ついつい急いでしまう人へ、この映画を贈りたい。『写真家 ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』
映画は、こんなセリフから始まる
「私は大した人間じゃない
映画にする価値などあるもんか
でもまあ仕方ないか...」
そして彼は可愛い笑顔を見せる
この映画に出会った日、僕は
YouTubeムービーで何を見ようか探していた
すると偶然、このタイトルが目に入り、予告を見た
僕の心はグッと掴まれた。
その理由は、タイトルにあった。
急がない人生...
昔からマイペースだと怒られていた僕にとって
とても気になるタイトルである。
何をするにものんびりで
人より時間がかかってしまう
幼少期から、僕は、そんな自分に
強いコンプレックスを抱いていました。
彼の名は
ソール・ライター
カラー写真のパイオニアと呼ばれ
第一線で活躍していた
いわばカメラ界のスターだ。
だがそんな彼は
80年代、突然姿を消した。
地位も名誉も捨てて
彼は第一線から退いた。
その理由がとても気になる。
そんな予告になっている。
僕はこの予告を見て体に
電撃が走った。
必ずこの映画は僕を救うと確信した。
というのも僕は当時
コロナウィルスが世界的大流行をおこし、
全く仕事かなかった時期で
とてつもなく焦っていたからである。
毎日何か行動しなくては
時間を無駄に使ってはいけないと
躍起になっていた
フリーランスという保証のない立場で
家族を養わないといけない
なのに、仕事がないのだから。
恐怖でしかない。
そんな僕は機械音痴のくせに
パソコンを買い、
動画編集スキルを身につける為に
日々勤しんでいた。
今思えば焦りすぎていたと思う。
必死すぎてストレスをため、
妻と喧嘩する事もあった。
そんな時に出会ったこの映画の予告編で彼は
「急ぐ意味がわからない」
と言い放つのだ。
地位も名誉も捨てた彼が言う言葉だ。
僕はその真意にすごく興味をもった。
どういう意味なのか、すごく気になった。
この映画は字幕であり
美しい音楽と映像で構成されている
目的を持って見ていないと
非常に眠たくなる映画だ。
いわゆる、おしゃれな映画である。
案の定、妻は寝落ちした。
対照的に僕は、
どんどん映画に引き込まれていく。
伝説のカメラマンの映画だが
僕は恥ずかしながら彼の事を知らなかった
完全なるはじめましてだ。
写真についても
写真家についても
全くの無知である。
作中に出てくる彼の作品も
正直、なんかおしゃれとしか思えない。
技術的にどうすごいとか全くわからない。
でもこの映画に僕は救われた。
ソールは作中で、制作スタッフ達を
おおいに煙たがっている。
信じられないくらい煙たがっている。
常に文句を言っている。
でも聞かれた事にはちゃんと答える。
いわゆる可愛いおじいちゃんだ。笑
彼の部屋はとても散らかっている。
オークションに出せば
高値で取り引きされるであろう
伝説の写真家の作品たちが
ゴミのように扱われている。
彼は、言う。
「こんな物に価値はない。」と
この言葉が、僕の心を震わせる事になる。
謙遜して言っているように聞こえるが、
この言葉の真意が
まさにこの映画のメッセージであると
僕は思う。
彼は自分の人生に、後悔があるようだった。
つまらないと言いたげだった。
彼はことあるごとに
死別した奥さんの話をしていた
楽しそうに思い出を語るソールだが
その表情は、辛く、悲しそうだった。
僕が、この映画で、強く感じた物は
奥さんへの、深い愛だ。
彼はこう語る
「私には、急ぐ意味がわからない」
「後回しにするべきだ」と
そして、
なんの価値もないと語る
伝説の写真
さらに、死別した奥さん。
彼は人に自分の感情を伝える事を
めんどくさがっている
だから、順序立ててわかりやすく伝える
そんな事を、彼はしてくれない。
でも、寂しそうな彼を見たとき。
僕は、未来の自分を、見た。
妻に先立たれた、未来の自分を
僕は本当に寂しそうだった。
思い出の写真を涙ながらに
眺めていた。
そして、栄光と名誉を虚しく思っていた。
なんの為に、僕は頑張っていたのだろう。
彼女は僕が、何者でもない時から
僕と一緒にいてくれた。
やりたい事に付き合ってくれた。
僕を心から愛してくれていた。
僕も彼女を愛していた。
現実に戻ったその時
僕は、涙を流した。
僕は大切な人と過ごす時間を
毎日捨てていた。
それに気付く事ができた。
確かに成功は大事だ。
お金も大事だ。
でも、家族は、
もっと大事だ。
僕たちは、急ぎすぎる。
大切な物を見失う。
ソールは地位も名誉もお金も手にした。
でもそれは、奥さんを失った今では
奥さんとの時間を
「奪った物」
に見えてしまう事だろう。
彼は、奥さんの写真を特に大切に扱っていた。
彼は、自分の撮りたい物を撮る人生を選んだ。
僕も、彼のように生きたいと思った。
彼のような選択を取りたいと思った。
全てを犠牲にし、
チャレンジに没頭していた僕は
意識的に家族との時間を
増やすようになった
当時娘は生後5ヶ月だった。
確かにそんな時に無収入は焦る。
でも、妻と一緒に
川の字になり
娘を寝かしつけ
娘が眠る瞬間を見届ける。
その時間は僕の人生において。
最も高価なものだった。
娘が寝てから妻とゆっくり
テレビを見る時間
映画を見る時間
この時間が僕の人生だった。
自分の人生とは一体なんなのか。
何が自分の人生なのか。
キャリアアップしない人生に
価値はないのか?
確かに向上心は大事だ。
でもその為に今ある幸せを捨てるのか?
「急ぐな」とは何も、
「なまけろ」という意味ではない。
ソールの真意はわからないが
少なくとも、僕の耳には
「急ぐな」は
「見失うな」に聞こえる。
僕たちは今を生きていく。
頑張って頑張って頑張って生きていく。
目標に向かって自分を鼓舞し続ける。
たくさんの人を笑顔にし、救い。
時にはぶつかり合い、涙を流し。
生きていく。
自分にとって本当に大切な物を見つめ。
生きていく。
急ぐ事は楽しい。
でも僕たちは見失っちゃいけない。
大切な時間を
流れゆく景色を
ギリギリ目に焼き付けられるスピードで
のんびり、歩いていこうじゃないか。
はじめまして、ソール・ライター
素晴らしいメッセージを
ありがとう。
僕の人生は、今日も豊かです。
この文を亡き友人
ソールに捧ぐ。
あなたの人生は、美しかった。