なぜ牛なのか
かつて田園風景が広がっていた我が国の中山間地
農地だった場所は、人工流出などによって、後継者がいなくなり、
農家の高齢化が進むにつれて
耕作放棄地など、人が管理しきれなくなった土地が増え続けている。
そんな荒れ地の開拓に欠かせない存在が、牛だ。
なぜ牛なのか?
他の動物ではダメなのか?
牛はその大きな身体で草木を倒し、食べながら、荒れ地を開拓する能力を持っている。
背の高いパイオニアプランツで覆われた土地を切り拓くには、
ヤギでは動力が足りない。
また、馬の放牧場では
牛のように再生せず、
草の無くなった裸地が広がる。
なぜ、牛では土地再生ができるのか?
その理由として、現時点では
主に2つの要因を考えている。
①行動範囲と草の食べ方
牛は行動範囲が広いので、草の成長点まで食べなくても、十分な栄養が摂取できる。
一方、馬はイネ化植物を好み、成長点まで食べる。
また、足指1本の奇蹄目で、起伏の激しい山地よりむしろ、草原を走るように進化してきたと考えられる。
後述するが、馬は牛に比べて消化能力が低く、濃厚飼料無しに十分栄養を摂るためには、かなりの草の量が必要になる。
そこで、限られた放牧地で必要な栄養量を満たすために地際まで食べてしまうのではないかと考えられる。
②糞の違い
牛は4つの胃を持ち、植物の繊維を十分消化することができる。
そのため、糞は十分堆肥化しており、よく土を肥やす。
微生物タンクである第一胃ルーメンに微生物を飼っており、反芻しながら微生物に分解させた食物繊維を吸収することができる。
(ちなみにヤギもルーメンを持つ)
一方、馬は胃ではなく、盲腸(大腸)に食物繊維を分解する微生物を飼っているので、
胃や小腸で十分に消化吸収できない。
そのため糞には、7割くらいの未消化の食物繊維が含まれ、堆肥化するには何らかの方法で追加で発酵させる必要がある。
つまり、馬の糞はすぐには土の肥やしにならない。
見た目についても、牛の糞はべちゃっとしているのに対して、
馬の糞はコロコロしており、土なじみは悪そうだ。
耕作放棄地が増え、人の手に負えなくなった土地が増え続ける今の時代、
牛の開拓・土地再生能力が
われわれを救うに違いない。
土をよくするための
「森川式放牧」を、広げるにはどうすればいいだろうか。
まずは、モデルを作っていこう。