『フェーブルアールとの玲瓏』
……ふと、友人が言ったのだ。
「おにおんさんは、如月さんのどこが好きなんですか?」
と。
「そりゃあもう……」
瞬間的に答えられる、はずだった。
そう思っていたのに、ぼくは言葉を詰まらせた。
簡単な問いに思え、その実、大いなる難題である。
さて……
かつて、理解、とは遠い存在である、憧れから始まった感情は幾億の時を経て今や恋に恋い焦がれ恋に哭く状態なぼくにとって「好き」。S・U・K・I。この感情に明確な状況把握と言語化、明文化を行うのならば、そうだな。ほんの少しだけお時間をいただきたい。
……ともかく、如月聖騎士団団長おにおん、ことぼくが如何にし彼女「如月未緒」さんへ好意を抱くに至り、この、好きを、どうにかして他人に伝えなくてはならない、という命題を元に、以下の文章の構築に臨まなくてはいけない、という意思と決意を持ったことを、まずは説明するところからはじめたい。(めんどくせえ文章だなあ、おいい)
それではこれから、如月さんのお話をしよう。
と、その前に……
ぼくはすっトロいことは苦手なタチなんで「公式の設定がどーだこーだ」とか「小説版はこうだった」とか「如月さんは卵が好きで肉が苦手(マジ)」とかそういうことをいちいち突っ込まれても、なんにもしないどころか、ありがたがって養分にしますのでよろしくね。
まず「如月未緒」さんとはどういう存在か。
ひまわりやシクラメン、バラが似合う子は、ときメモに存在する。
こと、如月さんをお花に例えるとどうなるだろうか。
ぼくは、存在することで他を立たせることのできるカスミソウ、スターチス、ガーベラのような、メインに据える花ではない存在と認識している。
手慣れているつもりの人が、夏休み最後の週に、うっかり文系コマンド選択して平日の学校で、ハンカチを拾われる。
そして、そこそこの頻度で下校イベントと爆弾で悩ませてくれる「くらい」の女の子。
「いやー、今回の攻略で如月さんに悩まされた~」
という感想を持つプレイヤーは、ときメモやってて、いないのでは?
誤解を恐れずに言うが、主人公を邪魔することがない、そういう女の子である。
ゆえに。
ゆえに「その他」という印象に残りづらい女の子であることも否めない。自分からデートに誘う頻度も低めでスケジュールを狂わせてくることもなく、ときめき度や有効度も上がりやすいし、デートの意外なものもなく、選択肢も簡単。
「攻略が楽な子」に分類されることの多い女の子だと思う。
そして、箱推しでない方にとっては、何者でもない女の子になっている方が多いはずだ、とぼくは思っている。
では、なぜにその「その他」の女の子「如月未緒」へ恋をし、憧れ、理解を求め、愛へ辿り着いた(と思っている)のか、という話なのだ。
では自己の想いを因数分解をしてみよう。
地味な子が好き?:
ノー。後述するが、如月さんは全然地味ではない。
眼鏡だから?:
ノー。たしかに眼鏡をかけると女の子はイメージが変わり、可愛らしくなることも事実である。だが、決定打ではない。
体が弱いから?:
ノー。如月さんの体弱い設定は、実は特定イベの時のフレーバーテキスト程度である。具体的にいうと、演劇部入部、海、ビビール、の三点だけなのである。
(6個中3個……い、いや、言うまい)
イベントでは「が、がんばります!」と両拳を握りしめ、厄介なイベントに前向きに参加し、しっかりと役割をこなす。
それが如月さんなのである。
……あれ?もうか、可愛すぎないか……?
では何が、我が、我らを如月さんへの駆り立てるのか。
おにおんはここに一つの答えを持っている。
それはギャップ。
文芸部であれ、演劇部であれ、彼女は部活で自己の体の弱さに真っ向から向き合い、記憶を、思考を、決意を炸裂させるシーンが多々ある。
文芸部ならば「貧血と私」
演劇部ならば「カルトマン」や「ロメオとジュリエッタ」
あの『地味』と判断された『なんでもない』女の子が、見えない翼を広げ、羽ばたく様。
このギャップ。間隙。
すべてはこの瞬間のために。
まずは一旦、結論を出そう。
ああ、だからぼくは如月さんが大好きなのだ。
■ 各イベントの考察、考え得る裏舞台
幸い日本は思想の自由が認められている法治国家のため、各イベントの詳細や前後の経緯を妄想しても、いまのところギリ合法っぽいのでススメていきますね。(グイグイな人)
「空はどこに行っても青いということを知るために、世界を回って見る必要はない」
早速参ります、春。
「絶叫マシーンビビールの罪」
申し訳ないが、いきなりのトップギアである。
遊園地に(すでにあるジェットコースターを撤廃して出現する)、なんか景色が真横にスクロールする、いささかやりすぎな乗り物「ビビール」。
命名に悪意しか感じないこの乗り物。並ぶものといえば「デビルガンダム」とか「最終鬼畜兵器」くらいか?いやガンダムと怒首領蜂の話はさておき、この重力に喧嘩を売ったマシーンへ、体が弱い、と出会いのしょっぱなからさんざん言っている如月さんを乗せよう、というイベントがこの春イベント。
ドSとかを超えて、いじめや虐待なのでは……?あたまおかしいんか?
