ゲームの運要素とあなたが向き合うための方法【PL/GM両用】
この記事は、定期ゲ・梅 AdventCalendar 2020 の 5日目の記事です。
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こんばんは。ゆうです。
普段は定期ゲも含む、いろんなゲームで遊んだり、もしくはゲームを作ったりしている人です。定期ゲ AdventCalendarの首謀者でもあります。さらにCloveR Stepsという個人サークルでもなんか色々やってます。
全然関係ないんですけど、アドベントカレンダーを開催してからというものの、非開催時でも何らかの記事を自主的に書き始める人が増えて(私調べ)、開催してよかったなあと思います。
今年は去年を超えるさらにすごい分量の枠がすでに予約されているほか、本開催のアドベントカレンダー以外のアドベントカレンダーも定期界隈にちらほら見受けられて、ありがたい限りです。あ、Noteを使って投稿する方、よかったら「定期更新ゲーム」タグつけておいてください。
今回は、ゲームシステムにおける運要素と日々格闘しているあなたが、運要素と真剣に向き合ってみようかなとそんな風に思えるような記事を書いていこうと思います。ゲームを遊んでいる側の視点もありますし、ゲームを作っている側の視点もあります。
これは、双方がお互いのことをどのように思っているかを感じてもらえるかなと思ってこのように仕立ててみました。
(注意)この記事は、あくまでもさまざまなゲームでの体験を自分なりに考察したことをもとにして執筆していることをご承知おきください。
それではいってみましょう。
0. こんな体験ありませんか?
「強さやフレーバーを求めるのに必要なアイテムなどが出現しない!他の人は手に入れているのに!」
こう思うことは、定期ゲだけでなく、いろんなゲームでよくありますよね。
欲しい人のところにはなぜか出ない……よく物欲センサーとか言われたりします。
私も昔は「結晶が出ない!天鱗が出ない!」とかよく言ってたものです。いや、まあ今でも言ってるかもしれないですが……。
最終的には出たのでヨシ!(セレッシャルコール)
そう、大抵のゲームにはさまざまな部分において、さまざまな程度で、ランダム要素(以降、運要素)というものが備わっています。
プレイヤー間では、定期ゲにおいては「ガチャ(システム)」とも呼ぶことがあります。
「欲しい物が欲しい人に必ず手に入ったらいいのに、それじゃだめなの?」
こう思うこともあるでしょう。そうですね。その気持ち…わかりますよ。
では、運要素はプレイヤーにとって悪い影響を与える存在でしかないのでしょうか?
1. この記事で解説する運要素とは何か?
基本的にはこの記事ではあらゆる運要素、自分以外のプレイヤーではないゲームシステム側によって非確定的に起こる現象全般を取り扱います。
といってもそれだと抽象すぎて分かりにくいので、例を用意しました。
・ランダムでドロップする報酬やその内容
・ランダムに出現する敵ユニット等の障害や、決定されるゲーム進行ルート
・さまざまな判定の成否、もしくはばらつきのある成果量
だいたいこんな感じのものをイメージして頂ければと思います。
2. 運要素はそもそも誰のために、何のために?
運要素は、大雑把なイメージとして、プレイヤーを思い通りの展開にさせないために存在している、という印象があるものだと考えています。
後述にもありますが、実は結論としてはその通りです。
どういうことか、もう少し噛み砕いて説明しましょう。
運要素は、主にゲームの次のような効果をもたらします。
・実力差の穴埋めをして、成功体験を与えるため
囲碁や将棋などは運要素はありません。せいぜい先手かどうかぐらい。
これらは敗北したとき言うまでもなくあなたが実力不足であることを理由付けると思います。そのときの調子や相手との相性などもあるかもしれませんが、勝敗は(ゲーム相手を除けば)あなたの選択のみが反映されるでしょう。
さて、ここで考えて欲しいのですが、ゲームは誰もが最初は初心者です。
操作もわからず、技術もなく、わけもわからないままゲームオーバーになってしまう可能性があります。
もちろん少しずつルールを覚えていって上手になって成功体験を得るというのでも良いのですが、最初はやっぱりガチャガチャやっていっても成功体験を与えるため、失敗しにくいほうが良いと考えます。
そこで一つの手法として、運のウェイトを増やし実力のウェイトを下げるという方法があります。
『スプラトゥーン2』というゲームには、一番最初にプレイヤーに渡される武器『わかばシューター』というものがあります。
