見出し画像

思考を振り返る - 2021~2023

※当記事は「VRDJ Advent Calendar 2023」の参加記事です。

前書き・今回のテーマについて

今回の記事は先述のAdvent Calendarにこれ幸いと便乗して書いたものです。

というのも、自分はVRDJ界隈については、消費される時間の長さの割には深く踏み入った会話が生まれにくい場所と思っていて、
もちろん集まった人たちのイベント以前からの関係性によってその深さは千差分かれますが、少なくとも関係性がゼロからの人と会話を深めるには、
・DJイベントを通じて複数回の接触
・かつその上でDJイベント以外の時間を取ってコミュニケーションをする
必要があると思ってます。
特に自分は2番めが足りないがちになるので、ここを他の人と埋める機会を欲してる部分がかなりあります。

なので、VRDJ界隈というくくりで複数人がまとまった思考を元に文章を投げれる機会は面白いなと思っい、こうして筆を執っています。よろしくお願いします。

さて、今回のテーマとしては、とあるMixの解説を通じて自分がDJ・VR・SFに何を思っているのか、思ってきたのかを言語化してみようという試みになります。
全体を通すと長々となりますが、のちの詳説は実質的に最後の辺りを言うための長い前置きになります。
忙しい人はとりあえずMix聞きながら下の目次をバーっとスクロールして楽曲詳説は飛ばしてもらったりとかで良いです。
興味を持った部分だけかいつまんで見ていただけると幸いです。


Mix概要

今回ご紹介するのが、自分が過去に演らせて頂いた、
「Urban Light, Right, Light#2」(2022/08/14)
のセットリストになります。

メンバーとしてはTechnoもしくはアヴァンギャルドな音が流れそうな気配がしていて、ワールドの雰囲気も相まって個人的にはレトロフューチャーの機運もありました。
ちょうどその時「この曲を込みでDJしたい」という曲が見つかったこともあり、テーマは
自分が観たいSF作品の劇伴
にしようというのを、イベントの趣旨とは別個に定めました。

イベントそのものも、比較的流れよりは個人の自由にカッコよくやることを重視する、というテイストでしたので
VRDJは「一話完結」である
(基本は個人配信につき以降のDJとは繋ぐ事が物理的に難しい)
という、VRDJのもつ基本的な性質・制約を逆手に取り、好き放題にさせて頂くことに。

ただ、そのテーマの特性上と、ワールドに配置されたスクリーンがどデカく縦2段ということもあり、どうしてもVJが欲しいなとなったので募集を掛けました。

結果、その当時VJとして活動をし始めていたMineserさんにお声掛けさせていただいて一緒に出てもらうことになった、というのも、今のMineserさんの活躍を見ていると個人的に感慨深いものがあります。
事前に共有した自分の意図も汲んでもらい、とてもいい映像を付けていただけましたが、スクリーンショット以外に履歴が残っていないのが心苦しい。

そんな状況の中で流した一幕になります。

Mix参照

・Mixcloud

・Youtubeプレイリスト(原曲)

楽曲詳説

……をここからはしていくわけですが、
当時の状況を思い返しながら、時に過去の自分のぼんやりとした思考に、現代文の回答みたいな「こういう意図があるんでは(しらんけど)」的な肉付けをしながら書いて行っているので、
Mixを組んでいる時にリアルタイムでここまで考えている訳ではない
という前置きをしておきます。多分各所に(恐らく)っていう但し書きがつく勢いです。
実際組んでる時はイメージをもとにほぼ直感やレコボのサジェストからイメージに合うものを取ってくる感じでした。

そんな感じでも良ければ、年末年始で暇が生まれた時のお供にでも読んでいただければと思います。

1. Opening Sequence - Calla Soiled

・Album:

Calla Soiledさんは独特の機械的な冷たい音像と寂寞感のある世界観で電子音楽を作られてる方なのですが、
その中でも「亜」はVOCALOIDも交えて、遠い未来の異種族の男女間のストーリーをアルバムに絡め、その音の持つSF作品のような側面を濃厚にしたアルバムになってます。

その中から開幕曲を用いて導入としました。
この曲の展開は山なりになっており、BPM的にも一度倍のBPMになって戻るので、異なるビート感を持ってる次の曲に向けて終わり際に更にBPMを落として馴染ませています。

2. This City - Plaid

・Album: 鉄コン筋クリート Original Sound track
※動画内1曲目

前の曲とこの曲はセットで今回のOPに位置づけています。先の曲がその舞台における、描かれる時代の空気感を示し、この曲でことが起こる場所を定義しています。
どこか諦観をまとった空気が漂う時代、その中でも依然として人の営みが行われてる下層の街、をイメージしました。

