眠れない夜に見た戦場のピアニスト
寝る前にベッドの中で見る映画って寝落ち前提だから途中で明日に持ち越してもしょうがないか〜と思って見るんだけど、
止まらなかった、絶対に見続けなきゃいけないと思った
物語の舞台は戦時中のポーランドのワルシャワ。
ナチスドイツが優位な戦況の欧州で、ポーランド国内でもユダヤ人に対する迫害と隔離が日々酷さを増していく。
そんな中、自身もユダヤ人であることから家族と共にわが家を離れることを余儀なくされ、戦禍の中生き延びようとする一人のピアニストのお話。
戦争映画はこの世に限りなく存在し、戦争に従事した兵士じゃなくて民間人の視点から戦争の悲惨さを描いた作品も多く存在しているけれど、この映画に特徴的なのは、人が惨殺される描写があまりにも一瞬の出来事でありながら、しかしとても鋭い一撃で私たちの心を痛めつけてくる、という点である。普通の戦争映画なら、人が殺される描写はできるだけグロテスクに、血や銃弾をもって残酷さを描く。なぜならその方が、より「リアル」だから。でもこの映画はまるで「犠牲者のすぐ隣で一瞬の出来事を目撃させられ、それでも自分自身を守るために平気なふりをしなくてはいけない」という非常にパーソナルな疑似体験を見ている私たちもさせられる。
その点で、見たくはないけれど見なくてはいけない、義務感のようなものが感じさせられる作品になっているように感じた。
現実はフィクションより残酷にも希望に満ち溢れるものにもなりえる。生命の危機を幾度も乗り越え、飢えと渇きに苦しみ、一人きりとなったピアニストがようやく水を見つけた瞬間に一人のドイツ人将校に見つかってしまう。普通ならその場で殺されかねない状況だが将校は彼がピアニストだとわかると一曲弾けと命令し、彼が美しい旋律を奏でる間、表情を一切変えずに聴き入っていた。
結果将校はピアニストをかくまい、食料まで渡してくれるようになった。
将校は生きるも死ぬも神次第だと言った。天に委ねることでしかできない、我々の命は運命的なものの手のなかにある、と。しかし自分の心に従い物事を客観的に見ることのできる将校自身が、ユダヤ人とナチスドイツの軍人という運命的で絶対的に覆すことのできない関係性を取っ払って一人の人間、一人のピアニストに向き合った。そうした勇気を持ち合わせるきっかけになったのは、ピアニストが奏でる旋律があまりにも美しく、あまりにも生命力に溢れていたからではないのだろうか。