この武器は、他の武器に比べると、狙った場所に対して結構ランダムに散らばった弾が射撃されます。これはデメリットとして解釈できるものの、実は良い点もあり、照準を合わせるのが苦手でも弾を当てることができるのです。(もちろん、慣れてくるとこれが足かせになり、ウェルさんの記事の通り、戦闘には不向きな武器になってしまうのですが…。)
このように、ゲームに成功体験を与えることを目的して、「敢えて実力の影響を薄くする箇所を設ける」という手法が採用されることがあるのです。
ブキチもたまには良いこと言う(Splatoon2)
・ゲームに多様性を与えるため
世はまさに大インターネット時代。ゲームの攻略情報はあらゆる場所に溢れています。運要素が少ないゲームは、これまでよりもずっと最適解、つまりゲームにおけるコンテンツ全体のうちずっと少ない特定の要素のみを用いてゲームを進行させてしまうことができます。
これはもはや、ゲームに対する駆け引きや試行などを繰り返す必要などなく、操作の因果がわかりきっている作業のようなものになってしまいます。
※対戦相手がいるゲームの場合は対戦相手と駆け引きするので除きます。
ここでも運要素が関わります。
運要素によって「プレイヤーに運の善し悪しに対応させる」ということができます。アドリブや準備の徹底さをプレイヤーに対して要求し、ゲームに対する視野を広げる効果があります。
誰かが用意した答えではなく、自分の腕前をもってして答えを用意させるのです。
これのわかりやすい例は「麻雀」でしょう。
麻雀は運が良ければ配牌(最初に配られた牌)からほとんど完成した手や、優良な手をもって他プレイヤーに対して有利に立つことができます。
そして、運が悪ければ、完成からほど遠い手になり、不利を被ります。
それでも、熟練したプレイヤーは配牌の運の悪さを跳ね除け、有利そうな相手より先にアガったり、最小限の被害に抑えることもできます。
また、麻雀のルール側も、どんなに不運な状態から始めてもそれらを覆せすこともできるように洗練されています。
運が悪かったことを、「システムがあなたに失敗を与えた」と認識しがちですが、厳密には「システムがあなたに課題を与えた」のです。
与えられたカードで、なんとかこの場を切り抜けるためのプレイヤースキル・対応力が要求されます。
そしてこれらは、運要素によってゲームを開始するたびに毎度異なる展開にすることができます。作業的・機械的なものではなく、状況に応じて対応の内容を変化させ、先の読めない展開でわくわくする、多様性のあるゲームを遊ぶことができるでしょう。
(どうでもいいですが、ここに貼るいい感じの麻雀のスクショを探していたのですが良さげなものが見つかりませんでした。代わりに適当な画像を置いておきます)(雀魂)
・・・さて、最初に言った通り、運要素はプレイヤーを思い通りの展開にさせないもの。これ自体は別に変わりません。
ただ、深堀りしていくと、それはゲームに適度なわくわく感や、新しい発見を与えるために必要不可欠なスパイスなのです。
「運要素はあなたの敵ではなく、あなたにこのゲームに対する適切な意欲を与えるものだ!」
3. 運要素そのものの良し悪しを考えよう
さて、あくまでこれは適切な設計のもとで運要素が提供されている場合です。もちろんですが、運要素が適切な意欲を与えず、ただあなたを阻むものだったり、あなたを甘やかすものだったりすることもあります。
これらの場合、あなたは時として理不尽とし、納得できずにいることもあるかもしれません。
そのようなとき、ゲームシステム側に問題がある可能性も考えられます。
そこで、ゲームシステム側としてこの運要素について考えていきましょう。
大雑把に、プレイヤーに対してゲームへの意欲を削いでしまうもの、これは悪い運要素でしょう。
具体的に言えば、狙ったものを入手することが極めて困難で、注がれる努力や創意工夫の結果のほとんどが無意味なものになって諦めることを強いてきたりすると、意欲を削いでしまうでしょう。プレイヤーは進歩がなくなってきて成果がまったく得られなくなると基本的に飽きてくるからです。
もしくは、プレイヤーの意思決定に対して著しく妨害してくるもの、これはゲームに多様性を与えるものとして用意されていることがありますが、度を超えるとただイライラするだけになってしまいます。
対して良い運要素とは、プレイヤーに対して意欲を与えるものを言うでしょう。上記とは対照的で、注がれる努力や創意工夫が、きちんと相応の結果を成してくれるものです。
あるいは、プレイヤーの視野を広げ、ゲームのコンテンツの色々なものに目を向けさせるもの、それが適切な運要素の運用方法だと考えます。
4. ゲームシステム側の解決方法
運要素は、基本的でありながらルールやシステムの調整が非常に難しいものです。
どんなゲームも、運要素がもたらすリスクやリターンについてしばしばプレイヤーが不満を漏らしたり、プレイヤー間で議論になります。
では、どうすればできるだけ多くのプレイヤーが納得できるようにできるでしょうか?
