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見たものがたまたま伝説になったというほうが正しい

同年代の人間と話すと必ず話題にして、必ず羨ましく言われる経験が俺にはある。

『GLAYの20万人ライブに行った』

当時GLAYは大流行していた。曲を出せば売れて、ライブも即完売だった。1999年当時俺は中学生だった。20万人ライブの前に、GLAYの東京ドームのライブに行った。チケットはチケットぴあに電話することで購入できる。したがって鬼電人海戦術が最適解。みんなで頑張ってたくさん電話をかけると購入できる可能性が増えた。7人くらいで電話攻勢をしかけたが、最初のチケット販売は買えず。人気だったので東京ドーム追加公演がかかり、そこで当たったというくらいチケットはとれなかった。結局、中学を休んで電話しまくった友達の1人が当てて、人数分買ってくれてたから東京ドームに見に行くことができた。

次は20万人ライブに友達3人で行こう、とチケットを買った。これはそんなに苦労なく、すんなり買えたと思う。そもそも完売なんかしないんじゃね?と当時GLAY本人たちが出演するラジオで行っていた。『完売したらrain歌うよ』と冗談で行っていたのを記憶している。rainとはGLAYのメジャーデビューシングルで、YOSHIKIも楽曲制作に入っている。多分ライブでrainは歌いにくかったのかな?メンバーの思惑は外れて、20万人ライブは完売した。だからrainは20万人ライブで歌われた。でもワンフレーズだけ。ボーカルのTERUは恥ずかしそうだった。

当日幕張メッセの駐車場に向かう。駅を降りてすぐに人間たちが塊となった。そのままひとかたまりで道を進む。途中の屋根のあるところが暑すぎてきつかった。今確認すると気温は33度だったらしい。人間がかたまって屋根のある場所をじっとりと歩く。普通に歩けるわけはない。ナメクジのように、ところてんをゆっくりとひねり出すように、人間が大きな物体となって進む。熱気で自分達を蒸しながら。

しばらく高台を進み、エスカレーターの降り口に来る。パッと視界が開ける。そうすると上の記事にあるような景色だ。天空の城ラピュタのムスカ大佐は、「人がゴミのようだ」と言ったが、まさにそう思った。人間はあまりにもたくさん集まると人間には見えなくなるらしい。俺が到着した頃は半分埋まってたかな?というくらいだが、それでも10万人だ。10万人が視野に収まると、なんかよくわからなくて笑えてくる。蒸されたところてんの一部はそんなことを考えてエスカレーターを下る。

ライブで用意されていたブロックはかなり後ろのほうだった。GLAYのメンバーの誰がどこにいるのかもはっきりわからない位置。それでも見たければブロックのステージ側のほうに行く。疲れたらブロックの後ろにいく。花見でこんなスペースとったら他の人に怒られるわ、ってくらい人数に不釣り合いなブロックの広さだった。20万人存在しても問題ないくらいに幕張メッセの駐車場は広かった。

俺たちのブロックからはGLAYのメンバーは見えないどころか、いちばん大きな画面すらも豆粒のようだった。それでも、いやむしろそれがすごく心地よかったように覚えている。俺は人混みが嫌いなので、現地にいながらに多少現地から離れて見てるくらいの感覚がよかった。暑かったのは会場に着く前だけで、会場では風が通り涼しかったのもあった。

セットリストとかはまぁいいとして、覚えてる曲をいくつか。

1曲目に『HAPPYSWING』だった。歌詞に東京という言葉が入っているところを幕張と言い換えていたのを覚えてる。まぁライブでは定番だろう。どこの土地でもカバーできるから。そんな単純な演出でも人は効いてしまう。だって今でも覚えてるんだもん。GLAYのオフィシャルファンクラブの名前もこのHAPPYSWING。1年はファンクラブに入っていたことがあるので知っている。

hideの曲をカバーしたのも覚えている。『MISERY』という曲。

MISERYが収録されているこのアルバムは、全部の曲がめちゃくちゃよかったので聴いていたが、高校生のときに友達の桜井くんに借りパクされて友達じゃなくなった思い出がある。返せよ桜井。

この曲を生で聴けたのはすごくよかった。事前にTERUがhideについてのMCを始めたときに理解できてテンションが上がった。俺はあまりhideに対して思い入れはなかったが、広すぎる空に演奏するもんだから、なんだか届いたような気がする。

『サバイバル』も覚えている。サバイバルはアルバムバージョンだと『SURVIVAL』となり歌詞が若干違う。サバイバルはVHSでのみの発売だったので、サバイバルのバージョンの歌詞は当時むしろ貴重だった。今はサバイバルのVHSも公式に動画が発信されている。たまに観るが今でもいいと感じる。公式に感謝と共にいい時代だなと思う。

ライブの帰りは全く覚えていない。満足度が高くて何の不満もなく、友達と話しながら帰ったからだろう。いい日を過ごしたな。としか思っていなかった。

その次の日の朝のニュースで空撮が流れていて、初めて上からの映像を観た。「ほえーすげー。この中にいたのかー。」という感じで実感はなかった。

結果的にあの20万人ライブは伝説になった。伝説の目撃者になったわけだが、当時は別にそんなこと考えてなかった。ハマっていて行ったバンドのライブがそうなっただけだ。世の中何があるかわからんもんだ。とりあえずあの時行く選択をしてよかった。多分一生語れるネタになったから。めでたい。

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