映画「鉄コン筋クリート」のプロモからの引用で、この作品は宝町という猥雑でケバだった空気をまとってる街を舞台にしているのですが、
その街を無邪気な暴力を振りまきながら飛び回る二人の主人公、という画が印象に残っていることから、そのイメージを引っ張ってくる目的でここに据えました。

3. Your Shadow - yeule

Album: Serotonin II

先の曲では、緊張感のある幕開けから穏やかなシーンへ、何かしらの出来事が起こる前の平穏へと移るような展開になっているのですが、
そこからの流れで次曲に指定したyeuleの曲へつなげるイメージで、ビートレス、かつゆるやかに光へ向かうような展開のあるこの曲を選択しました。
アクセスが成功したかのような印象的な電子音が最後に起こるのもあり、そこで次の曲へ移ります。

4. Pixel Affection - yeule

Album: Serotonin II

電子の海、仮想現実で彷徨い、時に現実との境目が曖昧になっていくという画が自分は好きなのですが、
yeuleのこのMVはかなりその部分を凝縮していて、かつかなりVRChat的だなと思う部分もあり妙な親近感を感じます。
歌詞も、仮想現実によって引き起こされる人間の営みについての儚さを歌っているような、浮遊感のあるものになっており、これらのMVや歌詞から受け取るイメージを取り込む意図で選曲しました。

5. Cloud 9 - Chouchou

Album: ALEXANDRITE

Chouchou(シュシュ)という音楽ユニットがあります。
その方々は、元々はSecond Lifeを活動の拠点とし、アバターやライブ空間を含めたプロデュースを自己で行いながら活動をされていたユニットです。

自分はニコニコ動画から「ニコニコインディーズ」タグを経由してこの方々の音と出会ったわけですが、その頃はまだSecond Lifeへのアクセスが難しく、
また、Chouchouの活動内容が仮想空間を抜け出してリアルの姿を現し始めた、活動内容における過渡期の時期だったと記憶しています。

惜しくも自分はその頃のライブに立ち会えなかったのですが、
個人的に「仮想空間での音楽活動」像を自分に示してくれた始まりとして、もしくはヴァーチャルの象徴としてChouchouは各所で使っているのですが、
その中の1つとして、このセットでも仮想空間上での出来事をイメージしながら組み込みました。

6. Gravity (Superego Mix) - Chouchou

Album: Remix 02 Superego

同じくChouchouから選曲しました。
奇しくも見返してみると自分のイメージするこのタイミングでのシーン像とオーバーラップするようなMVになっている気がします。
また、当時の活動の様子が垣間見えるものとしても、今見た時のレトロ感も含めてこのMVは好きですね。

今回のMixではRemixの方を使用したこともあり、歌詞の部分までフルで上手く用いることはできませんでしたが、原曲の雰囲気と歌われる情景も印象的、かつこのシーンの心象として引っ張って来たかったものになったりしています。

歌詞参考:gravity / Chouchou(bandcamp)

7. CLOCK - Plaid

Album: The Digging Remedy

先述の鉄コン筋クリートの劇伴を務めたPlaidですが、元々はTechno / Electronicaをメインに30年余りも活躍をされている大御所です。
近年のPlaidはサウンドが非常に無機的ながらも、音楽全体を聴いてみたイメージとしては有機的なとらえどころのない生物、もしくはいわゆる「不気味の谷」にいる無機物が動いているような、どこか不気味で不可思議な感じがする部分があり、自分はそこに惹かれてます。

個人的にはこのCLOCKは何か重大な物事が先に控えている時に時計を見ているような、平穏だけど薄暗い雰囲気をまとっている曲で、
Mixにおいてもそのイメージでここに据えています。

8. Shut_9sec - Calla Soiled

Album:

Calla Soiledの亜からもう1曲。
Shut_9secというタイトルからもログアウトして現実に舞台が移るようなイメージです。サウンドとしては乗り物に乗って、視界に規則的にやってくる沿線・沿道の設備を見ているような空気感を感じます。
ビートの規則性が強い音を入れて、展開としても波が上がっていくような意図でここに置いています。

9. Where? - Plaid

Album: 鉄コン筋クリート Original Sound track

鉄コン筋クリートの劇伴よりもう一曲。
曲名と曲調から主人公たちがじわじわとした不安感もしくは脅威に追われているようなシーンをイメージしました。
また、BPM的に次のJOYRIDEと一致することから、一瞬音の波が止まったところを見計らいロックバンドサウンドに切り替えます。

