介護保険を持続可能な制度とするために、どのようにしていくべきなのか
7月10日開催 社会保障審議会介護保険部会を傍聴しました。
社会保障審議会介護保険部会資料https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33988.html
●基本指針等について
大臣告示となる第9期介護保険事業(支援)計画の基本指針(案)については、委員からコメントなどはありましたが、座長一任としてほぼ了承を得られました。
まだ全く読み尽くせていませんが、見直しのポイントは下記になります。
個人的に関心事である「地域包括ケアシステムの深化・推進に向けた取組」については「記載を充実する事項(案)」として、今までの審議内容が盛り込まれているように感じました(下記参照)。
継続して傍聴している「介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会」で議論されている「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」については、第9期で集中的に取り組むと記載されており、今後の展開に注目したいです。
●職業紹介・労働者派遣について
委員の議論では、資料1-3「職業紹介・労働者派遣について」多くの意見・要望が出ていました。前回の部会で委員から、介護サービスの人材紹介会社について、かなり紹介手数料が高いのではという発言から、今回職業安定局から資料が提出されました。
資料から、令和3年度の常用就職における介護サービスの紹介手数料は総額約238億円、一人当たり42万円には驚きましたが、職業安定局からの発言では、物流など他業界と比較すると、この業界の紹介手数料が決して高いわけではないようです。
ただ、介護サービスは「公定価格」として決まっており、売上(利益)が企業努力で大きく伸びるという業界ではなく、紹介手数料はかなり負担になっていること、委員の話から想像すると、悪質な紹介会社は「半年すると、紹介した人に他の施設への転職を勧める」といったところもあるようです(また紹介手数料を取るということですね)。
派遣については、介護サービス従事者は他職種と比較して、派遣労働者数が圧倒的に多く、賃金が低いことが提示されました。
公的なハローワークの活用なども挙げられていましたが、前述したように、介護サービスは「公定価格」なので、給与を上げて人を呼び込むこともなかなか難しい。人口減少時代、人材の確保は難題ですね。よりよい法律ができても、現場を動かす人がいなければ、「画に描いた餅」になってしまいます。
●給付と負担について
「第9期からの介護保険料の負担についての検討」について、12月開催の介護部会で「遅くとも来年夏までに結論を得るべく引き続き議論」としていましたが、6月の骨太方針で 「年末までに結論を得る」に変更になり、介護保険料の変更がまだ未定です。
市町村からの委員からは、収入となる保険料がわからないと介護保険計画が立てられない、わかる範囲で国の方針を前倒して知りたいという意見が出ていました。
資料2「給付と負担について」で示された「高齢者単身世帯」「高齢者夫婦二人世帯」の「収入と支出モデル」は興味深いです。これらは、介護保険の負担増となる世帯の切り分けをどこでするかという議論の材料となるのかと。委員からは、住居の形態などで大きく支出が変わることや、介護サービスを受けている人、いない人、都市と地方など、さまざまなパターンを検討すべきではという意見も出ていました。
●人口減少時代に迫られる選択
介護保険の制度としての持続性を考えると、現役世代の負担はこれ以上厳しく、応能負担として、高齢者の負担の増額は避けられないでしょう。ただ、医療費と違い介護サービス費は、ほぼ恒常的な支出になるので、医療費の負担と同様に考えるのは厳しい。「人口減少」に入った日本、「お金」をどう得て、どう使っていくのか、いろいろ本当に厳しい選択をしていかなければならないようです……。