舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」が気になる方へ
ハリーポッター原作厨で呪いの子のノベライズ本も2016年の発売日に買って読んだのだが、やっと舞台を観に行った。
気になってはいるけど・・・という方に向けて知っておいた方が良い事前知識や感想を書き残す。
作品について
「呪いの子」は原作小説および映画で描かれた本編7作の直接の続編だ。
原作第7巻「死の秘宝」のラストで大人になったハリー達と、その息子アルバス・セブルス・ポッターがホグワーツ特急に乗るために9 3/4番線を訪れる場面が描かれるが、本作はそこからスタートとなる。
言わずもがな、主人公はこのアルバスと、冒頭ホグワーツ特急内で出会う同い年のスコーピウス・マルフォイ(ドラコの息子)の二人である。
この二人がホグワーツに入学してから5年生になるまでが一気に描かれ、その中で様々なトラブルに巻き込まれていく。
この第二世代の二人の成長とともに、父としてのハリーとドラコの葛藤や成長も見ものとなっている。
元々2016年にイギリスで舞台として制作された作品で、日本語でもノベライズ本が発売されている。
もちろん原作者のJKローリングの原案。
ロンドンの公演では前後編の2部構成だが、2021年のブロードウェイ公演を機に一本に再構成した新バージョンが作られた。
日本版公演はその新バージョンを採用して2022年から始まり、現在で3年目に突入している。
上演時間は3時間40分(20分の休憩込み)。
映画やドラマなどの映像化はされていない。
必要な予備知識
一応スタンドアローンでもある程度楽しめる作りにはなっているが、当然様々な面で原作の知識を持っている方がベター。
主要キャラクターの名前や関係性は当然として、他にいくつか持っていた方が良い予備知識を挙げる。
たぶん映画流し見した程度だと「なんでその人が?」とか「誰これ?」と思うだろうなという部分を、原作厨が解説。
アルバス・セブルス・ポッター
本作の主人公でハリー・ポッターとジニー・ウィーズリーの息子。
兄ジェームズと妹リリー(共にハリーの両親から取った名前)がいる。
アルバスはアルバス・ダンブルドア、セブルスはセブルス・スネイプから取っている。
共にハリーが最も偉大だと思うホグワーツの校長。
タイムターナー(逆転時計)
原作3巻「アズカバンの囚人」にて、ハーマイオニーが一度に複数の授業を履修するために使っていたアイテム。
使うと時を遡る事ができ、アズカバンの囚人でもこのアイテムを用いて過去に戻って問題を解決する場面がある。
本作はこれを使ったタイムトラベル物のストーリーとなっている。
トライウィザードトーナメント( 三大魔法学校対抗試合)
原作4巻「炎のゴブレット」のメインストーリーとなる魔法学校同士の対抗試合。
ホグワーツ、ダームストラング、ボーバトンの3校が3つの種目で争う。
本来は各校一人ずつの代表が選ばれるが、ハッフルパフのセドリック・ディゴリーと共に、手違いにより年齢制限を満たしていないハリーもホグワーツ代表に選ばれてしまう。
またこの4作目でヴォルデモートが完全に復活する。
嘆きのマートル
原作2巻「秘密の部屋」が初出の2階の女子トイレに住み着く女学生のゴースト。
その後の作品でもたびたび登場している。
「秘密の部屋」でこのトイレでポリジュース薬を調合していたハリー、ロン、ハーマイオニーらの他、セドリック・ディゴリーや、6年生時にヴォルデモートからの命令でナーバスになっていたドラコとも交流がある。
ゴドリックズ・ホロー(ゴドリックの谷)
ホグワーツ創設者の一人でグリフィンドール寮創設者のゴドリック・グリフィンドールが誕生した地。
ハリーの両親ジェームズとリリーが住んでいた場所であり、ハリーが1歳の時ヴォルデモートにより襲撃された場所。
若き日のダンブルドアやバチルダ・バグショットなど、高名な魔法使いが住みがち。
バチルダ・バグショット
ホグワーツで使われている魔法史の教科書の著者である有名な魔女。
ゴドリックの谷に住んでいる。
若い頃からダンブルドアと交流があった。
ドローレス・アンブリッジ
原作5巻「不死鳥の騎士団」から登場した魔法省の役人。
当時ダンブルドアを危険視した魔法省から、ダンブルドアを監視するよう闇の魔術に対する防衛術の教師として送り込まれていた。
その後ヴォルデモート陣営に付いた事から、最終的にアズカバンに投獄。
セブルス・スネイプ
ハリー達がホグワーツにいた時代の主に魔法薬学の教師でスリザリンの寮監。
一時的に校長の座に就いた事もある。
ハリーの両親らとは同級生。
