見出し画像

日本の生産性と円安

食料品を始めとして諸物価の高騰が続いており、その原因の一つに円安が上げられています。それで、円安と物価の関係を政府の統計から探ってみました。最初は物価からです。消費者物価指数は総務省から発表されています。

此処で「中分類指数(全国)<時系列表>【月次】」から「zmi2020s」を入手します。その中から月毎の物価指数と食料・エネルギーの指数をグラフにします。

消費者物価指数

直近の10年を拡大してみます。2021年から急激にエネルギー価格が上昇、その動きに連られて総合物価指数、その中でも特に食料価格が上昇しているのが判ります。

消費者物価指数

それでは、為替レートと物価が興味ですので、まず、為替レートに付いてみます。ところで為替レートには2種類有って、東京の為替市場で取引される為替レートと実効為替レート(名目・実質)です。財務省の説明では、名目実効為替レートは「総合的な為替レートの変動をみるための指標」で、実質実効為替レートは、「対象となる国・地域の物価動向も加味して算出されます。」との事です。

名目実効為替レートは、特定の2通貨間の為替レートをみているだけでは捉えられない、総合的な為替レートの変動をみるための指標です。具体的には、対象となる全ての通貨と日本円との間の2通貨間為替レートを、貿易額等で計った相対的な重要度でウエイト付けして集計・算出します。実質実効為替レートは、さらに、対象となる国・地域の物価動向も加味して算出されます。

「実効為替レート(名目・実質)」の解説(1)目的・機能

以上の3レートをプロットします。データは為替相場(東京インターバンク相場)(月次) から東京市場での為替レート, 東京インターバンク相場, 東京市場 ドル・円 スポット 17時時点/月末を、実効為替レートから名目実効為替レート指数と実質実効為替レート指数です。為替レートに付いては東京為替市場の為替レートを使いますが、100円が何ドルに相当するかを、2020年の平均の為替レートを100として正規化した値を指標として使っています。此の指標では普通お目に掛かる「1ドル1xx円」とのレート表現とは逆に、円の購買力が低下すると指標も下ります。

グラフを見ると、東京市場での為替レート指標と名目実効為替レート指数は大体一致してるのですが、実質実効為替レートは2010年頃までは他の2つの指標より高くなっています。つまり、円は2010年までは数字以上の購買力が有ったって事です。多分、この辺りの購買力の低下も円安感に効いてます。何れにせよ、2015年以降は3者は大体一致してます。

為替レート

それでは、消費者物価指数と為替レートをグラフにしてみます。為替レートに付いては東京市場のレートを使います。ざっと見たところ、2020年迄は円の購買力が上がっても物価が下るという事は無い様ですが、2020年以降、円の購買力が下ると物価は上昇している様です。

為替レートと消費者物価指数

2020年前後を拡大してみます。やはり、円の購買力低下と併行して物価が上昇している様です。

為替レートと消費者物価指数

それでは、為替レートと日本のお金と物の出入りの関係を探ります。貿易関係の収支は国際収支の推移(財務省)6s-a-2 季節調整済国際収支推移(月次)CSVを使います。先ず、1996年からの貿易・サービス収支、輸出入です。2008年頃までは輸出が先行していて貿易・サービス収支は黒字だったのですが、2008年以降輸入の伸びに輸出が追付け無くなり2021年頃より貿易・サービス収支は赤字となっています。2022年の輸入、貿易赤字の急拡大はウクライナ戦争の為にロシアに敵対した所為でしょう。

貿易収支とサービス収支

2016年以降を拡大してみると貿易・サービス収支の赤字傾向がハッキリ見えてきます。

貿易収支とサービス収支

是等のグラフに為替レートを重ねてみます。特に2016年以降のグラフで見易いですが、輸出の伸びが輸入の伸びに追付け無くなって貿易・サービス収支が赤字になると円の購買力が低下してる様です。特に今年(2024年)に入り輸出が頭打ちの様で、それに合わせて輸入の伸びも鈍化、円の購買力の低下傾向が継続している様です。

為替レートと貿易・サービス収支
為替レートと貿易・サービス収支

とすると、輸出で頭打ちの分野と輸入で急成長している分野が興味です。品目別の貿易統計は財務省の輸出入額の推移(地域(国)別・主要商品別)に有ります。そのウェブページの2番目の表「輸出入額の推移(主要商品別)」の「世界(輸出入総額)」行、「月別推移」列の項「世界 月別(輸出)」「世界 月別(輸入)」からd51ma.csvd61ma.csvのファイルを使います。全ての項目を表示すると見難いので間引いて表示してます。輸出では輸送用機器(自動車を含む)と一般機械(半導体製造装置を含む)が頑張って牽引してたのが少し息切れ気味かと。輸入は矢張りウクライナ戦争の為のロシア制裁に伴なうエネルギー価格の高騰と電気機器の輸入の漸増が効いてる様です。財務省の貿易統計に関する令和6年10月分貿易統計(速報)の概要 に有ったのですが医薬品の輸入も伸びてる様です。医薬品と言えば大麻の密輸は何処かに紛れ込んでるのでしょうか?高価な品なので可成の額では無いかと推測されます。

品目別輸出額の経過
品目別輸入額の経過

最後にサービス収支です。サービス収支は国際収支の推移(財務省)6s-2-4 サービス収支【月次】を使います。サービスでは旅行、つまりインバウンド観光で稼いでるのですが、通信・コンピュータ・情報サービスで赤字が成長して旅行の伸びを相殺してます。因みに、旅行へのコロナ渦の影響が明確に見えます。知的財産権等使用料(アニメですか?)は額が大きいので頑張って欲しい処です。

分野別サービス収支

いいなと思ったら応援しよう!