平成最後のショートケーキ
今回こそは! と予約当日に電話をした。やった、入れた! そしてその日を迎えた。1回目は東京會舘の美味しいショートケーキが習えるのだ。しかも一人一台(ホール)を持ち帰れるという素晴らしいお土産付きだ。
東京會舘にはクッキングスクールがある。昭和30年に始まった教室だ。東京會舘の地下に教室があって私は1年程通った。その教室は、西洋料理や製菓などを同時に教えてくれるものだった。もっと習いたいと思った矢先に、東京會舘は平成27年2月から31年1月にかけて建て替え工事が行われることになりクッキングスクールは閉校の危機に。生徒の熱い要望から、建て替えと同時にスクールの場所が移動し、日比谷駅に直結した場所にスクールが設けられた。移転後は西洋料理1本で行われていた。それが昨年から製菓も復活するというのだ。これは行かない手はない。このスクールは、半年ごとに更新が行われる。更新の手続きは決まった日に予約が始まるシステム。製菓が始まるのを心待ちにしていた人がかなりいたようで、あっという間に満席。残念ながら入ることができなかった。
そして今年。今年も製菓教室があるという。今回の枠は、平日に2回と土曜日に2回で計96名の枠一つの回に24名が上限だ。そして今回は入ることができた。ワクワクして初日を迎える。講師と3人のアシスタント、生徒が24名。講師が手順の説明を行い、実践する。それから生徒が実践を行うスタイルだ。
待ちに待っていた実践。4人一組で行う。調理台の上には、卵と苺、砂糖など。スポンジケーキを作るための調理器具。全卵3個に砂糖を加えて温めながら混ぜる。始めはさらさらした液体、それをもったりするまでしっかりかき混ぜる。泡だて器でかき混ぜるのだが、これが結構な重労働。もったりしてくると抵抗感が増し、泡立て器も重くなってくる。何回か交代しつつ何とか終わったーと思った矢先に所に、どん、と大きなボールが置かれた。直径30㎝はあろうか。そのボールになみなみと今度は生クリームが! え、今度はこれを混ぜるの! 半分くらいは事前に泡立ててくれた後でだいぶもったりしてはいる。ボールには業務用の大きな泡立て器が添えられている。これをあとどれだけ泡立てるのか……。「生クリーム角(ツノ)立つまでね~」やっぱりか! 今のクリームの状態は五分立てくらいだろうか。この重たくなってきた状態から、角だから八分立て以上は必要だ。八分立ては、生クリームを泡立て器で持ち上げた時に、角が生えたみたいに跡が残ることを指す。その状態になるまで泡立て器でかき混ぜないといけない。こんな大量の生クリームをかき混ぜたことが無い。果敢に挑戦するも、既に腕が痛くなってきている状態。すぐに根を上げる。他の3人も代わってくれたが、私以上に根を上げるのが早かった。仕方なくまた私の番が来たのだが、その時一人がボールを抑えてくれた。途端に楽になる。ボールが固定することでこんなにも楽になるものなのか。そして両手が使えることで、両手で泡立て器を持って、ぐるぐる回す。その様は魔女が大鍋をかき回しているかのごとく。渾身の力を込めて回す。二人で作業をすることで効率は上がった。実は、ボール抑えるだけで何か変わるのかなと思っていたが、その差は大きかった。
そして生クリームを混ぜ終わり、焼き上げたスポンジにデコレーションしていく。
このスクールで以前にもショートケーキを習ったことがあったが、アシスタントの方から目から鱗のアドバイスが多数あった。今回は以前と、講師、アシスタントともに違う。その新しい目線でのアドバイスはとても新鮮だった。同じものを習うので同じ話を聞くものだと思っていたがそうではなかった。同じショートケーキ、同じようなクリームの絞り方、同じ様な飾りつけでも、伝え方が変わるとまた違うコツが見えてくる。違う角度から見るとまた新たな発見がある。様々な人から教えてもらうことで、同じものを作り上げるのにより立体的に見ることができる。前回があったから全体像はわかっていた。今回はより内側をどう詰めて内容のあるものにしていくかが勉強になった。
同じものを何度も繰り返すことがいかに重要か、身を持って知った今回の製菓教室。今度は自分一人でもこのショートケーキを作れるようになりたい。
平成最後のお菓子作りとともに令和元年の新たな目標ができた。ホールケーキを作れるようになろう。うん、そうしよう。