【なぜに迫る】大麻を合法にするオランダ人のマインド
「オランダって大麻が合法で危ない国(ヘロヘロの人が街に溢れてる)のイメージなんだけど実際どうなの?」
日本の友人と電話をしているときに、聞かれたことです。子育て中の我が家は郊外に住んでおり、一度も、危なそうな人に出会ったことがありません。もしくは私が外国人で無知が故に、ただ気づいていなかっただけなのかもしれない...。
と思い直したところで、そもそも「オランダはなぜドラッグを容認しているのか」を調べることにしました。
すると、フットワークが軽く、自由(寛大)で、実践主義的なオランダの考え方が見えてきて面白かったので、書いてみることにしました。
大麻は合法ではない
多くの人(私も含め)が「オランダでの大麻は合法」だと勘違いしていますが...... 大麻は厳密には合法ではないそうです!(要注意!) 近隣諸国と同様、オランダでも大麻は法律で違法となっています。
では「なぜ旅行客がアムステルダムで大麻を吸っても捕まらないのか?」というと、
「規定の場所(Coffee Shopと呼ばれるお店)で
規定の量を守っての使用は、容認する」
という法律とは矛盾した政策(toleration policy)を国が認めているためです。違法だけど容認する、なかなか矛盾した不思議な仕組みです。
そうした矛盾した状態が生まれる背景には、オランダ人の考え方と歴史が関係しています。
自由と妥協のバランスをとるオランダ人
オランダは小国であるにも関わらず歴史が古く、欧州最大の貿易港がある世界に開かれた国です。自由を愛する国民性で、徹底的な実用主義。
自由な国といえば、同じ欧州のフランスが思い浮かぶかもしれません。しかし、ある意味では、フランスよりオランダの方が自由な国と言えるかもなと思うのです。
オランダの自由さは国の成り立ちに起因する、と考えられています。
オランダは国自体が、市民自ら海や沼地を開拓してできています。自ら開拓した土地は自由に取引ができたので、貴族や教会といった支配層が土地を所有できず、おかげで市民が自由闊達な風土があったと言います。
(フランス他、欧州の国々は、地元の貴族・教会に土地を押さえられ、支配されてきました。)
そういった国の成り立ちからか、オランダを象徴する例として、アムステルダム運河沿いの柵の話があります。
アムステルダムといえば、運河が街のいたるところにあります。その運河沿いの道には、落下防止のための柵が一切ありません。
理由は、シンプル。景観を乱すから。
じゃあ、万が一、誰かが運河に落ちてしまったらどうするのか?というと、国民全員に水泳技能を必修にしているので落ちても自分で泳げる、という対応策になっているのです。
...ある意味、抜本策とも言えるでしょう。(笑)
落ちたら自分で泳いでね、なんて、日本では到底通用しない気がしますが。
そんなオランダでは社会問題を自由かつオープンに議論する特徴があります。どの国も頭を悩ませている「薬物」の問題にもいち早く先手を打つことにしました。
1960年代には国家委員会が設立され「少量(5g以下)の大麻使用であれば健康与えるリスクは小さい。むしろ非犯罪化とすることでドラッグ需要は減るため、犯罪や依存者を減らす手段として利用すべきだ。」という提言が出てきました。
なので少量の大麻は容認した方が、社会に利益をもたらすのではないかと、オランダは考えた。
もちろん社会実験を行いつつも、矛盾解消や改善を都度進めるつもりでした。
試みとして、殺到した観光客を避けるためにオランダ人にのみ大麻使用許可を与える、といったものや、完全違法へ変更しようとした動きもありました。
その度に、大麻を提供するお店から激しい反発があったため、結局「州に判断を任せる」という妥協案に変更するはめになりました。(マーストリヒト州など完全に違法とする州が出てきています。)
なので薬物問題が解決したとは言えない状況が続いています。
しかし、自由と妥協のバランスをとりながら社会問題に切り込んでいくオランダの姿勢には学ぶものがあります。
なにも大麻に始まった話ではない
世界初の同性婚、売春、安楽死の合法化など、オランダは多くの国で議論を巻き起こしている問題に、先陣切って取り組んできました。
実はコロナ禍・ロックダウン最中の2021年3月にも、
大規模の音楽イベント(フェス)を安全に実施できるのか?という問いを検証すべく、世界に先駆けて実証実験を行っています。
売春の合法化も、同性婚の合法化にしても、社会実験を行ってメリット/デメリットが明らかになったら、修正、また修正。そうやって最適解を探します。
時代の変化に敏感で、実用的に思考し、社会実験しながらも世界にも問題を提起していく。
500年以上も前の大航海時代から現在に到るまで、オランダが長きに渡り繁栄しつづけている一因なのかもしれません。
小国ゆえの生き残る術を、国民全員が身につけているような気さえします。
経済成長が止まりつつある日本にも、今後、必要となるマインドセットかもしれません。
最後に...
実際どういう人が大麻を吸っているか、というと、オランダ人は1割で圧倒的に若者が占め、残り9割が外国人とのこと。ほぼ観光客!
よく勘違いされていることの一つに、日本の法律では大麻を吸うのは違法となっていますが、これは場所を問わないそう。なので、日本人が海外で吸ったら実は違法になるのです。(残念!?)
そしてアムステルダムが怖いな〜と思っている人は、中心地にあるCoffee Shopに近づきさえしなければ基本的には大丈夫。
自転車に乗って可愛い街並みや、美術館を回って存分に楽しんでください!
そして、常軌を逸している人を街で見つければ、節度のある量を超えているはずなので、通報しましょう。笑
長々と最後までお読みいただきありがとうございました。
ニケ(スキを押していただけるととっても喜びます!)
※このブログはあくまで下記参考文献を元にまとめた内容です。
(参考文献)
https://dutchreview.com/traveling/cities/amsterdam/the-ultimate-guide-to-smoking-weed-in-amsterdam/
https://sencanada.ca/content/sen/committee/371/ille/library/dolin1-e.htm#_ftn13
https://edition.cnn.com/travel/article/amsterdam-travel-legal-parameters/index.html
https://toyokeizai.net/articles/-/414907?page=2
https://www.bbc.com/japanese/video-56480391
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