かみーゆの選ぶ2020年ベストソング 50-21位

年間ベスト50位から21位まで。ここからはコメント付きでいきます(すみません、ツイッターで発言を控え気味にしてたら1年間の思いが溢れすぎて書きすぎてしまいました)!

50. Saweetie feat. Post Malone, DaBaby & Jack Harlow - Tap In (Remix)
Produced by Dr. Luke
"Daddy on the FaceTime, you could never take mine/End up on the Dateline, ugh-ugh-ugh (Bitch)"
"My Type"に続き、一世を風靡したクランクのヴァイブスを感じさせる(Too $hort "Blow The Whistle"をサンプリング)、強烈にキャッチーなフックが特徴的な"Tap In"。いま旬の3人のラッパーを迎えたリミックスは、それぞれのラッパーの持ち味は出てるものの相性が微妙な感じが愛せました。

49. 羊文学 - 砂漠のきみへ
Produced by 塩塚モエカ
"それを掬って瓶に集めて/いつか花にあげる日まで/とっておくよ"
何か社会に馴染めないでいる誰かを遠くで見守っているような歌詞が独特で”優しい”感じがしていて。言葉がすっと心に入ってくる感覚を日本の曲で味わったことがあまりなかったのもあり、素敵だなと。繊細なのに全体的に音圧高めのギターが耳に心地良いです。

48. The Chicks - Julianna Calm Down
Produced by The Chicks & Jack Antonoff
"Just put on, put on, put on your best shoes/And strut the fuck around like you've got nothin' to lose"
Juliana、Harper、Katie、Eva、Violet、Juno、Yaya、Berta、Hesper、Naomiと次々に自分たちの娘や、若い世代の女性に向けて「落ち着いて、大丈夫だから」と語りかける曲。その目線が今のThe Chicksだからこそという感じですね。ソングライターにはJulia Michaelsも参加。

47. NiziU - Make you happy
Produced by J.Y. Park & Lee Hae Sol
"忘れちゃった笑顔も 大丈夫 ちゃんと取り戻して"
NiziU Project見てないので、メンバーのこと何もわからないですが、尊い...。日本語をK-POPアーティストが歌ってるように歌う、独特な節回しが面白いですね。ちなみにマスタリングエンジニアとして、Rihannaの"ANTi"を筆頭に多くのヒット曲を手掛ける大物Chris Gehringerの名前があって驚きました。最近だとBTSの"Dynamite"にも関わってるのですね。

46. Hayley Williams - Simmer
Produced by Taylor York
"Oh, how to draw the line between wrath and mercy?"
「激しい怒りは静かなるもの」という第一声でこの曲の方向性が完全に決定づけられます。人生を振り返って「私は本当に怒っているんだ」と気付いたHayleyは、Paramoreだったら叫んで表現しただろうその思いを、淡々と歌っていきます。しかし激情を胸に秘めながら。

45. Miranda Lambert - Bluebird
Produced by Jay Joyce
"Yeah,  I'm a turner/I turn pages all the time"
2019年に密かに結婚していたMiranda Lambertが、その3日後にその幸せを噛み締めながら歌った"Bluebird"。これまでのMirandaの曲とは違う軽やかな印象の強いこの曲で、8年ぶりにビルボードのカントリーラジオチャートで1位に輝きました。困難があっても希望を持って歩み続けたMirandaに思いを馳せながらファンである私は聴きます。

44. Run The Jewels feat. Pharrell Williams & Zack de la Rocha - JU$T
Produced by Wilder Zoby, Little Shalimar & El-P
"I get broke too many times, I might slang some dimes (Back to trappin')/You believe corporations runnin' marijuana? Ooh (How that happen?)"
今年のBlack Lives Matterを象徴する1曲であると同時に、より広い視点で貨幣社会や大企業による搾取が黒人の貧困や差別に繋がっていることを示唆している曲。コーラス部分はPharrellっぽいというかKendrick Lamar"Alright"でのフックを思い出させるような単調なメロディの繰り返しで、そこにミニマリスト的でありながら先鋭的なビートが絡むのが面白いです。

43. 藤井風 - 帰ろう
Produced by Yaffle
"憎み合いの果てに何が生まれるの/わたし、わたしが先に 忘れよう"
死生観について歌われてる曲ということで、MVの公開とともにかなり話題になっていた曲ですが、日本の曲で細かく歌詞が分析されるようなものって近年あまり記憶にないので、Genius時代の曲だなと感じました。Bメロでスタッカートとスラーを繰り返すところや曲展開がピアノのエチュードっぽいのにドJ-POPな印象を与えるのが面白いなぁという印象です。(本当にエチュードっぽいかは保証しかねます)