ただ、個人的には劇中でこの曲が流れたイメージがまるでなく、原作を見返したら主人公が自分の中に潜む闇に飲まれそうなシーンで少しだけ使用されてました。いやこんなチョイ役だったんですねこの曲……

10. JOYRIDE - BOOM BOOM SATELLITES

Album: 19972007

BOOM BOOM SATELLITESもまた日本のSF作品においては象徴的なユニットと考えています。
初期のBig beat路線から後期のデジタルロックなテイストまで外れ曲のないユニットですが、特に後期になってからの各種タイアップは自分の中で印象に残っていて、
・APPLESEED - Die for you
・ベクシル 2077日本鎖国 - EASY ACTION
など、このユニットの音楽を背景に仲間たちと共闘するイメージがあるバンドです。
JOYRIDEは、パッと聞いたときの変拍子感によって乱入・乱闘を、また転換を用いて前曲の雰囲気をスネアで断ち切り、共闘を始めるイメージで、上述のシーンを思い浮かべながら選びました。

11. Moment I Count - BOOM BOOM SATELLITES

Album: 19972007

同じくBOOM BOOM SATELLITESから、今度は状況が程よく拮抗しているような音を、というあまりDJで考えない基準を思い浮かべながら選んだ曲になります。
歌詞もこんな感じでギターリフの始まりも良いので戦闘っぽい!採用!って感じでした。

Got my back on the wall
壁に背を向けた
There's nothing in my way
邪魔するものは何もない
I know it's gonna be alright
きっと大丈夫だ
Evil is what I am
悪とは私のこと

Every moment I count down
カウントダウンする度に…

12. Ghost In The Shell - 石野卓球

Album: 攻殻機動隊 Megatech Body.Cd.,Ltd.

攻殻機動隊 × 石野卓球という中々にないコラボの名曲になります。
自分はプレイしたことがない作品なのですが、プレイ動画中の漫画原作に沿った各キャラの演技やOPムービーが印象に残ってる作品です。
いつか何かしらの文脈を付与しながら組み込みたかった曲だったので、今回のテーマでここぞとばかりに選んだ曲です。

ただプレイ上は少し心残りがあり、盛り上がりを維持するためにJOYRIDEと次の曲も含めてマッシュアップしながら繋げたかった欲があったが2CHの制限により叶わず。
当時はDDJ-400がメイン機で、この出来事もまた自分が「4CHはマストの機能だな」と思い始めるきっかけのひとつになりました。

13. Venomnous - Zeltak

Album: Darkart Weapons DAVA03

振り返ると、Mixとして表出させたのはここが唯一になってしまいましたが、この頃は周りにTechnoをやってる方が増えていたのもあり、意外とHard Techno周りの機運が来ていて、曲自体は掘ってました。
次の曲へ向けてGhost In The Shellの高まりをプッシュするためにIndustrialな音で、かつBass部分を増強出来る曲は無いか、という視点で選曲しました。

14. TsuiTsui - U

Album: Ridge Racer V Original Game Soundtrack

リッジレーサーVも、そのUIだったりゲームの纏う雰囲気から未来・サイバーな世界観を自分が連想する時に指標となるような、影響を与えられた作品の1つです。

参考(ゲームプレイ動画):

特にこの作品は音楽面においてもMijk van Dijk, BOOM BOOM SATELLITES, THE MAD CAPSULE MARKETSから上田剛士さんを起用するなどTechno・サイバー色の強い時期だった印象があります。

Tsui Tsuiはそのサントラの中でもお気に入りの曲で
次曲の傀儡謡とTechnoのマッシュアップの発想はすでにあり、Tribal色が強い、かつコード感がそこまでなくマッシュアップに違和感が比較的少ないということから選曲しました。

15. 傀儡謡 陽炎は黄泉に待たむと - 川井憲次

Album: Innocense Original Sound track

「イノセンス」も個人的には映像・音の美しさやそのテーマからして思い入れのある作品です。人と人を模したものの境目はどこか、なぜ人は人間の似姿を作るのか。VRやAI技術の進化を通じて現実でその一端に触れるようになってきた昨今、各々が自分なりの回答を持っておいたほうがいいテーマに感じます。

Mixの側面で言うと、IndustrialなTechnoと傀儡謡の歌唱を組み合わせる発想は攻殻機動隊周りのDJをする方でよく見られるもので、それに対しての憧れもあってここに傀儡謡を差し込みました。
原曲よりかなり早回しですが、結果的にはTsui Tsuiからのトライバルな流れが受け継げるようなドラムパターンになったのは良かったと思います。

