見出し画像

電話応対は怖くない

新しい職場で思わず腰が引けることの一つに
「電話を取る」
があると思います。
私が新人の時は、総勢8人くらいの部署でしたが
メンバーが軒並み海外出張や長期研修で不在にしており
最初の2週間はなんと、係長と二人きりでした。

それでも電話は容赦なくかかってきます。
係長と新人だったら新人が取るものだとは判っていますが、
電話が鳴るたびに怖くて仕方ありませんでした。
だって、誰からかかってくるか判らないし
用件だって、何を言われているのか判らない。
「あ、(社名なし)△△(珍しい苗字)ですけど
××(聞き取れない)の件で」
なんて言われたら、もう泣きそうです。
幸運だったのは、係長がたいそう目端の利く人だったことでした。
いちいち飛び上がっている私を見て「これはダメだ」と
すぐに察し、すべての電話を取ってくれました。神です。

今は、全員がスマホを支給されて、自分宛ての電話しか
かかってこない…という職場も多くなったと思います。
それでも、部署の番号があったり固定電話があったりする会社も
まだまだあります。
が、プライベートを含め、「自分の電話」以外を
まったく取ったことがない人もいるかもしれません。
そんな人にとっては電話取りは未知の恐怖でしょう。
でも、電話を率先して取る新人は評価されます。
会社全体としてみた場合、それが一番効率的だからです。
今はベテランの派遣さんがそつのない応対で繋いでくれることも
多くなりましたが、時間外とか、たまたま離席中とかもあります。

一方で、先輩も上司も多忙を極めていて
必要最低限のことしか教えてもらえないことも多いでしょう。
電話応対なんて、そもそも事細かに教えられるものではなく
見よう見まねO J Tでよろしく、とされることが多いですが
そもそも、お手本を「見る」機会が、テレワークのためにほとんどない
という状況はよくあると思います。
みんなが机を並べている職場では、人の電話応対を聞くとか
自分の応対がおかしければ周りの人に指摘されるとか
そうやって一つずつ覚えていき、自信もついていきました。
それができない職場の新人さんは本当に大変だと思います。

そういう方々に向けて、ちょっとしたコツをご紹介します。
王道の「会社電話応対の基礎」みたいなことは、新人研修で
教わることもあるでしょうし、ネットでも調べられます。
それは判ってるけど難しいんだよ……というときに、
もっと些細な、プラスアルファの小さな知識や情報があることで
怖さが和らぐこともあります。
そんな、「周りの人がちょっと教えてくれる」ような経験談です。

聞き返していい。

電話に慣れない間は、自分が取ることの一番の恐怖は
「聞き取れないこと」ではないでしょうか。
社名を名乗らない、社名がやたらと長い、早口、焦って聞き逃した、
メモを取っている間に話が進んでしまった……
でも、大丈夫です。
電話で聞き返してはいけないというルールはありません。
そもそも、名乗らないとか早口とかいうのは相手も悪いんです。
かけた方がベテラン社会人であれば、電話を取ったのが
新人か、ちょっと慣れた若手か、めったに電話を取らない偉い人か
なんてことは最初の一言で判ります。
相手が新人だと思ったら、ゆっくりはっきり話してあげるべきです。
(名乗らないなんて言語道断です)
そうでなくても、緊張していると、人の声は簡単に耳を素通りします。
いずれにせよ、「あ、聞き取れなかった……」と思ったら
落ち着いてマジカルワードを繰り出せばいいのです。
「申し訳ございません、お電話少し遠いようなのですが
もう一度よろしいですか?」
実際に電話が遠いかどうかは関係ありません。慣用句のようなものです。
相手も「ああ聞き逃したんだな」と思いますが、それだけです。
これがしれっと使えるようになると、怖さはかなりやわらぎます。