抽象的ではありますが、いくつかTIPSを用意しましたので参考にしてみてください。もちろん、これは答えの一部であり、アイデア次第でもっと良いものにすることも考え方次第では可能だと考えています。
・運要素による抽選の後に、プレイヤーに選択させる仕組みを追加する
たとえば、次のようなゲームのルールがあるとします。
「カードをランダムに1枚引く」
これは非常にシンプルですが、運の強さのウェイトが非常に大きいです。プレイヤーは引いたカードに翻弄されてしまいます。目当てでないカードが続けて来たら、場合によってはゲーム的に不利になることでしょう。
そこで、次のようにしてみましょう。
「カードをランダムに3枚引いて、プレイヤーが1枚選択して獲得し、残りを破棄する」
これならどうでしょう?最終的に1枚獲得するということは変えずに、プレイヤーの意志のもとでゲームの展開をある程度コントロールすることができます。
しかも、最終的に選択したのは自分ですので、起きた事象は自分の選択によって生じた結果であり、状況に応じて最適解を考えることでより良い攻略方法を検討することができるようになるのです。
『Lobotomy Corporation』では、次の日に管理する怪物『アブノーマリティ』を選択する場面において、ちょうどこれと同じシステムを持っています。状況に応じて、あなたはいくつか抽選されたものの中から目的に応じて最適なものを選ぶことができるのです。
ランダムに選ばれたものから自分で選択する(Lobotomy Corporation)
あと、他には、サイコロの出目を固定にさせるような特殊能力やアイテムも似た解決策の一つですね。(2進めるカード的なやつとか)
・一定以上の失敗、もしくは努力を保証する
ランダムで獲得することができるアイテムやコンテンツを考えるとしましょう。単純な確率の問題によってのみ起こるものならば、運が良ければ少ない試行回数で獲得することができるかもしれませんが、運が悪いといつまでも獲得できません。
そこで、運の良さは据え置きで、運の悪さのみ現実的な範囲で頭打ちにさせてみましょう。いろいろなアプローチがありますが、主に考えられるのは「一定以上失敗したら確定で成功にさせる」「一定以上の努力で確定で成功にさせる」の2つかなと考えています。
いずれも、運が良くなくても絶対に成功する手段を設けることで、この問題を解消しています。
『スプラトゥーン2』では、プレイヤーが持つブキ(武器)の性能やプレイヤースキル(撃ち合い技術やルールごとの立ち回り等)の他に、プレイヤー自身の基本性能を調整する『ギアパワー』というものが存在します。これは、装備に対して(わずかに偏りがある)ランダムのもとで付加されるものですが、狙い通りの付加にならないことが多いです。
そして、前作ではそのため試行回数を増やす以外に狙い通りの付加にすることができないという問題がありました。
これを今作では、失敗していくほど小さな成功のかけら(ギアパワーのかけら)が蓄積していき、一定量集めるとそれらを消費して一回だけ確定で狙い通りの付加を得ることができます。
※説明の手間の都合上、厳密には説明とややずれているものがありますがご了承ください。
ギアパワーのかけら10個で1個確定になる(Splatoon2)
なお、この他の解決策として、『ボックスガチャ方式』というものもあります。ボックスガチャとは、予め排出される中身の種類と個数が決まっており、引くほど中身の個数が減ることで目的のものが獲得できる確率が上昇するという仕組みです。(その結果として、最終的には確定で獲得できる)
これも、一定以上の努力を保証するものであり、いつまでも獲得できない…という呪縛から解き放たれるようになっています。
このように工夫することで、プレイヤーが確率の悪魔から逃れ、あくまでもプレイヤーのアドリブや準備力がゲームをコントロールし、それに対して納得をある程度得られるようになるのではないかと思います。
5. まとめ
スクリーンショットにほとんど定期ゲの画像がないんだけどいいのか…?というのはさておくとして。
人の好みは千差万別です。やはり、そうは言っても人によって好みが分かれるというのが現実的な問題。
どれぐらい運要素があると楽しいと思えるかは、ここまで書いたものの、人によって大きく異なると思います。
特に、ゲームシステムに慣れ、熟知していき、どんなゲームデータが存在するかわかってくるようになるほど、そのゲームに対する理論的な解を求めるようになって運要素を毛嫌いする傾向にあるように私は思います。突き詰められる部分があるのなら、突き詰めたいと思うのは普通だと思っています。
定期ゲでは、運の良さによって結果として人と比較され、差がついてしまうこともあるかもしれません。
そのとき、あなたには課題が課され、柔軟な発想のもとで別のアプローチが求められているのです。運は慣らせばみんなだいたい同じようなものになるので、笑って過ごしましょう。
もちろん、それで合わないと思ったら無理に続ける必要もありませんしね。
それでは、楽しいゲームライフを!