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悪魔の実

ついこの間まで短パンで生活していたのに今ではヒートテックを身に纏っている今日このごろ。季節の流れはなんと早いものか。
こうやって冬に向かう寒暖差で体調を崩すのが毎年恒例だ。

そんな体調不良時に本能なのか、はたまた呪われているのか、無性にニンニクを摂取したくなってしまう。
しかしこのニンニクなかなか厄介な代物で、まるで漫画のワンピースに出てくる【悪魔の実】の如く取扱注意の代物だ。

※悪魔の実とはワンピースに出てくる架空の果実。食べると超人的な能力が身に付くがその引き換えに、海賊にとって致命的な金づちとなってしまう。

食べると元気になり食欲も増すが、それと引き換えに口臭を撒き散らすという人間社会において致命的な欠点を負うことになってしまう。
まるで実社会における【悪魔の実】だと俺は思っている。


そもそもなぜこんなにニンニクを求めてしまうのか。
理由を紐解くとソウルフードが関係していた。


初めてニンニクの味を意識したのは中学生の時。
生まれ育った多摩地区といわれる東京都下には【伝説のすた丼】という飯屋がある。
豚バラをニンニクの効いた特製ダレで炒め、それを大盛りライスに乗せた無骨などんぶり飯だ。

『デカ盛りでメチャクチャ旨い丼を食える店があるらしいぞ』
思春期童貞男子の間でそんな噂が広まるのは自然の流れで、チャリにまたがり食べに行ったのを覚えている。

店内には所狭しと
【〜大学 柔道部完食!】
【〜高校 空手部完食!!】
なんて、日に焼けて焦げ茶になったデカ盛り完食の証である色紙が貼り出されていたり、明らかにヤンキーのお兄さんが鍋を振るっていたりと思春期童貞男子にはなんとも刺激的な空間だった。

食券を購入してカウンターに座っていると、食欲を誘うニンニクの香りに口内のヨダレが溢れ出るのを感じる。
ヤンキー店員からスッとさし出されたどんぶりの風貌はまさに体育会系。

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口に運ぶとガツンと刺さるように感じる旨味と風味。
「うめぇ!!」
思わず声に出して興奮した。
おそらくこの日からずっとニンニクに魅了されている気がする。


今ではこの【伝説のすた丼】も全国展開されて高速のSAなんかにも出店しているが、90年代はどローカルな食べ物だった。
学校が多い土地柄も相まって学生たちがこぞって食べていたので、多摩地区のソウルフードと言ってしまっても過言ではない。

その日を境にすた丼にも足繁く通い、当時流行っていた豚骨背脂系ラーメンにがっつりニンニクをぶち入れるスタイルを覚え、順当にニンニク奴隷への階段を登っていった。

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今でも変わらずニンニクを食べたいが、悪魔の実ゆえに食べるにはそれなりの覚悟と条件が必要だ。

若い頃は【人の不快<己の欲】で生きていたが為に、気にせずニンニクをぶち込めていたが、長く社会に揉まれたお陰で周りを臭いで不快にしないように生きていく事を心掛けている。
社会性とニンニク欲は反比例なようだ。

そして過剰な量を食べるともれなく腹痛もおまけでセットしてくれる。
旨みと栄養素もすごいが、細菌や善玉菌も殺してしまう諸刃の刃なので腹痛もやむなしか。

よって摂取は翌日予定無し、体調も良好(腹痛)、お上の外食許可という状況が揃わないと食べられない一大イベントなのだ。


しかしながらストレスが溜まるとそのガス抜きとして衝動的かつ突発的に食べてしまうこともある。
そんな時に最適なのは二郎系ラーメンだ。

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食べた後にはストレスなんて香りに掻き消されて、口内に残る余韻で多幸感にすら満ち溢れる。

しかし数時間後、ハードな腹痛と己の毛穴から噴き出るニンニク臭に自己嫌悪に陥る。
まさに毒をもって(ニンニク)毒を制す(ストレス)である。

臭いに対して寛大なお上ですら、
『さすがに、、臭い、、!』
と苦笑い。
申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

しばらくして体からその成分が抜け切った頃にはまたニンニクを欲してしまう自分がいる。ニンニクに呪われているのだ。

酒もタバコもギャンブルもやらない自分に残された数少ない娯楽のひとつなので、社会性を維持しつつ悪魔の実と上手く付き合っていきたい。

さて、今週のオンライン打ち合わせが今からストレスなので今夜はニンニク料理を食べたいと思う。

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