海の街、空想と現実が交差する(ラ・セレナ/チリ)
サンペドロ・デ・アタカマからカラマ経由でラ・セレナに向かった。
砂漠の街から海沿いの街までの移動。
カラマまでは1時間半ほどの道のり。
そしてカラマからラセレナは夜行バスで15時間。寝てたら一瞬だった。
ラ・セレナは海からの寒流の影響で午前中は毎日霧がかっていて街全体が暗く、だけど涼しい。
午後になると晴れて暖かい日差しが降り注ぐ。
アタカマに比べて湿度が高くここに来て乾燥肌や喉のイガイガからも解放された。
この街は海産物が美味しいとのことで早速海の方へと向かった。
歩くには遠く、タクシーもお金かかるしなあと思ってレンタル自転車にした。
街の自転車屋さんにレンタルしているか聞いてみたら貸してないよと言われた。
それもそうかと思ったがこの人が貸してくれるよ!という情報をいただきラッキー。
自転車を貸してくれる人のところを訪ねると、看板などはなくただの自宅だったがしっかりとしたものを貸してくれた。
乗ってみると曲がっていて、慣れるまでフラフラしたけれど。
ラセレナの街にはチャリロード(自転車専用の道。正式名称は知らない。)があって非常に走りやすい。
どことなくヨーロッパのような石造りの建物が多く、道路の中央には広い道がある。
昔、パリに行った時のことを思い出した。
"パリの街を自転車で駆け抜ける女の子"という程で自転車を漕ぐと乙女心が揺らいだ。
ここはパリの街。
ペダルを踏む、石畳を行く。
テラスでコーヒーを飲む紳士の横を通り過ぎる。
気取らないヴィンテージジャケットの裾が旗めく。
パティスリーが並ぶ通り、甘い焼き菓子の香り。
世間話する老女は小花柄のスカート。
肩にかけたリネンのトートの中にはフランスパン。
フランスパンはカチカチで...それはそれはカチカチで....という妄想を繰り広げているとあっという間に目の前に海、現実。
海沿いにもチャリロードがあり清々しい気分でサイクリングが楽しめる。
日差しは強いけれど風は涼しくまさに丁度いいといったかんじ。
ラセレナの隣町、コキンボにある魚市場に行きたかったが遠かったので断念。自転車をこぎすぎてお尻が擦れて痛かった。
魚市場より手前にある海の前のレストランで海鮮を楽しむことにした。
これ、わたしが食べたかったチリの代表的な料理のひとつ、パステル・デ・ハイバ。
カニクリームコロッケの中身に近いってどっかで見てすごく気になっていた。
カニクリームコロッケの中身だけを飲むように食べれたらどんなに幸せだろうとずっと思っていた。
実際、カニクリームコロッケより蟹の身がたっぷりと入っていて、しかもその身はふわっふわだった。
空気を含んだ繊維にホワイトソースが絡んで美味しい。
上にはチーズがかかっていて濃厚、器の下の方は蟹の味が濃い。
店によるんだろうけど、ちょっと塩味が強すぎたので日本に帰ったら自分好みに作ってみようと思った。
なんとなくこの辺りのマップをみていると夕方から夜中まで開園している遊園地を発見した。
絶叫マシンや遊園地は結構好きなので好奇心がくすぐられた。
チャリロードを行き、遊園地へと向かう。
南米の遊園地とはいかに。と思った。
小さい敷地の中にいろんなアトラクションが詰め込まれている。
ジェットコースターは2種類、なんと1つは一回転する!
どっちも乗ったけど「壊れる、しぬ。」と思った。
細い鉄骨、ガタガタとけたたましい異音、ガムテープで補修されている座席。
ガサツな動きに振り回されて最後、とてつもない急停車に「ヴッ」となった。
気づけば日は落ち始め、海の向こうの夕陽が遊園地を照らしていた。
綺麗な景色。観覧車に乗ってゆっくり眺めでもできたらいいけど。正直信用しきれず、緊張感が拭えなかった。
いい経験ではあったな。夕暮れ時からさくっと楽しめるのがとてもいい。
学校帰りの制服デートとかで来れたら最高じゃん。とか思うアラサーわたし。
さて、宿に戻るとシロアリが大量発生していて完全に現実に戻った。
シロアリは自ら羽を取って中央のウネウネした部分だけになるキモ習性がある。
シロアリというぐらいなのでアリのフォルムだったらいいのに、ウジっぽいかんじ。
完全に「無理」な見た目。
ベッドにいる子は退治して寝てしまうことにした。
シナモンが嫌いという情報を見つけたのでキッチンにあった誰かのシナモンをちぎり盗み、粉砕。全身に振りかけた。
自然が好きと言いつつ、虫は苦手。
結局は整備された心地のいい自然しか好きじゃないんだ。
タフなバックパッカーに憧れる。虫なんて気にしない、もしくは虫も美しい地球に生きる尊い仲間、ぐらいに思いたい。
でもそう上手くはいかないな。
気にしないふりしても夜はイマイチぐっすり眠れなかった。
なりたい自分になれなくてもいい。そう吹っ切ってしまうことも時には大切。
嫌いです、虫。
極力こっちにきませんように。