実際、おにおんが高校生の時に先輩宅でときメモプレイ中、イベント回収のためにこのデートを取り付けたところ、その場にいた如月さん好きの先輩であり同志の方に
「いますぐやめろ!」
と、超怒られたのをおぼえております。
思えば、ぼくよりも早く、ガチ恋の領域に踏み込んでいたのでしょう……
ちょっとうらやましい。
さて、このイベントのモウソウをすると、如月さんはきっと、この日のデートの朝、遊園地にいくの楽しみだなあ、と心躍らさせていたのだと思います。
おそらく、第一希望は観覧車(如月さんは観覧車が大好き)、次にゴーストハウス(怖いけど、主人公くんがそばにいてくれるのが嬉しい)。
しかしまさか、きらめき市で最も体に悪い乗り物に乗ろう、などと常軌を逸した提案が主人公くんより発せられるとは、露とも思っていなかったかと思います。
実際、イベントを発生させると「本当に乗らなければいけませんか……?」という、不安100%の怯えを見せてくれます。
ここで主人公くん(各所で異様な口の悪さや愚かな提案をすることに定評がある人)は「絶対乗るの!」と如月さんに言い切ります。
その返答が、これです。
如月さんは、自身の体調と主人公くんとの思い出を天秤にかけ、進むことを選択します。ああ、これが決意。言い換えれば勇気。未知を既知へと変える好奇心。それらの原動力は恋心。如月未緒、推して参る!
はい、ダメでした。
当然の帰納と帰結。
この子は血が足りないんだ!立っているだけでもやっとな時があるのに、宇宙飛行士の訓練みたいなマシーンに乗せやがって。
気絶から目覚めた如月さんは「やっぱり」と口にします。予想できていたのです。この結末は。
このデートをみたことがある人は知っているかもしれませんが、この後のやり取りは、もう、目も当ててらんないです。
……如月さんが謝罪するからです。
「こうなることはわかっていたのに断らなかったわたしが悪い」と。
しかし、しかしときめきメモリアルの業の深さはここから。
このイベントのあとにも、如月さんは「今日は疲れてしまったけど、また誘ってくださいね」と、フォローの声をかけてくれます。
涙。滂沱。心にヒビが入るほどの謝罪の感情。ごめんなさい、すみません、もう二度としないから、嫌いにならないで……
ここからは完全にモウソウですが、如月さんは「ああ、今日は主人公くんに迷惑かけちゃったな……もっと体が強ければ、いろんな乗り物に乗れて、楽しさを共有できたのに……」と悲しんでいたに違いないと思います。
あとから出てきますが彼女は、告白の時にも「体が弱い」というコンプレックスをいつも抱えて生きている女の子。今回もきっと、自分が悪かったんだ、という想いを抱え帰路についたに違いありません。
片桐さんの海イベントみたいに笑い話になったり、鏡さんのゴーストハウスみたいな「可愛い子と綺麗な子どっちが好き?」みたいなアフタートークもない、投げっぱなしのデート終了。
ああ、なんでこんなイベント作ったのでしょうか。拳を握りしめ虚空に振りぬくことしかできない自分を呪います。
……じゃあ、このイベント無視すりゃいいじゃん?
は?イベントは全部見たいでしょ!!
如月さんのずれた眼鏡、可愛いでしょうが!!(すっごい形相)
「内面を熱望する者は、すでに偉大で富んでいる」
次、夏
「海とパラソルと直射日光」
先に言いますが、このイベント、如月さんの季節イベントの中で一番、いっちばん、マキシマム ザ イチバン大好き。
これは如月さんの魅力の神髄、骨頂を見られるイベントと言っても過言ではありません。
このイベントはデートの約束をとりつけるところから、もうすでに始まっている、とぼくは思っています。
主人公くん「8月某日、海にいこうよ」
如月さん「えーっと、はい、いいですよ」
この時点で、夏の暑い海、紫外線降り注ぐ如月さんにとって、最も相性の悪いフィールドへの参戦をOKしてくれているのです。ラブです。ラブが動いているからこその承認です。
さて当日、海で待ち合わせして現地集合するけですが(もっと手前で合流して荷物もってやれよ、主人公くん)、如月さんは海についた途端「わたし、準備してきますね」といったんフェードアウトします。
そ
し
て
ここからが、ラブの秘奥。
如月さんは直射日光への耐性がもう、こうかはばつぐんなほどの特効弱点なので、パラソルを借りてきます。自分で。主人公くん、運んであげて、マジで。
そして、これ
音にきけ、目にも見よ。この子は直射日光が不得意属性なのに、主人公くんとの「大切な海の思い出」の空気を壊さないよう、海にも入らないのにしっかりと、しっかりと水着に着替えてくれて来てくれるのですよ。
男子高校生なんて基本的にいかがわしいモウソウしかしてないんですよ?
