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オレンジの夜、それと7月

いつの日も、曇りの夜、空はオレンジだ。街の光を受け取って、夕焼けを伸ばしたようなオレンジに染まっている。

暑い。

週間天気はずーっと先まで灰色か青。最高気温は2まで見えてあとは見たくない気温。

現在深夜23時29分。唐突に書きたくなったが眠たい。ああ、5分でなにかかけないかなあ。無理だけど。

夏の青を感じる日と、梅雨のようなものを感じる日とがランダムで続くこの季節をなんと呼べばいいのか。

夏が来たぞー!と浮かれてサマーソングを集めていたと思えば必死に雨の日に聴きたい曲と検索してあれでもないこれでもないとのたうち回って暑さに蒸発している。

にしても暑い。布団を剥ぐ。

タオルケットにエヌクール。エヌクールはひんやりだけどタオルケットが暑い。

暑い。

今日は降ってるのかすら怪しい小雨と強風、それとめちゃめちゃな湿度の空気がただよう日だった。日中常に首に汗がまとわりついて、寝る前はじたばたしてしまう。

夏を心待ちにしていたはずなのに嫌になる理由がわかってきた。

夏だ!と宣言できる機会を見失ってしまうからである。湿度が〜雨が〜と騒いでいたらいつの間にか1年に数回の猛暑がやってきて、扇風機の前で倒れていたらあとは日が短くなり寒くなるだけ。

時間が足りない。

幻想のような季節だからこそ、記憶は鮮やかで、人々がそこに思いを馳せているのだろうな。

にしても夏ってこんなにじめじめしてたっけ。

コーヒーをアイスで入れようとして氷を足したら薄くなってよくわからない液体ができる。アイスを食べるとチョコの破片が床に落ちてべたりと溶ける。もう食べれない。ファイブミニ美味しい。瓶も落とさない。けど小学生の時、麦茶を入れていた容器を落として思い切り割ってこっぴどく叱られた記憶があるので、ワレモノは永遠に怖い。訳もわからず雑巾で床を拭いて絞ると、手が真っ赤になっていて思わず目をつぶった。ガラスの細かな破片が雑巾に染み付いていたのだ。思い出すだけで怖い。ああ、割りたくない、なにも割りたくない。なぜうちにある食器はメラミンコップとお椀以外割れるのだ。ああ怖い。


…あれ?

涼んできた。


怖い話で涼む、ということは本当にあるらしい。

布団をかぶる。

暑さと怖さ、どちらを、取るかと言われたら…。悩む。どちらもかなり嫌だ。

オレンジシャーベットを思い描きながらカーテンを開けて窓に手をぴたりとつける。ああ冷たい。

でも、今は夜だ。オレンジとはいえ、夜だ。

オレンジはどこまでもにごってくすんで黒混じりで、布団くらいに暑苦しかった。いつの間にか窓に熱が吸われなくなる。

いやだーーーー!!寝よう!

布団を剥ぐ。

いやでも寝るんだよ。布団をかぶる。

日を越してツイッターを見たら寝てやるんだ。


そういえば、もう7月。当分7月。

7月と8月、どっちが夏本番なのだろう。


…ほらそんなどうでもいいことに頭使うから暑くなるんだよ。

そうやって悩んでいる今がもう、夏本番なのに。

今年に、リハーサルはない。

今年も、リハーサルがない。

日々を自分の力で繋ぎ止めて演じきるのだ。カーテンコールまで自分の役の名前を知らない季節。

夏。

ぼうっとしてると消えてしまう、夏。

今が、夏。

そう思うと、空のオレンジもシャーベットに見えてきたかもしれない。黒混じりでも、自分でそのシャーベットを作ってやったらいいのだ。私の夏を夏と呼ぶのは私だけだ。


…でも暑い。いくらシャーベットを自分で作れても、食べてしまえば終わりだ。暑い時間も、夏と呼ばなくては。…いや、だけど、醜い姿で布団を脱ぎ剥ぎする今を、とても夏とは呼べないなあ。


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七月の自分勝手な空の色 すくって食べればあの人も夏

塩未