東京ってすごい①
私は、ただそこに居合わせただけだ。
そして彼も、ただ歩いてきただけだ。
今日も沢山の人と同じ電車に乗り、沢山の人とすれ違い
話したり、文字を打ったり、干渉したりしなかったり。
普通のことだ。先日も、ただの普通の日だった。
午前中、職場で不意にTwitterを開けてみたら、
誰かのRTで、ONE PIECE 97巻の大きな広告が目に入る。新しくなった新宿駅の東西自由通路。
「これは絶対に今日行く。」と決心が固まった。
こんなに突然で、嬉しく、晴れやかな月曜があって良いものか。これまできっと何度も、同じような気持ちになったことはある。
しかし、広告に大写しの漫才師、ミキと、EXITをみて、なんだか目が霞んだ。
テレワークと出勤をほぼ交互の形で繰り返していたが、
その日はたまたま出勤だった。出勤している日は、買い出しなり、適度に寄り道しても良いことにしている。
本当は定時で上がりたかったが、なかなか思うようにいかなかった。時計を気にしながら、やっぱ今日は辞めるか。。と思った時。
「ごめんこれ、明日着でいいから送ってくれへんかな」
営業さんに声を掛けられる。
…マジか、今から伝票を、、
「あ・・新宿ですか、、?」
「うん、○○○さんの、いま名刺渡すわ」
「わたしこれから新宿に用事あるんで、いけますよ!」
インスタライブを見てくれていた方はお分かりかと思うが私は「たまたま届け物があって、新宿に来ました」とか言っていた。
しかし咄嗟に営業さんには、逆を言っていた。
推しに対する異常な集中力。
ラッキーだった。そこからは早かった。
電車に乗り、まずは届け先へ向かう。
開放感で、Twitterを開き
『たまたま新宿に用事があります。30分後に』
と書き込んだ。
車内でツイートを遡ると、
後輩芸人・三浦さんへのリプライがあった。
『さすがにツーショ撮ってくる!!』
おやまあ。
そしてすぐに思う。なるほど、今日もニアミスですね。
きっと、ひとけの少ない終電頃、冠番組の時間にでも現れて、番組終わりにツイートしてバズらせるつもりだ。
そんな風に思った。
ただ、耳の中のイヤフォンが、ランダムのはずなのに、やたら「ワンチャン・サマLOVE」「NO MORE 恋泥棒」「I got I get it」
さっきからなんか鳩尾がふわふわする。
お腹も少し減ってはいたが、
思っても無いことを考えそうになる。
ヘイ Shiri やめてちょうだい。
届け物を終え新宿駅へ向かいながら、
インスタライブでもやってみるか。
と思いついた。東京のロケ地を紹介したことがあったから、軽いノリで、誰に向けてということもなく雰囲気だけ流そうかな。
東西自由通路は、普通の休日の1/5程度の人出だった。
ライブを開始し、来てくれた方に挨拶し、ここへやってきた経緯を説明し、
長い長い広告を流し見する感じ。
推しの前で立ち止まり、たわいも無いことを話す。なんでも無い内容だった。
画も持たないし、話すことも無くなってきた。
そろそろ終わるか。
自分用に写真も撮って帰りたかった。
「こんなかんじ。」じゃあ、と言おうとした。
画面の奥から、
オレンジ色のTシャツの人が歩いてきた。