最高の接客を受けた話
今回はちょっとした、特にオチはない小話。
だけど、忘れたくない話。
先日、とある用事で買い物に行った。
目星はつけていったのに、いざお目当てのお店の前に着いてふと見ると、欲しかったアイテムがなくなっていた。
しかし私には時間がない。
あと1時間でミッションを済まさなくてはいけない。もう他に買い物に来れる日はない。焦りながら百貨店を見て回る。
そんな中、ふらっと立ち寄ったのがコムデギャルソンだった。
お、と目を引くアイテムを見つけて見ていると、にこやかな店員さんが声をかけてくれた。
「そちら、今回のコレクションのものです」
ゆったりと低く落ち着いた、それでいてよく通る声で説明してくれるその人は、とても紳士的な印象だった。
丁寧で的確で、たまに少しくだけた様子も交えつつ、私があーでもないこーでもないと悩んでる姿に根気強く付き合ってくれた。
だけど、私がその人に対して1番信頼できると感じたのは、何よりその人自身が「とても楽しそうに」服を見ていたこと。
まるで自分にとって大切な人の服を選ぶように、手に取った瞬間の顔を思い浮かべながら、実に嬉しそうに一緒に服を見立ててくれた。
余計な接客トークは何もない。
サイズや生地感、お手入れなどの必要な情報は的確に教えてくれながら、あとはとにかく楽しそうに服選びをサポートしてくれた。
こんなに最高な接客があるだろうか。
私が講師をしているスクールで度々、受講生に対して「すごいなあ」と思うことがある。
診断がめちゃくちゃ適切だったり、理論の理解が凄まじかったり、説明が上手だったりと理由は色々ある。
ただ、「これは才能だ」と本気で思ったし羨ましいとすら感じたのは、カウンセリング中、相手の話を心底楽しそうに聞いている受講生を見た時だった。
お客様役の人は嬉しそうに、カラー診断を受ける理由を話してくれていて、ただ聞かれたことに答えるのではなく、その受講生との会話を楽しんでいた。
人の話に全力の興味を向けるって、実は簡単そうで難しいこと。そして自分のことに置き換えて捉えるのは、更に特別なこと。
今回、コムデギャルソンの店員さんは、それを当然のようにしてくれた。自分のことのように、心からの祝福を持ってサポートをしてくれた。
買い物帰りの電車の中、良いものが見つかったことや、無事に買い物できたことだけじゃない幸福感が確かにあった。
この後、誕生日を迎える夫は、私一人分以上のおめでとうが詰まったこの袋を開けて、きっと喜んでくれる。
大切なプレゼントを、最高の接客で買うことができた、思い出のお店。
次はきっと、夫も一緒に最高の買い物をしに行くんだ。