webカメラ R-18(pixiv_投稿)
ネットで好みのAVを探して彷徨っていた休日。
可愛くやらしい女の子を探している筈だったのに、ゲイのページに飛んでしまった。
うわ、と思っていると肌の白い細いけど引き締まった首から下の体が映る。
窓があって、白い部屋にベッドがあって、そんなシンプルな画面。
自分で艶めかしく見せ付けるように抜いて居て。
さっきまで探していた女の子よりも綺麗な肌だなと思って居たらおもちゃが出て来て。
控えめに上がって来る切ない声に「俺は何見てんだ」と閉じようとするとふと何かに気付いて画面をまた見た。
「…」
見たことのあるものがそこにあった。
「面白い動画見っけたんだよね」
次の週末に満を持して数年来の友人宅で話を切り出す。
高校と大学が一緒で社会人になった今でもたまに会う。
彼女が居たり居なかったりの俺とは違って、モテるくせに彼女らしき女を見たことがない。
何でか聞いたら人と深くなるのが面倒くさいとか言いやがって。
それでも回りの女達は放っておかないと何とも不条理な男。
かっこいいというよりは美人系。
それなりにいい女じゃないと太刀打ち出来ないようなそんな外見の友人は、今日も今日とてかっこよくワインなんぞ開けている。
飲み始めてから数時間、半分酔って、半分冷静な状態で楽しく話をしていた時に切り出した。
「動物モン?」
「違うー、」
「衝撃映像系?」
「違うー、」
じゃあ何なんだと画面を覗き込むとたくさんの肌色のプレビューに気付く。
「…AV?」
「そう、」
開いたパソコンを二人で眺めながら例のページを開く。
白い肌、シンプルな部屋。
控えめに喘ぐ声が部屋に響く。
「何…お前そういう趣味だったの?」
「…」
横を見るとワイングラスを片手に意外とばかりの顔が画面を見ながらワインを飲み干した。
「これ、お前だよな」
その問い掛けに顔を見上げられ、少し間があってふと笑う顔が見えた。
「こういうの、知り合いに見つかるって驚くね」
そのままワインを注ぎ画面上の乱れた姿をじっと見ている。
「…ホントにお前なの?」
「あれ、俺カマかけられた?」
「…何でそんな冷静なんだ?」
「…言い訳とか見たかった?」
艶やかに笑うその顔にぞくりと背筋が震える。
やらしく動く腰と手が映る画面と、目の前の顔を思わず見比べた。
「で?」
「ん?」
「どうしたい?」
「何を?」
きょとんと見下ろして来るその顔に意外だとばかりに眉間に皺が寄る。
「あれ? 俺を脅して一発ヤらせろ的な話かと思ったんだけど」
「…お前簡単だな」
「どうする?」
「…」
近付く顔から、酒と香水なのかシャンプーなのか、いい香りがした。
更に顔を近付けて手前でふと止まる。
伏せていた目がこちらを見上げるのがわかったが目を合わせることが出来なかった。
微かに笑う声がして、離れて行こうとするのが見えた。
思わず顔を引き寄せて口付ける。
驚いた顔が見えたが微かにまた笑って目を閉じられた。
首筋に擦り寄って来て、背中を一度だけ撫でられる。
「てかお前男いけんの?」
「…」
「男っていうか、俺いけんの?」
「…」
「…俺が押し切った方がいい?」
答えられないその顔を楽しそうに見上げていたが、「ちょっと、黙ってろ」と苛立つ声が唇を塞いだ。
綺麗な顔が馬乗りになると驚いた顔が見上げて来た。
酒に酔って力の入らない体が楽しそうに凭れ掛かって来る。
口付けられそうな距離なのに唇は合わない。
指先で唇をなぞり、顎を撫でる。
その手を掴んで体の上から引き摺り下ろすと驚いた顔はすぐに笑い出す。
その余裕の顔がだんだん腹立たしくなり両手首を掴むとベッドに押し付けてそのまま口付けた。
