『朝が来る』

  • 「朝が来る」を読んだ。

  • 最後救いのある終わりでよかったけど、ひかりのターンがしんど過ぎる。借金取りが出てきたらもう辛い話確定だもんな。現実の世界にも今もまさにいる存在で一歩踏み外したら自分もそっちに行くのも相まってこわすぎる。

  • なんか疲れちゃって感想もあんまりないな。不妊治療の苦しみもリアルに感じて、描写力が流石作家と思った。が、私は今のところ非当事者なので(予備軍ではあるのかもしれないが)、当事者がどう思うのかは分からないけど……。

  • 女性2人を主人公にしてるおかげで、男性の妊娠・出産における当事者性に関する色々なシチュエーションや問題が、時にさりげなく、時に直接に描かれてるのが個人的には印象的だった。

  • 今気づいたけど佐都子夫婦が自分たちの理由で名付けた「朝斗」という名前、割と「ひかり」という名前の方と響き合う名前だよな。どれくらい意識して作者が名付けたのかは分からないけど、そのあたり素敵だ。

  • 小説的なテクニックのうまさも感じる(「理想のひかり」像、2人の女性の人生、姉と妹、そして家庭像など、端々に対比が置かれてる)。テクニックのうまさと言っても、それに気づいたところで特に嫌味もなくてそこも含めてまた上手い。

  • 読み終えて暫くして振り返って思うと、ひかりは案外(辿ってきた人生の道筋と犯罪を犯したという事実の割に)世間擦れせずに、彼女は良くも悪くも戸惑い続けたままに生きている気がした。ある種、まともな親や大人に彼女自身が恵まれないために、単に幼いだけの状態が続いているというか。広島以後は本当に、友達だけでなく、人間関係が希薄だったんだろうなとも窺える。だからこそ無辜の被害者ぽさというか、人生のままならなさが際立つんだろうな。

  • 自分に近いのはおそらくやっぱり佐都子の方で、それでもそんなに上手くきちんとは生きれない気がするなぁと思う。

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