42. Flo Milli - Weak
Produced by J. White Did It
"Used to text "Good mornin'", now you stopped, that's inconsistent/I've been in my bag, don't got time to be in my feelings"
Tik Tok時代の申し子Flo Milli。"Like That Bitch"も良かったですが、個人的にはこちらがお気に入りでした。SWV"Weak"をサンプリングした味わい深いトラック上で、Flo Milliに夢中だが不釣り合いな男たちを"weak"と呼び、完全に違う意味でSWVの曲を拝借している面白さ。コーラスの"These n****s weak"のすぐ後に"Ewww"と合いの手が入るのもFlo Milliらしいユーモアで良きです。

41. The 1975 - If You're Too Shy (Let Me Know)
Produced by Jonathan Gilmore, George Daniel & Matthew Healy
"I've been wearing nothing every time I call you/And I'm starting to feel weird about it"
今年は80年代の煌びやかなヴァイブスが流行の一つだったと思いますが、サックスが印象的なこの曲もそれに近いものを感じます。一方で、インターネット上での不穏な恋愛関係(しかも誰もが何となく理解できてしまう)、もしくはストーカーチックなオンラインでの出会いを描いた歌詞は、直接出会うことが物理的に難しくなったり、OnlyFansが流行った2020年の世相に不気味なほどマッチしていました。

40. Gabriel Garzón-Montano - Agüita
Produced by Cauca Flo
"Put the bag by the piano, Aretha, don’t play with my Franklins (don’t play with my Franklins)"
"Agüita"は水の意味。ニューヨーク出身コロンビア人のGabrielは、英語とスペイン語を織り交ぜながら歌うシンガー。アルバムはMoses Sumneyのようなアトモスフィアなサウンドが顔を出したりもしていましたが、このリード曲はよりトレンドを意識したトラップ調で、ハードにラップを織り交ぜながら変幻自在なサウンドを渡り歩いていきます。何よりこのカリスマ的なオーラにはゾクゾクします。

39. Phoebe Bridgers - Garden Song
Produced by Phoebe Bridgers, Tony Berg & Ethan Gruska
"I hopped the fence when I was seventeen/Then I knew what I wanted"
無駄を極限まで削ぎ落したようなプロダクションは、Elliott Smithの大きな影響を感じさせるのですが、こんな地味で複雑な曲をファーストシングルに据えるPhoebeの大胆さに脱帽です。「ツアー中に繰り返し見た夢」についての曲であることをZane Loweとのインタビューで明かしているのですが、それが「Phoebeが殺したスキンヘッドの隣人の埋まる庭」についての曲なわけで、Billie Eilishも驚きの陰鬱さ。なのに美しい。

38. The Pussycat Dolls - React
Produced by ivares, Will Simms & Johan Gustafson
"Looking for a little confrontation/Now I know the nice guys turn me bad"
The Pussycat Dollsの11年ぶりの再結成ソングが完成度の高いポップソングで、なのにCOVID-19の影響で再結成ツアーが自然消滅(少なくとも来日公演は中止が決定済み)するなんていうミラクルを起こしてしまうのが、まさにNicole Scherzinger...。時代遅れになりつつある「勝ち組女のセクシー」を打ち出しつつも、今風でK-POPっぽい進化したサウンド、そして従来とは違うフックを打ち出しすぎないクールなプロダクションで、”こうあるべき”カムバックソングでした。

37. SZA feat. Ty Dolla $ign - Hit Different
Produced by The Neptunes
"Hit different when I think you might be/With somebody else (Na-na-na, na)"
私は、肩の力を抜いて自分の人生を歌うSZAが好きです。私は客演でも大きなインパクトを残すTy Dolla $ignが好きです。私はThe Neptunesによるミニマムなサウンドが好きです。「言い争いすればするほど恋に落ちてしまう」と歌うSZAの陥っている状況は不安定なのですが、何かその関係に確信を持ってもいるようです。SZAがミュージックビデオで表現する自然体の美しさとセクシーさがそれを物語っています。

36. TWICE - I CAN'T STOP ME
Produced by Michel "Lndgren" Schulz
"Risky, risky, wiggy 위기/This is an emergency"
「Dua Lipaの"Physical"とThe Weekndの"Blinding Lights"を融合したような、陰がありつつも80年代ディスコ風の煌びやかポップソングをTWICEに歌わせよう」なんてこと一体誰が思いついたのでしょうか(感謝の意)。Dua Lipa"Good in Bed"のプロデュースも手掛けたK-POPご用達のMichelのプロダクションは隙がなく、個人的にクリエイティビティに限界を感じていた印象だったTWICEにとって、この曲ならびに収録アルバムが重要なターニングポイントになりそうな予感がしています。