荒く噛み付き、触れるように舐め、舌を絡ませ唇を食み、離れる頃には二人共息が上がって額をくっつけて鼻先を触れ合わせた。
酔いが回る。
甘い匂いが頭を狂わす。
服の中に潜り込ませた手が肌触りの良い体を堪能するかのように動きまわりその度に熱い息が吐き出される。
されるがままになるのは気に喰わないのか、与えられた以上に与えられて体が溶けていく。
切なく上がる声が耳元でやまない。
それに応えるかのように奥の奥まで潜り込んだ体が今までにない程に痺れる。
冷静な時に聞いたら頭を撃ち抜きたくなる程溢れ出る互いを求める声は、夜も深くなった頃にようやく止んだ。
「ちなみにそれ俺じゃねえよ?」
乱れた前髪を掻き上げながらベッドから立ち上がって言い放つ。
その言葉に俯せで眠っていた体が止まった。
「…は!?」
「だってイく前に何か日本語以外で言ってたじゃん」
「…え?」
「聞こえてなかった?」
あらー、と声を上げながらパソコンを持って来て先程の画面を開き目的の場所まで早送りする。
「どこだよ、」
「んー…、はい、」
上がる快楽の声。
ぐちゃぐちゃという水音と、おもちゃの振動音。
聞き覚えのない言葉が一言二言絶え絶えに聞こえ、そのまま大きく腰を震わせて達した。
「……………マジ?」
「うん」
嘘だろと部屋中を見回し、画面上でも見た絵を見付けて指差す。
「だって、この絵とか…、ベッドの位置とか・・・、光の加減とか…、」
そう反論すれば呆れたように溜息をついてがりがりと首の後を掻く音がする。
「この絵だって一点ものじゃねえし、ベッドの位置なんて世界中にどれほど同じ位置があると思ってんだ」
「…」
絶望した顔と、落ちていく肩が見える。
「どうする?」
「…何が?」
「ヤっちゃったけど」
楽しそうに首を傾げ、脱ぎ散らかした服を纏いながらベッドに戻って来た。
遠くで照らしている間接照明が整った体をシルエットとして浮かび上がらせる。
「キズモノにされちゃっ、た、」
肩に手を置かれ、耳元で囁かれた。
「…お前だって嫌がってなかったじゃねえかよ!」
「だって俺脅されて抵抗したらこれが俺だって言いふらされるかもしれなかったわけじゃん? そりゃ素直に従うよ」
絶望したままのその顔に一つふと笑うと、離れて片膝を立てながらまた笑う。
「…どうだった? 俺の体」
「…」
「気持ちよかったよな、中で一杯出してたもんな」
自分の体に這う指に釘付けになる。
足の先から下半身を辿り、腹の辺りで足に隠れて見えなくなる。
目が離せずにじっと見てしまい、思わずはっと気付いて目を逸らした。
「ちゃんとつけてただろ!?」
「気持ちよかった?」
傾げたままの首は甘く問い掛けて来る。
いつも通りの話し方と態度に気持ちも苛立ち始める。
「…何もなかったことにすんの?」
「…お前は、」
「うん」
「…いいのかよ、こんなので、」
「じゃなかったら足開いてない」
「…」
「俺しつこいよ」
「…」
「捨てられたら生きてけないかも」
「…」
伏せられた目がふと細められて俯いた。
罪悪感がむくむくと膨れ上がり上手く呼吸が出来なくなる。
今脅されているのは俺、と思った時に吹き出す声がした。
「なーんて。酒のせいだろ。寝て忘れろ」
「え、」
「ソファーで寝る? それともベッド? それとも帰る?」
あっさりと立ち上がり、脱ぎ散らかした服をぽんぽんとベッドに放り投げて来る。
呆気にとられているとベッドの上に上がって膝立ちのまま見下ろして来た。
「どこでもいいなら俺ベッドで寝たいから、どけ」
「…」
「それとも一緒に寝る?」
「…」
また首を傾げて綺麗に誘うような顔を向けて来る。
それをぽかんと見上げていると「…何か言え、ボケ」と飾り気なしに突っ込まれた。
