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もしかして乳がん?夫に相談できなかった私が変われたこと

私は沖縄が好きで、独身時代も子どもが生まれてからも、何度となく訪れています。

その家族旅行中に、頭が真っ白になる経験をしたのは10年ほど前のこと。
お風呂に入っていて気づいたんです、胸にしこりがあることに。

 触ってみると、痛い。

 〔どうしよう……確か乳がんって、若いほど進行が早かったはず……〕

どーんと気持ちが落ち込み、誰にも言えず、悶々としたまま帰宅。

私が最初に相談したのは、会社の産業医さんでした。
業務上、産業医さんとの接点があったからです。

今日は、当時の心の動きを振り返ってみたいと思います。

とにかく検査をしなくっちゃ

 
なぜに産業医?
そう思われたかもしれません。

 当時の私にとっては、それが最善策でした。

 〔信頼できる検査はどこで受けられるのか?専門家に訊くしかない〕
と考えたからです。 

マンモグラフィーと乳腺エコーを受けるのは、生まれて初めて。
検査を待つ間に胸が苦しくなった私は、東京に住む幼なじみにメールをしました。

すると……
速攻で返事が返ってきたんです。 

「どうしてそんな時に、千夏は独りでいるの?」
って。

「私が近くに住んでいたら、絶対に一緒に行ったのに!
・・・旦那さんは?」

 彼女に訊かれて、私は初めて気がつきました。
自分が夫に相談しようとまったく考えていなかったことに。

〔もしも癌だったら、子どもたちをどうしよう……〕
それしか考えていなかったのです。 

心が折れそうになった私がやったこと

 
「検査結果は、絶っ対に独りで聞きに行っちゃダメよ」

幼なじみからの助言に従って、夫に同行を頼みました。
そして、二人で有給休暇をとって向かった、坂の上の病院。

 今思えば、夫も不安だったのでしょう。
すごいスピードで歩いていきます。 

一方の私は、重い足取りで、なかなか前に進めません。

彼の背中を見ながら、
〔どうして一緒に来たんだろう〕
と思いました。 

心細くて暗い気持ちだった私は、本当は夫と手をつなぎたかったんです。
電車を乗っていたときからずっと。

でも、それを言い出せず、自分から手を伸ばすこともできないうちに、ズンズン先を歩く夫。

その背中を見ながら私は、
〔よけいに心細くなる。こんなことなら、独りで来ればよかった〕
と考えていました。

 「心細いから、手をつないでほしい」
その一言を言うだけでよかったのに、私は、自分から動かずに

〔どうしてこの人は私と並んで歩くこともできないの?なんて冷たいんだろう……〕
と夫を〈悪者〉にしていました。

〔支えてくれるどころか、逆に辛くなる。だから、夫に相談しなかったんだ〕

今思えば、あまりにも心細かった私は、夫への怒りで自分を奮い立たせていたのでしょう。

それが、当時の私なりの自分を守る方法だったのだと思います。

検査結果は「限りなく黒に近いグレー」

 
「限りなく黒に近い」という言葉に深いため息がこぼれた私に、先生が尋ねます。

「白黒はっきりつけるために、組織を切り取る検査をしますか?」

その瞬間、
あ!って思ったんです、私。

「検査しましょう」
ではなく、
「検査しますか?」

 ということは……

 次の検査までに、何かできることがあるはず! 
こんなにも動揺している今は、悪い結果が出るような気がする。

 よし!
癌が消えるという人参ジュースを飲んでみよう!

そんな考えが、パッと浮かびました。

「何週間か後でもいいですか?」
と答える私の横で、夫は言います。 
「検査は早いほうがいいやろう」

ですが、私にはそうは思えませんでした。

幼なじみからの
「千夏は昔からすごく健康に気を遣ってきてるでしょ。だから、大丈夫!」
という言葉に勇気づけられていました。

検査予約をせずに帰ることに納得がいかない夫と一緒に、どんなふうに帰宅したのかは、まったく覚えていません。 

大丈夫!を信じた日々

 
それからの私は、毎日大量の人参を絞って飲みました。

しこりが消えてなくなることだけをイメージしたんです。

「千夏は大丈夫!」
幼なじみの言葉を頭の中で何度も再現していました。

 それから何週間か経って、針生検を受けに行きました。

ガチャン!
という大きな音とともに、刺された太い針に腫瘍の一部を切り取られる強い痛みを伴う検査です。

「大丈夫、大丈夫」
自分に言い聞かせるようにつぶやいていました。

そうして迎えた精密検査の結果は……

 

白!

 

「乳腺線維腺腫」という名の良性腫瘍であったことに、安堵のため息が出ました。

人参ジュースの効用は定かではありませんが、
〔癌だったらどうしよう〕
とは1ミリも考えず、
「大丈夫!」
と自分に言い聞かせた
ことは、関係があるような気がしています。

私と夫との関係、その後

 
胸に触れられて
「痛!」
と私が言うと
「なんでやねん」
と返す夫に、言葉を失っていました。

 〔夫はデリカシーがなさすぎる〕
としか思えず、夫は〈悪者〉、私は〈被害者〉であるかのように考えては、しょっちゅう、ため息をついていました。

今の私なら、自分が何を望むのかを、ネガティブな感情を乗せずに伝えることができます。

夫が私と並んで歩けなかったのは、彼もまた不安でいっぱいだったからなのだろうと、夫の気持ちを考えられるようにもなりました。

〈悪者と被害者〉といった思考の枠を外せたおかげで、当時の心細さや怒りが再現されることもありません。

だから、こうやって、体験を文章にすることもできるようになりました。

 大丈夫!
人って、ちゃーんと成長できますね。

 しんどい記憶をわざわざ、反芻したり増殖したりする必要はない。

心の扱い方を学んだおかげで、本当に楽になれました。

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