半ば余談ですが、BPM SYNCがバグってSYNCしているはずなのにだんだんマッシュアップ先の曲から遅れていったり、TEMPOフェーダーを下げるとガクッとBPMが下がったり、この曲はRekordbox上で不可解な現象が多かったです。
ただ、今回はそれを逆手に取って静かになった部分でガッツリBPMを下げて次の曲に繋いでます。

16. 1335-2300 (feat. Hatsune Miku) - ばぶちゃん

Album: おわりのはじまり

陰鬱かつ奇怪な世界観が印象的なばぶちゃんというアーティストですが、
この曲はボーカロイドの使い方やその音の壮大さから、ばぶちゃんの曲の中で一番好きな作品です。
作者本人がアーティストとして一見奇怪なパーソナリティを確立していることと、ボーカロイド・女声共に歌詞が一切公開されていないことからこの曲の解釈は分かれまくり、
一説にはドグラ・マグラやダニエル書8章がモチーフなどと言われていますが、個人的にはYoutubeのコメント欄より、意図せず早産が差し迫ってしまった母親と胎児の悲劇というdraconiusultamiusさんの解釈を推しています。

展開のイメージとしては、薄皮を剥いだらヤバいのが出てきた、みたいなアレです。裏ボス、もしくは第二形態。
傀儡謡からの流れで女性ボーカルをメインに据えた展開、かつ次曲に備えて嵐を起こすことを意図しました。

17. THE 1975 / LOVE IT IF WE MADE IT BLOOD OF AZA REMIX - Blood of Aza

実はこの曲を知った時に衝撃を受け、どこで流そう、どう流したら映えるかというところが今回のMixの起点になってます。

元々の歌詞が「クソみたいなこといっぱいあるけど、だからこそ何かを成すことは素晴らしいことだ」という趣旨の歌詞をしていて、これはこれで現代を生き抜く歌として個人的には元からかなり好きな曲なんですが、
それを機械的な声で歌わせていること、かつこのアレンジなので、世を俯瞰して諦念を抱いた末にAIが弾き出した(人間的には)誤った思考、みたいな聴こえ方をするのが良かったです。
Modernity has failed us(現代が僕らを見捨てたのさ)を機械音声が発するのは非常にSF的趣があって好きですね。

参考:

18. VIRTUAL SELF / GHOST VOICES (SHADIENT Edit) - SHADIENT

SFをテーマに据える、という視点で見ると、個人的に近年では外せないのがVIRTUALSELF / Porter Robinsonの楽曲群と、そこから生み出されるイメージ像です。
自分のVR上で行われるショーの原風景は2021年のSecretSkyであり、婉曲的にこの体験がVRChatの音楽シーンを発見する導線になったと思っています。

選曲したのは言わずと知れたGHOST VOICESですが、今回そこからSHADIENTによってRemixされたものを使用しています。ソリッドなキックが最高で、このRemixはよく使用しています。
また、後半で次の曲とのマッシュアップを図るのですが、歌詞の節回しと噛み合う物があったのも採用している理由の一つです。
展開としては曲頭のサイレンから事が終わった後のEDに転換するイメージです。

19. A DANCER ON THE PAINTED DESERT - THE SPELLBOUND

Album: THE SPELLBOUND

BOOM BOOM SATELLITESの後継、もしくは新たな形態としてTHE SPELLBOUNDというユニットが今も存在することに自分はとても有り難さを感じていて、未だにこれらのバンドを超えたサイバーパンク・SF的表現をするバンドがパッとは思い浮かばないくらいです。
最近では日本語詩を取り入れる事によってより世界観を示すにあたって直接的で、響きやすいパワーを得ているように感じます。

それゆえ一曲一曲が強いので普段のDJではトリ以外で使いこなせる気がしないのですが、
こういうテーマなので絶対どっかで使いたいなと思っていた矢先に、GHOST VOICESとのキーマッチによりマッシュアップが生み出されました。
奇しくもインタビューで見たこの曲のイメージとも合致しており、偶然の面白さを感じたことを覚えています。

都会を目的もなく、愛されてもなければ愛してもいない、虚な状態でとぼとぼ歩いている男がいて、実は反転したパラレルワールドでは、灼熱の砂漠の上でとぼとぼと歩いている。そこでなんで自分がとぼとぼと歩き続けているのかを考えたときに、誰かを愛することを諦めていない、実はこうやって何気なく歩いていることも目的があって歩いているんだ……という世界観。

Rolling Stone Japan - THE SPELLBOUNDが語る、ブンブン中野とノベンバ小林にしか表現できない「領域」とは?

