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「ご縁は大切に。(2月21日)」
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人間とは間違うものである。
そんなことは、誰もが知ってるから、あえてここで私が言うまでもない。
けど、私が演じている伴奏ピアニストという部類のものは、ソリストが何か”やらかしたら”、それを上手にカバーする技術も求められている。
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その時のお相手は、まだまだ若手で経験の浅いソリストちゃん。セットリストはポップス中心だった。
クラシックに比べ、リピートや飛び先の指定が多くなりがち。
その曲は、編曲家が不慣れな上に、譜面を広げるスペースを気にしたのか、楽譜の長さを短くしようと、強引な”リピート”や”飛び先の指定”が多く見られた。
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ごちゃついているのは、ぱっと見でわかったから、事故防止のために、”マーカー”でしっかり色分けして間違い防止には努めていたつもり。
だけど本番で、ソリストが1カ所、飛び先を間違えたの。
私はアッ! と思ったけど、そのまま、何食わぬ顔で、その子について行った。
結果、何が起こったかと言うと、本来よりも、ずいぶんコンパクトな演奏になったの。
しかも、短くなったことでウケたのかは、分からないけど、リクエストで再演することになったのよ。
でも、そのソリストは、自分が間違えたことに、その時点では気づいていない様子。
今度は、正しいように演奏しに行くだろうと感じたから、私は、その子にそっと声をかけてみたの。
「ねぇねぇ正しくやると、さっきよりずいぶん長くなるよ。お客さん、びっくりしないかしらね。どうする?」
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…これは少し以前のお話し。
でも、この事をきっかけに、このソリストちゃんとは、すっごく仲良しになれて、今でも伴奏させてもらってる。
web全盛期の世の中で、誰もが気軽にスマホで連絡を取り合えるのだけれど、伴奏ピアニストのお仕事って、じつは口コミでの依頼が思いのほか多い。
案外、《やらかし案件》のほうが、その後の横のつながりが広がるように思う。
「どんな時でも、ご縁は大切にせねば。」
(MIYABI)
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