れるのが得意らしい(これは町田クンが滑り台でこそっとボクだけに教えてくれた)。ビルの隙間からあ、見えた!と思ったら、またすぐにシュッと物陰に隠れてしまう。どうやらずいぶんと素早い動きで翻弄してくるみたいだ。結局最後には見つかってしまうとも町田クンが教えてくれた。でも塔にも不得意なことがあるらしい(これは砂場で倉光クンがボクだけに教えてくれたのでできれば内緒にして欲しい)。どうやら缶けりが苦手らしいのだ。しめしめ、これはいい情報だ。彼の情報によると鬼から隠れるのはとっても上手なのだが、何故だか缶を蹴りにいかないらしいのだ。ずっと隠れているだけで、じっとその場から動かないみたいだ。特にケガはしていないっぽい(あまりにもじっとしているのでケガしてないか塔クンに直接聞いた)。その時から「塔クンはちょっと不思議な子なんだな」と認識している。その不思議さを買われてか、今では「街のシンボルになる」という特殊な仕事をしているらしい。ちょっとした人気者になったようだ。



東京では、主に2人有名な人物(タワー)がいる。

ひとりめは、港区にいる赤面しがちのシャイガール。もうこれがほんっとうにずっと恥ずかしがってるの、いつ会っても恥ずかしがってる。ごく稀に色白の顔もちらっと見えたりもするけど、基本的には赤面。レッドとホワイトが7:3の割合。いつも赤のワンピース着てるみたいで、どうやらお気に入りらしい。あと大好物は激辛カレーらしくて、いつも食べた後にはライトアップ(?)というものをしてるらしい(そのライトアップというものがよく分からなかった)。行きつけのカレー屋があるとかどうとか。毎日通うもんだからドリンクをおまけしてもらってるらしい。数か月前に一緒に行く約束をしたが、それ以降話は何も進展していない。

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ふたりめは、墨田区にいる根暗ボーイ。これまた根っからのネガティブで厄介なんだわ(厄介と言ったらさらに彼は落ち込んでしまうかもしれない)。初めて会った時、めっちゃ顔色悪くてつい「体調大丈夫?」って聞いちゃった。そしたら蚊の鳴くような声で「大丈夫です」って返ってきたんだけど、誰がどうみても大丈夫ではなかった。いつ会っても顔色悪そうなんよ、青白いっていうかなんていうか。体細いしちゃんと栄養補給できてるのか心配だわ。そんな彼も自身の趣味の話になると饒舌になり、マシンガントークが繰り広げられる(あまりにも銃弾が多いのでときどき腕をかすめて痛い)。聞くところによると彼の趣味はコスプレらしい。写真を見せてもらったが、紫や緑、オレンジに虹色とカラフルな衣装に身を包んだ彼はとても生き生きとしていて自分の目にはかっこよく映った。「あ、最近この言葉知ったんだけどこれってもしかしてライトアップ(?)ってやつ?」と聞いたら「違います、コスプレです」となかなかのボリューム(彼にとっては)かつ食い気味で訂正されてしまった。その姿に気圧され、体が少しばかり硬直してしまった。それ以来根暗ボーイに会っていないので、次会う時にちょっぴり緊張する。許してもらえてるかな、

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(↑顔色がダントツで悪い時の根暗ボーイ 背が高い)


そういえば、なにわの塔とも1度会った。衝撃的すぎて今でも昨日のことのように感じる。しっかりと脳裏に焼き付いている。衝撃的な初対面だった。忘れもしないパンチのある名前、通天閣さん。飲んでたのかな、ちょっと赤ら顔だった。「社会イノベーションの日立」と書かれたはっぴを身に纏い、無精ひげ、ばっちりのパンチパーマというストロングスタイル。失礼ながら、初めてお会いした時に「頭のデカい人だな」というのが第一印象だった。すると、「頭のデカいやつや思たらしばくで」とゲラゲラ笑いながら肩を叩いてきた。彼の手にはメリケンサックが握られていた(ボクの錯覚かもしれない)。関西特有の親しみを込めた軽いど突きなのに、筋肉と筋肉の間に拳がめり込んでひどく痛かった(ボクがそう感じただけかもしれない)。心が見透かされているように感じゾッとしたので、その日はたこ焼きだけ食べてすぐに帰った(また通天閣さんに会わないか辺りをキョロキョロしていた)。無論、ボクは不審者ではない。そこはご理解頂きたい。大阪の熱狂とボクはミスマッチだったのかもしれない(通天閣さんに会わなければ再挑戦したい)。今度は通天閣さんがいない日に乗り込むべく、現在入念な計画を立てているところだ。ヒソヒソ、ヒソヒソ、ヒソヒソヒソヒソ、、、

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