まとめ

楽曲詳説は以上となります。聴いて・読んでいただけた方は本当にありがとうございます。
結果として自分が見てきた作品やSF、技術に対しての眼差しや思考の芯の部分を色濃く反映したようなMixになったと思います。
ここからは今回のMixやそれについての再考を通して、垣間見える部分を2つの筋を通してもう少し言語化してみたいと思います。

VR・SFと自分について

思えばSFというジャンルに大別される作品に対して自分は下記のようなイメージがあります。

  • 人間とは何か、人間のどの要素によって人間は「人間」たらしめているのか

  • 技術によって人間の行うことが拡張され、時に最終出力やその姿かたちにおいて意図が希薄になることもある中で、それでも表出する「人間らしさ」とはなにか

  • 技術によって作られた、人間の機能や仕草、姿かたちを真似る物体Xに対して、人間がそれらと違う、と認識できる要素や確証とはなにか

というようなことを、人間と急速に発展した技術を対比させて浮かび上がらせていく行為が、作品として結実したものだと思っています。

作品のテーマを通してこれらを探求する過程が個人的にはとても好きで、未だにSFというジャンルに自分が引力を感じる一因になっているのですが、
最近はVRSNSやそこでのアバターを使ったやり取りを通じて、これらのテーマ考える手前の段階の「様々な境界(性別・距離・人格)を個人の意識の中で、もしくは人とのコミュニケーションの中で飛び越える」動きが見られるのにとてもワクワクします。

かといって先程挙げたテーマが今の段階で考えられることではないのか、というとそうではなく、
人間の機能の拡張、身体の代替、サイボーグ化という部分を見ると、仮初めではあるもののアバターを着るという行為がそれのデモンストレーションのようにも見えます。
対話能力を持ったAI技術の進展もあり、作品中ではロボットがAIの依代となって出来事が起こる場面も多い中、今後自分たちが日常的に上述のテーマを考えないといけなくなるのはロボットと相対したときではなく、仮想空間上で自分たちと同じアバターを被った、人間とコミュニケーション能力上の区別の付かないAIと遭遇した時なのではと最近は思う次第です。

自分の憧れた世界観を、VRや仮想空間を通して垣間見れている、というのがこの世界に自分が惹かれる一番大きな理由なんだろうなと改めて思いました。

DJ・VRDJの活動について

自分はVRDJからDJとしての活動をスタートさせたこともあり、DJを始める時の原風景や憧憬を抱いていたものはクラブではなくサイバー・仮想であることを前面に出したような舞台であり、踊れる音というよりはそのイメージを強固にできるようなシリアスな音であり、インターネットでありギークな音です。
DJを始めた初期から今に至るまで自分の選曲基準や価値観の根っこにはこの思考があり、常にその部分に片足を置いているような気がします。
ただ、こうして過去のMixやその前後を思い出すにあたり、意外と自分もスタイルを変えているんだなということに思い至ります。

2021年からVRDJを始め、最初期は先述のイメージを満たす音の探求や、VRDJだからこそできる部分――主にワールドとの親和性の部分に目線を置いたり、イベントの意図に沿わせつ、前述の自分の目指す音・テーマを完結させるストーリーの完成度だったりに重きを置いていましたが、
そこから2022年に移り、リアルの現場にも招いて頂くにあたり、VRでは生み出しにくいイベント全体での津波のようなダイナミズムが生まれるところを目の当たりにしたり、物理的に身体が揺れることの陶酔感だったりを取り戻したりでスタイルや意識もそれらを生み出したい、という意識に変わっていった記憶があります。

その流れで言えば、今回のMixはある意味2021年のスタイルの総括・2022以降のスタイルへの遷移のような部分があったのかなと思います。
これに気づけたのは今回の振り返りをしていて面白い部分でした。

また、最近ではVRDJで得た要素の現実へのフィードバックや、その逆を試みようと色々な場所に出させて頂いたり、DJではない方面のことをやってみたりなどしていますが、逆にこの頃のようなVRDJ然としたスタイルに立ち返ってみるのも面白いのかなと思った次第です。
とはいえこの時のテーマ以上にやりたい文脈が浮かばないので難しいですけど……

終わりに

最終的にとりとめのない散文みたいになりましたが、ここまで見ていただきありがとうございました。改めて日々こういうことの欠片みたいなものを思いながら生きている人間です。

VRDJの界隈も成熟を極め、盛んにリアルとのクロスオーバーが起きている中、やはりそれでもまだVRはそれだけで面白い場所であり続けていると思います。
今後もその時どきでの自分のいるフィールドの持つ利点だったり、そこでしか出来ないことを考えながらSFへの憧憬や仮想現実の持つ可能性への期待を胸に活動を続けていきますのでよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?