35. Daði Freyr - Think About Things
Produced by Daði Freyr
"Baby, I can't wait to know/What do you think about things?"
COVID-19の影響で中止となったユーロヴィジョン2020にアイスランド代表として出場予定だったDaði & Gagnamagnið。コンテスト自体は消滅したものの"Day 17: morale is weird"と題された、この曲を使ったQuaratineツイートが大きな話題を呼び、ヴァイラルヒットを記録することになります。Jennifer GarnerやAriana Grandeなど多くのセレブリティーにも言及されるなど、憂鬱な2020年に愛された、底抜けに明るいファンキーなポップソングでした。

34. Megan Thee Stallion - Captain Hook
Produced by LilJuMadeDaBeat
"I like a dick with a little bit of curve/Hit this pussy with an uppercut"
今年初頭に出たEP『SUGA』から。本人的には当初これが一押しの曲だったのではないかと思うくらい、怒涛のクレヴァーなリリックの数々、キャッチーなフック、そして下ネタ(大体キャプテンフックって!)を連発する、Meganらしい隙のないアンセム。

33. The Killers - My Own Soul's Warning
Produced by Jonathan Rado & Shawn Everett
"I tried going against my own soul's warning/And in the end, something just didn't feel right"
The Killersは今でも、かつてのようなアリーナロック・アンセムを生み出せることをこの曲で証明しています。内なる葛藤を歌いながらコーラスで自由になるカタルシスも素晴らしいですが、今までのザラっとした感覚ともエレクトロごりごりなサウンドとも違う、しかしその延長線上にあって、なのに今までにない音響的な深みを感じるサウンドが聴いてて心地良く、まだまだこのバンドが進化し続けていることを感じます。

32. Jazmine Sullivan - Lost One
Produced by Dave Watson
"And if it's too late, I understand/Sometimes it's too late, to make amends"
失った大事な人に対して募る思い、深い後悔。激情(劇場)型で赤裸々な歌詞が印象的だった2008年のデビュー作『Fearless』と比べて、人間的に成熟し、より複雑な想いを吐露する姿に胸を打たれます。もちろんヴォーカルパフォーマンスは、今の音楽界でも屈指の上手さで、どんよりとしたサウンド、くぐもったギターループ、声がよく響く部屋で隣にJazmineがいて自分に向かって歌ってくれているような近さが、他のどの曲とも違う唯一無事のトーンを生み出しています。

31. Bad Bunny - Yo Perreo Sola
Produced by Subelo NEO & Tainy
"Que ningún baboso se le pegue (No)[Perverts, don't get near her (No)]"
"Yo Perreo Sola"は「一人でトゥワークする」という意味で、”日常で溢れているセクハラを気にせずクラブやソーシャルメディア上で踊りたい”女性をエンパワメントするアンセム。プエルトリコで起きたトランスジェンダー女性の殺人にもインスパイアされているこの曲のミュージックビデオで、Bad Bunny自身がドラァグをいくつも披露している他、「有害な男らしさ」の殻を破り、ジェンダーに囚われない様々なスタイルのファッション・表現をしており、今年を代表するMVの一つとなりました。

30. Fiona Apple - Shameika
Produced by Amy Aileen Wood & Fiona Apple
"Shameika said I had potential"
学生時代に上手く友人が作れずいじめに遭っていたFionaに、「あんたってポテンシャルあるのに」と”真実の言葉”を放ったShameikaは、クラスメイトだった黒人の女の子でした。「これまでの人生で惨めで辛い思いをしてきたときに、私のために立ち上がってくれる人は誰もいなかった」と感じていたFionaにとっての唯一の思い出だったエピソードを基にしたこの曲は、その優美なアレンジとともに鋭い感性が光る1曲です。

29. Tate McRae - you broke me first
Produced by Blake Harnage
"Now suddenly you're asking for it back/Could you tell me, where'd you get the nerve?"
Tik Tok人気から今年になって突如浮上したアーティストの一人、Tate McRae。とは言ってもRCAレーベルに所属するTateは"all my friends are fake"で昨年から既に強烈な印象を放っていたし、他のTik Tok発スターと同じようにレーベルからのプッシュがあった結果の上昇だと思ってます。アメリカのオルタナティブラジオが好みそうなBillie EilishやPVRIS系のサウンドでリリックのテーマはAlessia Caraに近いTateに、たしかに新鮮味はないかもしれません。それでも何か輝くスター性を私は感じますし、自分のことを気に掛けないexに向けたブラックユーモア的なこの叙情詩。愛せます。

28. Chloe x Halle - Do It
Produced by Scott Storch
"That's how you do it, keep stuntin' on your enemies/Good vibes only"
シンプルなトラックに美しいメロディーや二人のハーモニーが乗った90年代~00年代R&B風のクールなパーティーアンセムで、Chloe x Halleは天下を取りに来ました。この楽しい時間を誰にも邪魔させないという強い意志、自信、大人の余裕。これはChloe x Halle的に初めて商業的成功を収めた1曲であると同時に、近年のScott Storchプロデュース作の中でも最も大きな印象を残した曲の一つになりました。

