GECCO2019 in Prague
チェコ共和国のプラハで The Genetic and Evolutionary Computation Conferenceという、遺伝的、進化的手法に関するカンファレンスが行われました。
私は人工生命の分野に興味があり、その方面で面白い発表がないかと思って参加しました。そのなかで目に止まったものを紹介します。
https://gecco-2019.sigevo.org/index.html/HomePage
Virtual Creatures Competition
カンファレンス本体で議題に上がるような問題解決の手法を競うのではなく、想像力とクリエイティビティに注目したコンペです。
面白かったのはサンゴのような物体が成長する Evolving Alien Coralsです。
他の作品はどれもある程度形の決まった身体の動かし方を学ぶという方向性だったのに対して、この作品は身体の形状そのものが進化していくというもので、サンゴのような身体も"生き物らしさ"があるのが特徴的でした。
この"生き物らしさ"がどこからきているのか考えると、ある空間を占める身体の表面積と体積の関係かなと思いました。
現実の生命の身体には様々な制約がかかっており、しかし何かの最適な形状をしているわけではありません。
そのような性質がうまく現れていた作品なのだと思います。
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去年優勝したLeniaという連続空間のオートマトンも面白かったです。
セルのサイズを変化させても模様の大きさは変わらず解像度が変更されるだけなのはどういうデータ構造になっているんだろう。
EvoIsland: Immersive Interactive Evolutionary 3D Modelling
3D CADのデータを遺伝子とみなしてモデル同士を交配できるようにした作品で、それぞれの3DモデルはARで可視化できるようになっています。
著者はデータの可視化に関連した作品を他にも作っており、iOS開発者でもあったので話が弾みました。
"何を作るか"ではなく"どのように表現するか"は正解がなく、アーティスティックな視点も入ってくるので面白いですね。
Evolved Cellular Automata for Edge Detection
画像のedge detectionを行う二次元セルオートマトンのルールを進化的手法で求めるという研究です。
Edge detectionだけなら単純な行列計算や他の手法で行えると思いますが、セルオートマトンであれば
> simplicity of implementation, the complexity of behaviour, parallelisation, extensibility, scalability, robustness
で行えるという主張ですね。
行っていることは単純で、セルオートマトンのルールを遺伝子として、求めたい画像を用意してルールを進化させます。
この手法で行えない画像処理はあるのか、セルの近傍半径などの設定による差異などがあるのか、など深く掘ると面白い研究だと思うのですがその辺は聞けず。
HIT-EE: a Novel Embodied Evolutionary Algorithm for Low Cost Swarm Robotics
低コスト、小さい帯域幅制約のある群れロボットで進化的アルゴリズムを利用する際に、遺伝子の水平伝播のアイデアを用いるという研究です。
ウイルス進化論と異なるのは、遺伝子の送信元と受信先が一対一対応となっているところかな…?
全体を通して:
研究よりの会かと思いきやほとんどが実務的な発表でした。
再現性、再利用性、モジュール化、様々なインターフェースがデファクトになろうとしのぎを削っている時期のようです。
他の参加者のはなしを聞くと、ここ何年かで研究よりのものから実践に関する発表に移行してきているようでした。
そのような発表で頻出する手法もなんとなくわかったので、機会があれば書こうと思います。
アートやクリエイティブ系の発表も数は少ないもののあり、上記の他にも、美術における進化的手法のoptimize functionは何になるかなど面白いテーマがありました。
どのように面白い人工生命を作れるか、ヒントが得られた良い機会でした。