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嘘の代償
幼い頃、玲奈は誰にも見えないものが見えていた。
「ママ!パパ!見て!あそこに星の王子様がいる!」
しかし、両親は忙しそうに振り向きもせず言った。
「そんなこといいから、早く来なさい。また空想の話をして。」
小学校でも同じだった。
「見て?空からふわふわしたカラフルなフレーバーが降ってるよ?」
友達に伝えると、笑われた。
「玲奈ちゃんは嘘つきだ!また変なこと言ってるよ!」
玲奈は悲しかった。
本当に見えている世界を共有したかったのに、誰にも信じてもらえない。
成長するにつれ、玲奈は次第に自分の感じる世界を
心の中に閉じ込めるようになった。
そして、嘘をつくことで自分を守る術を覚えた。
大人になった玲奈は、煌びやかな夜の世界で働くようになった。
嘘で彩られたその世界は、彼女にとって心地よい場所だった。
「実は私、有名企業の社長令嬢なんです。でも普通の生活がしてみたくて。」
客たちは面白がって彼女の話に耳を傾ける。
玲奈はその反応を楽しんでいた。
ある日、玲奈は平凡な男と出会った。
お金もなく、特別ハンサムでもない彼だったが、
彼女は劣等感を感じることがなかった。
「まあ、暇つぶしくらいにはなるかな。」
そう思い、彼と付き合い始めた。
しかし、彼女にとって彼はただの玩具でしかなかった。
ある夜、新しい客が店を訪れた。
「私、占いができるんです。あなたは近々大金を手に入れますよ。」
客は笑いながら答えた。
「じゃあ、そのお金で君をここから連れ出そうかな。」
玲奈は微笑んだ。
その帰り道、玲奈はポストに封筒が入っているのを見つけた。
中を見ると、未払いの税金通知書。とんでもない金額だった。
「なんでこんな金額に…?」
翌日、税務署に問い合わせると、自分が大企業の社長令嬢であり
、多額の資産を持っていることになっていた。
「嘘だったのに…どうして?」
混乱する玲奈。その時、街の大型ビジョンに元彼の姿が映った。
彼は新しいビジネスで成功し、一夜にして大金持ちになっていた。
「彼まで…?」
さらに悪いことに、彼女が占った客が宝くじに当選したが、
謎の事故で命を落としたというニュースが流れた。
「私の嘘が現実になっている…?」
恐怖を感じた玲奈は、自分の嘘を取り消そうとした。
「もう嘘はつかない。私はただの普通の女…何の特別な力もない。」
しかし、その瞬間、彼女は店から解雇された。
「君みたいな人材はうちには不要だよ。」
全てを失った玲奈は、路上に座り込んだ。
周りの人々は彼女に気づかず、まるで存在しないかのようだった。
「私は一体…?」
その時、ふと空を見上げると、幼い頃に見た星の王子様が微笑んでいた。
カラフルなフレーバーが空から降り注ぎ、周囲は幻想的な光に包まれた。
「やっと…私の世界に戻れる。」
玲奈の意識は現実を離れ、
誰も知らないファンシーな世界へと飛び立っていった。