猫のいない庭⑥
第九話『近隣』
花岡さんのいう新しく越してきた人を私は尋ねることにした。花岡さんよるとその人が引っ越してきてからこの超音波は酷くなったとのこと。また、その人はうちからも近いことが判明した。約40〜50m位かと思う。わざわざメジャーで測ったら変人だと思われるのでこれで勘弁して欲しい。前にもご近所さんにご挨拶に伺ったがその新しい隣人だけは不在だったことを思い出した。あまり家にはいないのだろうか。少し私は重くなった足を猫のためにと、運びその隣人の家に向かう。『うわーなんか、、今更ご対面嫌だなー』花岡さんにも絶対次回聞かれるであろうな。恐る恐るデカい門の右にあるインターフォンのボタンを押す。ピンポーンでは無くリリリリンというベルの音だ。少し経ち反応がないのでもう一度リリリリン。『はい。どちら様かね』男性の声がした。表札には''山本''と書いてある。どうやら家主は山本さんらしい。悪いが諸君。私は一々覚えていないからな。私はセールスの女性のようなトーンで、まるで聖書を布教するようなトーンで。『や、山本さんのお宅でお間違いないでしょうか。数点聞きたいことがございまして、先ずはご挨拶に参りました。』(ここで私は菓子折りの一つも持ってないことを深く後悔)『そうかいそうかい、今参りますから』優しい声にホッとした。なーんだ。只のおじいちゃんだ。花岡さんとは大違いだ。私は安堵の吐息と共に何も持ってきていない羞恥心からの焦りを感じた。だがすぐに玄関は開き。『どうかしたかね?どちら様かね?』と山本さん。私はすかさず『最近引っ越してきた坂上のものなんですけれど、実は少し相談と質問がございまして、、、』すると隣人は『玄関だとなんだから外の庭でお茶でも淹れようか?』と仰った。私は遠慮なく向かうことにした。
そこはなんとも広い庭で花々が咲き鳥が集まりそうな庭だったが驚くほどに生き物が見えない。百猫市なのに丸で猫もいなかった。ほのかな違和感を覚えながらも綺麗な庭に見惚れて夕暮れを楽しんだ。無論超音波は鳴っていない。山本さんは温かい紅茶を淹れてくれてイギリスのお土産のクッキーをくれた。ここまでは普通に優しい方だ。本題に入ろうと思う。『実は近頃、超音波が酷くてですね、私の家の猫が悶えるほど苦しんでいるのですがその件について何か心当たりは』『なんだね超音波ってのは、仮にあってもわしには聞こえないし無論そんなものも持ってないよ。庭も定期的に清掃してもらっているが清掃員からもそんな話は聞かないからね〜勘違いじゃないのか?』『でも猫も他の人も聞こえていてそれが近ごろだって仰るんです。少しでもいい。何か知りませんか?』『なんでそんなに必死なの?なんかあったの?』『猫がおかしい程嫌がるんです。』『残念だが力になれないと思うんだ。ここにはわし以外の誰も住んでいないのだから。』『そうですか、、まぁ確かに超音波のことも調べましたが年齢的にも無いですよね。大変失礼いたしました。こんなご親切にして頂いているのに。』『いやいいんだよ、こうしてやっとご近所さんにもお会いできたんだ。これからもよろしく頼んだよ。』普通にいい人だ。私は頭を冷やす必要があるかもしれないと思った。家に帰宅後ずっと考えていた。家の広さやどの辺りから鳴っているのか。そもそも違う家なのでは無いか?とまで。謎は深まるばかりだ。
みんなはどう思いますか?
(続)