大地の芸術祭🌾 鑑賞記録(おすすめ)
大地の芸術祭
先日、新潟で開催されている「大地の芸術祭」に行ってきた。現地でスタッフとして働いている友人にガイドしてもらい、気になる作品をザザザっと見ることができたので、その記録を書いておきます。 ※画像はすべて公式サイトからの転載です
スノータワー(深澤孝史、十日町エリア)
十日町市七和地区にある七和防災センター。雪との縁を切っても切れないこの地域を象徴する除雪具「クマ武」を使った作品が展示されている。
一家に一台は必ずあるという「クマ武」。町の人々にとってありふれた生活用具が積み上げられた作品からは、屋根の上に登って除雪作業をしている人々の様子が浮かんでくる。
七和防災センターは町のコミュニティスペースの機能も果たしており、冬になると町民が集まってお祭りやイベントで盛り上げるという。足を踏み入れたばかりの時は無機質な印象を受けたオブジェが、次第にものすごく暖かいものに見えてくるという不思議な感覚があった。
新しい座椅子で過ごす日々にむけてのいくつかの覚書(中崎透、十日町エリア)
新座(しんざ)地区にある、かなり古めの一軒家から物語を抽出し、作品に仕立てた展示。全体的に物が多く、さながら私が今住んでいる実家くらいの汚さではあるのだが、それらのすべてに物語があり、そこから新座地区の歴史や人々の営み、活動していた声が聞こえてくるような深さがある。「成功」や「成し遂げる」などとは無縁に、人がただ人生を送ること、それだけで価値があることを肯定されるような気がした。
場所が分かりにくすぎて10分ほど雨の中をさまよったので、行かれる方には「とにかくそれっぽい坂を登って行けば着きます」とお伝えしておきます。
たくさんの失われた窓のために(内海昭子、中里エリア)
「うるおい公園」の小高い丘に建てられた作品。窓ごしに妻有の景色が見えて綺麗、というだけかと思っていたら、作品名の背景には、2004年の中越地震によって「たくさんの失われた窓」という意味があるらしい。
当時この地域に住んでいた人々が窓越しに見ていた景色を、作品を介し、今ここに立つ私が見ている。知らないけれども確実にそこにいた誰かの記憶と、自分の見えている世界がグッと近づき重なるような体験だった。一番印象に残っている。
Invisible Grove 〜不可視の杜〜(早崎真奈美、津南エリア)
生物が発酵する様子を模した切り絵作品。作品単体でも十分素敵だが、この作品に関しては展示場所がすこぶる良い。
苗場酒造という日本酒醸造所の2階に展示され、鑑賞する間、日本酒の発酵された匂いと、年季が入りながらも磨き上げられた家屋の匂いが香り、床は畳で、随所に散りばめられた発酵の切り絵…すべてが計算し尽くされたような鑑賞体験で、発酵の豊かさが記憶に刻み込まれた感じがする。
最後の教室(クリスチャン・ボルタンスキー、松之山エリア)
旧小学校と体育館を丸ごとボルタンスキーワールドに仕立て上げた作品。正直私とボルタンスキーの死生観はマッチしないのだが、やはり建物全体を使った作品となると体験として壮大なスケール感がある。瀬戸内でも国立新美術館でもボルタンスキーを見たが、ここが一番よかったです。すばらしい。
Ongoing Village〜進行形の村〜(松之山エリア)
吉祥寺で活動を展開するアートコレクティブ「Ongoing」が主催する展示作品。温泉に入ったあと、夜の短編映画プログラムに滑り込んだので全貌は見られなかったが、かなりクリエイティブ丸出しでよかった。写真に写っている床の丸にはアーティストの一言メモのようなものが書かれているのだが、あまりに人間らしくて元気が出る。「奨学金未払いの裁判と展覧会の設営初日が重なる」など。
まだ行きたい場所がたくさんあるし、食べたいものもあるし、パスポートも買ったので、政府の旅行割でも使ってもう一回くらい行けないかしら・・と思いつつ、今回の記録は以上です。
YouTubeはこちら
https://youtu.be/OXKAzZgi0mY