置き土産
今 目の前に居るのは間違いなくあなたなのに
ここが異世界をうつすガラスのよう
メールも電話もこのリングも
もうあなたを繋ぎ止められないみたい
「行かないで」も
「離さないで」も
「離れないで」も
容易く口からこぼれた言葉たち
いつから言えなくなったんだろう
いつからか あなたの背中ばかりみてる気がする
もうずっと うまく声をかけられていない
「どこに行くの?」
「いつ一緒にいれるの?」
はぐらかされる言葉ばかりなのどうして
いつから?
ねぇ、いつから
歩きはじめたんだろう
たまに向かい合うダイニングテーブル
テレビより私より手元の液晶ばかりに目を落とすあなたをみて、
"あぁ、もういっか" って。
「どこ行くの?」って
「行かないで」って
あなたが言うんだその言葉たち
もうなにもみないで。
好きだったよって言葉だけ、置き土産。