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「むき出し」を読みました

※ちゃんとネタバレあります。

兼近さんが好きだ。

小説の感想をまとめるとこれに尽きます。
一週間以上考え続けたけどこれでした。

その域を出ることは多分ないです。ファンだから。
そういう感想文です。

若手お笑いブームが本格的に波打ち始めた2019年、
久々にお笑いにはまって本格的に「EXITに飛び込んじゃえ」と思ったのはその8月なので、兼近さんの報道が出る本当に直前。
「その子は悪い子じゃないんですーーー!!!」
彼の事なんて全く知らないのに、私はてるちゃんと同じ気持ちだった。

全然知らなくても、ちょっと見ていれば
ライオンの赤ちゃんを上手に抱っこしていた彼は
24hTVでつまんないいじめられ方されていた彼は
妹の手紙で泣き笑いするような彼は
誰かを傷つけるためだけに理由もなく罪を犯すような人には
どうしても見えなかったのです。

ほとんど「うちの犬が吠えないんだから」と
同じような理由。
ほんとそれ何なんだよ。わかる。

でも、明らかに自分なんかよりずっと
心根の優しい男に違いないのです。
そんな彼が「人に優しくなれる本になっている」と言うので、彼自身が今、なぜそんなに優しく在れるのか知りたくて、
自分も優しくなりたくて読みました。


もう読んだ方はわかってくれる前提で行くのですが

まーー何もかも違うじゃないか。

違いました。
知りたいと思うには、全部違うと知ることだ。
って誰かが言っていましたが
それも本当にそうだと思ったし、

文字になることでとにかく届き方が全然違う。

石山の過ごした時間を追体験させてもらうと、
聞いたことのあるエピソードやフレーズが
自分のなかの記憶とか、風景と結びつけられながら、
物語とともにふんわり肉厚になって、
自分事になっていく感じ。

それが初めから終わりまでずっと続く。

人を素手で殴ったことがないから知ることがなかった
「他者の存在」を
人を素手で殴ったことがある人に教えてもらう。
本当は誰も殴らない方がいいんでしょうけど。

しかし、ぬるま湯の半身浴でなんでも大目に見てもらってきた私では、自分が悪いとか、周りの存在がありがたいなんて、はっきりと気づけないのも当然と言えば当然。

いやな気持ちはどこから来て、それを捌け口から出せたら、どこへ行くのかを真剣に考えることはない

というか。めちゃくちゃ非人道的に見えるかもしれないけど、簡単に言い表したら自分はそうだし、そういう人が一丁前に社会を回していたりもするのが、この世の現実だったりする。

ないものを数えて文句言って、
自分の意見があるみたいな態度。
「俺は、自分が不幸でありたくて。そうすることで色んな人に構ってもらえるから、記憶から排除してたのかな。」
そうです。
私は完全にまだここだった。

懺悔し始めたらきりがないのでやめますね。

自分に酔うのも違う、可哀想と思うのも違う、
全部違うのだ。
私はとても幸運だから。


『幸せは、もうそばにあるものに
   気づいていく作業』

『自分のこと最底辺だと思ってるから
    周りの人全員スゲェって思える』

『途中から自分に無いものじゃなく、
    有るものを数えるようになったんですよ』

『テキトーに楽しく』

   ・
   ・

今までたびたび渡してもらってきた、
「言葉」でしか無かったものたちが
高解像度になって、自分の現実に重なってくれる。
いろんな種類の孤独を知っている石山みたいな、
優しい人が書いた本。

ハイエースの中でママの弁当を食べてる時
「ゆーちゅーぶをひっくり返したらラジオっしょ?」と、底抜けに明るい時空が飛び込んでくるところはたまらなかった。

聞いてるのか聞いてないのかわからない、
きっと自分のことなんて知らないであろう自分のような人に、なにか届いて欲しいんだ、一人にさせたくないんだと、
強く感じて胸が熱くなった。

「生きて来た世界は全く違うのに、対面したら仲良く話せないのに、文字を読んでいる瞬間だけは同じ階を踏みしめてる気がして、一人じゃないんだと孤独感を消してくれた。」


同じように届いているよと、ただそれだけお伝えできたら。
誰かの中の石山たちへ「届け」と祈るように、
むき出しの太陽は、明日も明後日もひたすらに燃えるのでしょう。

だめだ。

「好きすぎ」以外の言葉でいうの恥ずかしすぎる。だれか助けてくれ。もういい、届かなくていいよ!!!!!

アーーーーーーーーーーーー!

でも最後にこれだけは。

燃えるようなカバー絵も大好きですが、
むき出しをむき出した中の、銀色のハードカバーが本当に素敵。まるで、一面雪で覆われた心の中のようです。
触った感じも、踏み固められて凍ってる雪のようだし、壁のようにも感じる。

知らない人も多いかもしれないけど、
かまくらとか、雪の中ってあたたかいんだよなーとか。
自分の昔過ごした故郷の景色や、そこをひたすら歩いていた自分のことも、少し思い出したりして。

きっと一生忘れないんだ。

なので、この本を丸ごと、
ずっと大事にしようと思いました。
これからもよろしくね。


全然まとまんないでやんの。
今日はここまで。


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