お部屋に戻して下さい

精神科からアルツハイマー型認知症と統合失調症の既往がある69歳女性Sさんが入所になりました。

事前情報では食事以外は全介助。病院に調査に伺った時も同様に言われました。

以前、立ち上がろうとして転倒し、骨折したことがあるため、念のためヘッドギアを装着していました。

全介助のため、車イスから前のめりになって落ちなければ大丈夫。動き回ることはないためそれほど手がかからないだろうと思っていました。

しかし、車イスからベッドへの移乗は自分で行え、車イスを自分で操作して移動していました。

あら?
全介助じゃないのか?

全介助との情報のためオムツをしていますが『トイレに行きたいです』と訴えます。

移乗が出来るならトイレに行けるのかな?
トイレでの排泄を試してみたら問題なく出来ました。

情報と全く違うではありませんか。

環境の変化でここまで変わるものなのか?
不思議に思いながらも夜間はベッドをステーション付近に出して様子観察をしていました。

入所して1週間が経ちました。
夜間の様子を夜勤をする職員に聞いたところ、就寝前の薬を飲むといびきをかいて寝ている。朝まで起きることはないと多くの職員が答えました。

カンファレンスにて、自分で起きることなく寝ているのであればベッドを出さなくても大丈夫と結論。私が夜勤の時に部屋で寝ることになりました。

20時頃に就寝前の薬を飲み、部屋のベッドに横になってもらいオムツをつけました。
朝まで良く休んで下さいね。おやすみなさいと声をかけて部屋を出ました。

21時に消灯のため部屋を訪れ様子を見ましたが、動く様子はなく寝ているようでした。

21時45分 同室者からのコールで来てほしいとあり、急いで居室に向かいました。
消灯後ですが室内が明るくなっていました。

何かあったのか?
部屋に入り『どうしました?』と声をかけようとする前に、大人しく寝ていたはずのSさんが隣の利用者さんのベッド付近の床に座っているのを発見しました。

Sさんはトイレに行こうとしたら転んじゃったと言っています。

薬を飲んだらよく寝ているのではなかったのか!?
しかも、オムツをしているのにトイレに行くだと?

介助で立たせてSさんのベッドに誘導。指示が入らない様子のためベッドをステーション付近に出しました。
Sさんはしきりに『ベッドを部屋に戻して下さい』と訴えますが、戻したその日に歩き出して転倒したため、事故のリスクが高すぎると判断。今日はここで寝てほしいと伝えました。

しかし、指示が入らないSさんは『ベッドを部屋に戻して下さい。歩いたりしませんから』と訴え続けます。
休むことなく訴え続けます。
今日はここで静かに寝て下さいと言っても、一向に静かにはしてくれません。
訴えを聞くことに疲れたため『次同じこと言ったらぶん殴りますよ』と脅しました。
するとSさんは静かになりました。

優しく言ったんじゃダメなんかい!?

静かにしてはいますが寝てはいない様子。
静かにしているならいいかと思いそのまま様子を見ていたら明け方から寝始めました。

転倒を見つけたため事故報告書を提出しなければなりません。

仕事を増やしやがって!

そう思いながらもちゃちゃっと報告書を記載し、よく寝ていると言った職員に後で文句を言ってやろうと思いました。

6時の起床時間になりました。
Sさんを起こして車椅子に乗せたとしても、また歩き出して転ぶ可能性があると考え、早番が来る7時まで寝かせておくことにしました。


早番が出勤して来ました。

早番に文句を言う前に、申し送りノートの転倒の件を読んで笑ってしまったと報告を受けました。

夜はぐっすり寝てるって言ってたのに全然寝なかったことを伝え、何をやるかわからないため、今後も居室では寝かせられないことを申し送ってもらいました。



今もステーション付近で寝ていますが、部屋に戻して下さいとは言いません。
それどころかイビキをかいて寝ています。

慣れたのかな?

利用者さんだけでなく、職員も安心して安全な介護が提供できるように今後も見守っていきたいと思います。




・・・ステーション付近で。

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