そこをしっかり踏まえてのこの配慮。女神よ。崇めるタイミングは今、このときよ。
かわいい。本当に20世紀の絵で一番かわいいかもしれない。
過言じゃない。うるさい。なにも聴こえないぞぼくは。
日陰であたたかい風と、それ以上の主人公くんのぬくもりを感じながら、夕方まで時は過ぎます。何をするわけでもなく、のんびりと。
あと主人公くんは、如月さんの水着みれたから実際お得、とほざくのですが、如月さんも「え、あんまり見ないででくださいね……恥ずかしいです」と照れ照れ、まんざらでもないご様子。
あーーーーーーーーーーー
あーーーーーーーーーーー
すいません、一回、限界を迎えたもので。
青春のシミュレーター、ときめきメモリアル。
ここにあり。
「真理は人に属し、誤りは時代に属する」
そして秋。
「読書と溶ける時空のトロイメライ」
木の葉が赤く色づき、きらめき市も秋を迎えます。
如月さんは下校イベントなどで「夏が終わり過ごしやすくなりました」と言ってくれます。暑いのはヤダよねえ。
流れる季節。芸術の、読書の秋。
天よ叫べ!
地よ唸れ!
今ここに、如月未緒の時代、来たる!
さあ刮目せよ!
さて今回のデートは図書館。
如月さんは実際プレイすると、結構積極的に学校で堂々とデートに誘ってくれる魂から主人公くん大好きっ娘なので、このイベントをみたことある方も多いかと思われます。
さてデート発生前の如月さんの心境ですが、こりゃもうウッキウキですよ。図書館ですから。貸し出し禁止の文学書なども読みたい放題。傍らには大好きな主人公くん。本への没頭度も高まることこの上なしです。
そして……
主人公くんの問いかけも、聞こえぬ程に読書に没頭する如月さん。
その心は空想の世界を自由に飛び回っていることなのでしょう……
嗚呼、麗しい。
麗しすぎる。
正面からの笑顔も可愛いけれど、横顔の美しさ、流れ落ちる緑のおさげと黄色いリボンのコントラスト。黄金律。
こと主人公くんとのデートにおいて、あの気遣いのできるご令嬢が、かける言葉を意に介さないほどに、本の世界に集中している。
隙。
このような、うっかり属性をも持っているのが、そう、如月さんなのです。
今、その心には真実と虚構の境目は曖昧となり、煌びやかな世界の住人となる。
そして、気が付いた時には……
良い。
それで良い。
それが良いんだ、如月さん。
夢中になれる存在が、この世界にあるということは、どんな絶望をも跳ね返す力になるのよ。
そのままの、あなたでいてください。
むしろ、そのままが、あなたの真実なのだから。
ああ、なんて華麗なるイベントなんだ。
これでもまだあなたは、地味、と言えますかな?
「感覚は欺かない、経験が欺くのだ」
来たる、冬。
「奏でられる愛のメロディー、そして選択」
「恋愛映画を観に行こう」
ふふ、なんだかジョジョの4部のサブタイトルみたいだね。ふふ、よくわからん?ぐぐれ。
さて冬のデートの舞台は映画館。見に行く映画は『愛のメロディー(PS版)』。
なお、SS版は『告訴』。GB版は『純愛小説家』ですので、お間違いなく。
きっと原作小説やテレビの映画予告などで、如月さんもこの映画が気になっていたのでしょう(モウソウが加速するわ)。
映画館で合流する二人。席を見つけはじまる映画。
そして……
すすり泣く声が隣から聴こえてくる……
秋にも見せてくれた、感受性。
その爆発をここで見る、いや魅ることなるのです。
映画の内容に心打たれ、涙する如月さん。
なんて尊い。
ああ、時よとまれ。世界はこんなにも美しい。
現実にメフィストフェレスが存在しなくてよかった。
この言葉を、死を賭すことなく発することができるのだから。
(ゲーテみ)
涙をこえて、映画を観終わる二人。
デートも終わり時がきたのかな?
……と、そんなときに、運命の選択肢が、顕現す。
窮極たる設問への選択を、主人公は迫られます。
さあ、答えはいかに……?
「天の一番美しい星を取ろうと思えば 地の深い悲しみを究めようとする。 近いものも遠いものも 湧きかえる胸を満足させない」
ここまで、如月さんと過ごす一年間をご覧いただき、感謝の極み。
画面右のスクロールバーをご覧ください。
けっこう、下に来ましたね。
終盤ですね……
……
……
……
と、思うでしょう……?
ふぅはははははは、かかったな!
如月さんの魅力は季節イベントだけではない!
ランダムイベント、および告白が、未だ残っている!
なお、未だの「未」は「如月未緒」の「未」だ!!
というわけで、我が想いはこの程度では止まりません。
続く!!
後編!!