ep.75 ガーベラのぺっこりお辞儀を解く魔法
ところで、禁じられた食べ物 is おいしい。
それはわたしにとって小麦粉、ひいてはパン。どうもからだに合わないみたいで控えているのだけれど、久しぶりに欲してしまった。もはや衝動。アバンチュール。バゲットサンドにかぶりついたときの、嗚呼あの幸福感よ…。また次いつ会えるかわからない切なさも一緒に、うまいうまいと咀嚼しました。
こんばんは。たまです。あの魔性の美味しさが、こうして文章を書いていても未だに脳裏にぷかぷか浮かんでくるのです。罪なサンドイッチめ…。
生活の日記
ガーベラがぺっこりお辞儀してしまう。週末に駅の花屋で買ってきたもの。前を向かせようとそっともたげても、くるっと回転してまたぺっこり45度である。
その日のゴールがガーベラを買ったことならば、スタートは靴のお直しだった。修理するには夕方までかかるよ、と言われて、わたしの無計画自由時間は始まった。
最寄りのハブ駅へ電車で出てきていて、家に帰るには微妙な時間。気になっていたリップでも見に行くかね、と駅直結の複合施設でウィンドウショッピングに励む。それも早々に飽きてしまい、スタバで休憩することにした。
コーヒーのおともには向田邦子のエッセイ。お盆からちびちび読んでいる。この日もカバンに潜ませていて正解だった。んま!朝のわたしったらたまにはいい仕事するじゃない。
70年代の文章ってなぜか読むのに時間がかかってしまう。言い回しや文化に手こずるのか。と思ったら、時代を越える大共感が湧き上がり、スルルと読み流れていくことも。そういう山あり谷ありな「読む」行為も、すこし昔の本ならではのおもしろさだ。
そうだっ!この自由時間に15分マッサージでも受けちゃおうか。天才アイデアマンは、スタバを後にしエスカレーターでぐんぐん登って行く。店のカウンターをくるっと覗き込むと、本日の受付はきっかり終了していた。トホホ、世の中そんなに甘くない。
とぼとぼ本屋に入ると、同じ棚にいた女の子ふたりが「これさ今度交換こしない?」「あっ、それぞれ読み終わったら?」「そう!」とひそひそ話していた。なんとまあ可愛い約束。小生、にっこり。
夕方になったので、靴を受け取る。ぼろぼろだった靴は磨かれ修繕され復活していた。「傷む前にまた来てくださいね」の言葉、毎度意識しようと思うのに、恥ずかしながら来月まで覚えている自信すらない。
傷んでいた靴もケアできたからか、いい気分で花を買った。ガーベラを片手で抱いて家路を辿っていると、横断歩道ですれ違いざまに、女の子とパチっと目が合う。
なんとなく視線を感じて振り返ると、その子がはにかみながら手を振ってくれていた。母親に手を引かれながらも、ぐるっとこちらを見やってくれたことが愛おしい。アラジンに出てくるジャスミンのような瞳の彼女に、わたしも微笑んで、小さく手を振った。
お辞儀のガーベラは、どうやら水をうまく吸い上げられてないみたいで、ネットで調べた方法で応急処置をはかる。ちっちゃなプリンセスが微笑んでくれた魔法だろうか、朝にはスクッと伸びていた。
今夜の1曲
John K の parachute を。
推し(つまり好きなひと)のプレイリストで知った歌ゆえ、いつ聴いても甘酸っぱい気持ちが溢れてきて、ポッと心があったかくなる。朝晩がひんやり涼しくなった今日みたいな夜、どうぞ温まっていってください。
ばたばたっとレターパックを買いに走った郵便局で、受付のひとが優しくって(この支店のひとはなぜかいつも優しい)。それだけで、今週生きられるぞ〜〜という気がしているわたしです。
今日もおつかれさまでした。あなたも、わたしも。