シリーズの裏の主人公とも言われるほどの重要人物なので一応ネタバレは避けるが、この辺りの知識もあった方が良い(今更知らない人もいないと思うが)。
なんやかんやあって、ハリーは息子にこの名前を付ける。
ベラトリックス・レストレンジ
デスイーター(ヴォルデモートの信奉者)の中でも特にヴォルデモートに近い位置にいた残忍な魔女。
主に最前線でヴォルデモートの右腕として活動した。
呪いの子とは関係ないが、シリウス・ブラックとは親戚関係である(というか純血家系はだいたいどこかで繋がりがち)。
基本的には最低限炎のゴブレットのストーリーは知っていた方が良い。
感想
原作、映画、本作のノベライズ全て知っている身としては非常に楽しめた。
舞台装置や演出もかなり凝っていて、例えば授業で手元に箒を呼び寄せる場面では本当に箒が浮く。(ワイヤーで吊っているのだと思うが、見えない)
魔法省のオフィスに入る時の電話ボックスや、フルーパウダーの演出も良かった。
ポリジュース薬で変身するシーンでは変身後のキャラと二人羽織状態になり、徐々に入れ替わっていく演出がされていて「なるほど」と思った。
映画ではCGを使っていた部分をどう表現するのか気になっていたが、うまく舞台に落とし込んでいて感心した。
また湖のシーンではステージ上に本当にプールが出現して役者が水中で演技するのも、予想外で度肝を抜かれた。
気になった点としては、特に前半はかなりセリフと展開が早く感じた。
上演時間が長くなりすぎないように仕方ないのかもしれないが、正直ノベライズ版を読んでいないと今のセリフ聞き取れなかったんじゃ?と思う部分や、この展開理解できる?と感じる部分が何箇所かあった。
1.5倍速で見ているかのようなスピード感で、特にノベライズ版と比べて細かいセリフが端折られている部分も多いので初見だと置いてけぼりを喰らいそうな場面もあった。
また特に冒頭部分のキャラクターの心理の解釈が違うと感じる点もあった。
冒頭の9 3/4番線のシーンでハリー、ロン、ハーマイオニー達が一緒にいるとどうしても注目を浴びてしまうというような部分があり、これが舞台では「目立っちゃって困っちゃうー(テヘ⭐︎)」みたいな演技がされていたが、実際は「我々が集まるとどうしても目立ってしまうから、早く帰りましょう」的なネガティブなテンションだと思うのだが。
舞台で演じる上でしかも冒頭部分なので明るく勢いを付けるために演出上こうしたのかもしれないが、かなり違和感を感じた。
それと、終始ヴォルデモートがヴォルデモーと呼ばれている。
これはファンの間でも長年議論されている事だが、10年ほど前に作者のJKローリングがtwitterで「tは発音しない」と発言した事に端を発している。
それに従えばヴォルデモーで正しいのだが、映画では英語音声でもはっきりtの音を発音している。
本当にヴォルデモーが正しいのであれば映画化する際にそこはきちんと指摘すべきだったはずだが、結局最終作までヴォルデモートで統一されているし、JKローリング自身もタイミングによってはヴォルデモートと言っている時もある。
日本語訳の書籍も映画の字幕、吹き替えも全てヴォルデモートなのだから、そこはヴォルデモートで良かったんじゃないかと。
それ以外は本当に素晴らしい作品だった。
赤坂駅の改札を出ると駅から劇場前に出る階段の時点ですでにハリーポッターの世界観が作られており、受付のスタッフもホグワーツのローブ姿だったりと、そういう部分でもテンションを上げてくれた。
舞台という物自体を初めて観た事もあり、あまり舞台俳優の方にも詳しくないため演者はテレビでも見かけるような方数人しか知らなかったのだが、それぞれ迫真の演技で圧倒された。
かなりステージに近い位置で見ていたので細かな息遣いや汗なども間近に見る事ができて、ドラマや映画とはまた違う魅力を感じる事ができた。
映画の再現度で言えば嘆きのマートル役の方の演技が完璧だった。
相当研究されたんだろうと思う。
ドラコ役の永井大さんの「ポッター!」という呼び方もかなりこだわったんだろうなと伝わった。
またロン役が芸人のひょっこりはんだったのだが、これもまた素晴らしい演技とキャラで、原作でも頻繁に描かれるシリアスなシーンでコミカル要素を入れてくるロンの役にピッタリだと思った。
また他のキャストの回も観てみたい。
まとめ
ストーリー自体、原作の完結時にファンが妄想したようなif展開があったりして非常に面白いので、気になる方は是非劇場に足を運んでみてほしい。
面白いが故に映画かネトフリ辺りのドラマシリーズなどで映像化して欲しい気持ちもあるが、舞台は舞台で素晴らしいので、この機会に舞台デビューしてみるのも良いのでは。