内線と外線を見極める。そして、役員の名前は覚えておく。

内線電話で、自社の役員から電話がかかってくることがあります。
例えば、部署の代表電話を取ったら、常務から部長宛ての電話だった
という場合です。
これが恐ろしいのは、相手は名前しか言わないことです。
私は新人の頃にやらかしました。
私「はい、××部です」
相手「ヤマダだけど、山川さんいる?」
私「(お得意さんかな?山川部長宛てね)はい、少々お待ちください。
(切り替え)部長、ヤマダ様からお電話です~」
部長「馬鹿!社長だ!!」
すごい剣幕で怒られました。
私が犯したミスは二つあります。
まず、内線か外線かを始めに確認しなかったこと。
内線か外線かは、ナンバーディスプレイで一目瞭然です。
内線だと判れば、そもそも相手は絞り込めます。それに
外線で社名を名乗らない相手には訊いても失礼になりませんが、
内線で名乗らない相手に「社名」を聞いたらアウトです。
(この時はたまたま免れましたが、これも褒められた話ではありません)
次のミスは、役員の名前を頭に叩きこんでいなかったこと。
叩きこんで、というのは、件の社長は、本当はヤマダではなく
割と珍しい苗字でしたが、それでも咄嗟に結びつかなかったのです。
電話に緊張していると、そういうことも起こります。
なので、脊髄反射になるくらい、叩き込んでおくと安心です。

とらのまきを作る。

加えて、内部・外部を含めて、よくかかってくる、あるいは
かかってくる可能性のある相手先のとらのまきを作って
すぐ見られるようにしておくと、役に立つかもしれません。
以前、私は秘書室にいたことがあります。役員宛ての外線電話は
すべて秘書室にかかってきます。役員に電話を取り次ぐ時に
社名を間違えるなんてありえませんし、一方で、役員と旧知の
間柄だったりすると、社名を名乗らない方もよくいました。
ベテラン秘書になると相手の声だけで判別できたりしますが
私は緊張しやすい上に記憶力もよくないのです。
困った挙句、自分用のとらのまきを作って電話の横に置いていました。
1枚にすべて収まるようにして、名前と社名と両方を五十音順に並べ
どちらからでも探せるようにしていました。
個人的には、本当に重宝しました。相手がすぐに判るだけでも
結構落ち着いて対応できるものです。

取り次ぐ間も丁寧に話す。

これも秘書室にいたとき、室長宛ての外線電話を取りました。
お得意様からいつものアポイント依頼、といった内容ではなく
説明が必要だったので、通話は保留にして、室長に
「こういう方からこういうお電話です」ということを伝えました。
そして電話に出た室長が、なんだか謝りモードなのです。
嫌な予感は的中しました。電話を切った室長に、
「保留になっていなかったみたい。少しご機嫌を損ねていたよ」
と言われて青褪めました。
室長に内容を説明していた時に、もちろん乱暴な物言いはしませんが
相手方に対する敬語表現が足りなかったのです。
それ以来、保留にしてもすべて相手に聞こえている前提で
取り次ぐようになりました。
ちなみに、受話器から半径4mの音声は相手に聞こえると言いますから
周囲も注意しておくと安心です。

固定電話を切る時は、受話器を置く前にフックスイッチを押す。

固定電話がある職場に限られますが、ある場合はむしろ
代表電話とか部署の電話とか、外部からかかってくるものが
多いかと思いますので、意外と大事です。
フックスイッチというのは、受話器を置くときに
耳に当てる部分を載せる場所にあるスイッチのことです。
これを押すと通話が切れるので、自宅の電話などでは
そこに直接受話器を載せて切ることが多いです。
ただこれ、ゆっくりやらないと、相手に「ガチャ!」と
すごい音が届いてしまいます。
丁寧な相手だと、こちらに先に切ってもらおうと
話が終わっても受話器を耳に当てて待っています。
そこに響いてくる「ガチャ!」は、かなりびっくりします。
それまでの話しぶりが満点でも、あるいはなおのこと
「本当はうちのこと軽く見てるのかな……」と
思われてしまうかもしれません。
相手が切るまで絶対に切らない、という方法でもいいのですが
根競べになってしまうこともあります。
そこで、自分が先に切らなければならない時は
受話器はゆっくり置くか、フックスイッチを指で押すのがお薦めです。
なお、これは転送時も同じです。転送する先は内部の人ですが
やっぱり「ガチャ!」が相手に聞こえてしまいます。

経験談というより失敗談でしたが、
こんなトリビアも、知っているだけで少しでも
電話取りが怖くなくなるといいなと思ってご紹介しました。
何かのヒントにしていただければうれしいです。