「…」
「痛ってぇ!!」
更に答えずに居ると、腰の入った平手打ちを食らい、そのまま転げ落ちるようにベッドから落ちた。
「んじゃおやすみー、」
「あのな!」
「酔いが覚めたらお話しましょ。俺眠い」
「…」
くるりと背中を向けて寝に入る姿にもう何も言葉を掛けられず、大人しくソファーに横になって目を閉じた。
「…目覚め悪、」
朝、目を開くとそこには隈の深い怒った顔があって思わず呟く。
「起きろ。話するぞ」
「…まだ七時じゃん…休みの日にこんな時間て…」
「…起きろ」
「…」
のろのろと起き上がるとベッドの上に正座をする姿が見えた。
そのまま暫し俯き、まるでこれから切腹でもするのではないかという面持ちできっと顔を上げた。
「…責任は、取る」
「何の」
「身勝手にお前を好き勝手したこととか…、」
「俺も楽しみましたけど」
「…謂れのない言い掛かりとか、」
「わかってて俺否定しなかったしー、」
「…友達と、あんなこと」
「だから、俺は楽しみましたけど」
「…」
重力の赴くままがくりと項垂れるとそのままふわあ、とあくびをする。
首の後をがりがりとかきながら眠たそうにまた目を閉じた。
「…てか責任て。女の子ならまだしも俺男だし。取ってもらう責任もないし。犬にでも噛まれたと思って」
「あのな、」
「何」
「俺の気が済まない」
真面目か、と一つ笑ってみるがその表情は変わらず、また首の後をかいた。
「許します。ので気にしないでください」
「…あのな、」
「別に俺は大した事だって思ってねえの。お前だけだろ深刻に考えてんの」
「…」
「もやもやして不愉快なのは解ったから、忘れろって。酒が入ってた。俺がそうなるように誘導したの。俺のせい。お前悪くない。OK?」
「…納得行かない」
「じゃあどうすんだっての」
「…」
「キズモノにしたから、俺と結婚でもする?」
「…」
徐々に落ちていく顔を見下ろしながらあっけらかんと言い放ってみると神妙な面持ちが上に上がった。
「アホか。したところでこっちから離婚届渡すわ」
「…」
「ってわけでお前とはお別れしました。はい終わり」
寝ていい? と聞いてみても返事はない。
深く溜息をついて再び俯いていく顔を見る。
「ちなみにね、俺自分で弄るのが好きでさー。本物挿れたのは初めてだったけど」
「…」
「入るもんだねー、結構良かった。デビューしちゃおっかな」
「…」
「というわけで感謝こそすれども恨んでませんので、もう放っとけ」
それだけ言い放つとまたベッドに横になる。
掛ける言葉もなくその背中を見ていると寝息が聞こえ始めてようやく肩の力が抜けた。
「…それでも、」
その後の言葉は継げず、動けないまま時間が過ぎる。
「…デジャヴュ?」
昼、目を開くとそこには隈の深い顔があって思わず呟く。
「…」
「…隈が濃くなってるぞ」
「…」
はぁ、と深く溜息を付く音が聞こえた瞬間に首を勢いよく引き寄せられてベッドに沈められる。
藻掻いて逃れようとするがその腕は強く、そのまま宥めるように背中を擦られた。
「お前少し寝て頭整理しろ」
「…」
「それから話しろ」
顔を抑え込まれて表情は見えない。
擦られる背中に意識が持って行かれ、そのままいつの間にか眠りに落ちた。
寝息が聞こえ始めてゆっくりと腕を外す。
呆れるように溜息をついて起き上がり、布団を掛けた。
「…ったく…、」
呆れながらも知っていた真っ直ぐなその態度に苦笑いが浮かぶ。
起きたら今度は何て言うだろうかと少しうんざりしながら、起きた時の為に飯でも作っておくかとキッチンへ向かった。
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