27. Red Velvet - Psycho
Produced by Yoo Young Jin & Druski
"Hey, now we’ll be okay/It’s alright"
2019年も終わりに近付いているという時期にこの世に産み落とされた、K-POPアンセム。というか、Zimzalabim、Umpah Umpahときて、この曲を持ってくるVersatilityに敬礼をしたくなりました。Camila Cabelloが喜んで歌いたがりそうな、高音域のファルセット、トラップとアルペジオなシンセが印象的なユニークなサウンド、どこを切り取ってもフックになりそうなキャッチーさ、と良いポップソングに必要なものをすべて兼ね備えています。暗闇の中に一筋の光を見出すかのような歌詞は2020年を予見していたかのようでした。

26. Grimes - Delete Forever
Produced by Grimes
"Cannot comprehend, lost so many men/Lately, all their ghosts turn into reasons and excuses"
オピエート中毒で亡くなったLil Peepに心を動かされて書き始めたこの"Delete Forever"は、10代の頃に同じ状況で亡くなった親友に捧げられた曲となりました。歌詞はドラッグの死を美化するものではなく、負の側面をしっかりと見つめているGrimesの切実な想いが感じられます。個人的にも初めて、Grimesの人間的な姿を垣間見た印象深い曲でした。声の加工も抑え気味で絶妙に震えているヴォーカル、珍しくギターの音が前面に押し出された美しいトラック、一方でGrimesらしいフレッシュさも備えたプロダクションが素晴らしいです。

25. Declan McKenna - Rapture
Produced by Jay Joyce
"Rapture in my head/I keep looking up like I'm already dead"
まるでDavid Bowieの再来かのようなSFチックなテンションで、機械的に"Jet black"とリフレインされるところから、Elton Johnのようなハイパーエナジーで超キャッチーなポップソングへと変化していき、最後に向けてテンションが壊れていく"Rapture"は、まさに”狂喜”的。個人的に今年最も刺激的なロックソングの1つでした。

24. Doja Cat - Boss Bitch
Produced by Sky Adams & Imad Royal
"I'm the whole damn cake and the cherry on top/Shook up the bottle, made a good girl pop"
「私はビッチ、私はボス、私はビッチでボス、グロスみたいにキラキラ光る」で今年の流行語大賞を受賞し、紅白初出場も決定しているDoja Catの"Boss Bitch"(どこの世界線)。ボスでビッチであることを主張するアンセムはこれまでも数々存在していましたが、10年前の流行を思い出させるような良い意味でチープなエレクトロのトラックに乗せてDoja Catがそのカリスマ的なラップスキルを披露しているという点で、異色のクラブバンガーとなっています。

23. Dua Lipa - Physical
Produced by Jason Evigan & Koz
"All night, I'll riot with you/I know you got my back and you know I got you"
1980年代の華やかなダンスミュージックにインスパイアされたこの曲で、Dua Lipaは2020年のポップミュージックのど真ん中に躍り出ました。これまでにない力強い歌詞とそれに呼応するヴォーカル、様々な名曲が引き合いに出される圧倒的アンセム感、すべてが2020年の生きる希望でした。アメリカでは"Don't Start Now"のヒットとの兼ね合いからかラジオでのリリースがなかったようで、大きなヒットにはなりませんでしたが、確実に今年を代表するポップソングでしたね。

22. Fontaines D.C. - I Don't Belong
Produced by Dan Carey
"I don't belong to anyone/I don't wanna belong to anyone"
誰とも違うユニークな存在であることはスターの証であり、それと同時に悲しく虚無に襲われることもある。一人になって自分自身と向き合う時間が増えれば増えるほどそういう強烈な孤独感に襲われるのですが、この曲は「ただその孤独をそのままに受け入れ」ており、達観しているようにすら思えます。メインストリームでも”孤独”や”憂鬱”は大きなテーマの一つですが、ポストパンクのフィールドにおける彼らのスタンスは、もはや他人を必要とすらもしていない、強い意志を感じます。

21. ROSALÍA - Juro Que
Produced by ROSALÍA & El Guincho
"Atraco un banco esta noche y que me lleven pa' prisión[I'll rob a bank tonight and that they'll take me to prison]"
スパニッシュギターを前面に押し出し、再び自身のルーツであるフラメンコに立ち返った"Juro Que"。これまでのポップにクロスオーバーした楽曲群では消えかかっていた彼女の優美で滑らかなヴォーカルの魅力を改めて味わえる曲。一つ一つの音符に込められている情感に心を持っていかれました。まるでメロドラのような大げさなリリックは、世界的ブレイクのきっかけとなった『El Mal Querer』のストーリー仕立てにも似たものを感じます。

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