記録|一月十七日

 この1行目を書き出すのに5分かかった。ほぼ昨日と同じ1日で、書くことがないな、と思ってしまった。でもよく考えれば、些細ではあるけれど違いもあったことを思い出す。苛つきがなかったこと。雨が降っていなかったこと。昨日より冷え込んでいること。鳩に餌をやるおじさんが気になったこと。公園のベンチで見覚えのある人と隣になったこと。同じ日々の繰り返しがない頃は素通りしていたかもしれないような、日常の小さな変化が浮き彫りになるこの感覚は、悪くない。いや、結構好きだ。
 去年読んだ小説に、「毎年同じことを繰り返せるって幸せだと、最近思うんです」というセリフがあった。そのときはあまりピンとこなかったけれど、今なら共感できる。
 元職場のあの人は、休憩中に屋上でタバコを吸いながら、「こうやって街中見下ろしてるとさ、ああ〜、みんな生活してるなって感じて、なんか安心するんだよねぇ。」と言っていた。それも同じだ。
 朝、オフィスの窓から外の景色を見下ろすとき、あるいは、自分と同じように同じ時間同じ場所で同じ行動をとっている人がいると気づいたとき、妙に安心してしまう。それがなぜなのかは分からないし、理由などないのかもしれない。      
 今は、同じことが繰り返される日常が新鮮だけれど、いつか飽きが来てしまうんだろうか。きっと来るんだろうな。

 今日も終わり。また明日。

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