エンジェル。
coromo-cha-ya | 東京都 吉祥寺
小さなビル。
細い階段を上がると、
シャツとタルトと紅茶のお店。
すごくタイプなお店なはずなのに、
いつもなぜか緊張して
その階段を上がれずじまい。
いつになったらこの階段を
上りきることができるのだろうか。
ある日の午後2時、
健康診断の予約をしていた。
健康診断には欠かせない、
おなじみのルール。
つい破りたくなるルール。
「 お水以外は胃の中に入れるな。」
そんなこと言われたって、
半端なくお腹すくじゃないか。
ましてや、午後2時からって。
でも、いつもきちんと守る。
診断結果がめどくさいことになったら
いやだから。
再診とか冗談じゃない。
その日も午後2時まで
なんとかお水だけで堪え忍んで、
クリニックへ向かった。
エレベーターを上り、
入口で受付を済ませた。
かかりつけの
じいちゃんばあちゃん達が
廊下の長いシートに
ずらりと腰掛けている。
地元に人気系クリニックのようだ。
それもあってか、
待ち時間が異様に長い。
終わったら何食べよう。
ただひたすらに
そればかりが頭の中を駆け巡る。
朝から何も食べてないので、
玄米ご飯の定食とか体に入れたいな〜
とか思いつつも、
やはり甘党の胃袋は、
美味しいケーキと珈琲を求めていた。
午後4時くらいだったか、
無事に健康診断が終わった。
エレベーターを使って地上へ。
外の空気をめいいっぱいに吸い込む。
健康診断後の
至福のおひとり様お茶会の幕開けだ。
お店はもう決めていた。
いつも階段を上がる勇気が出ない、
あのお店だ。
運命的なものなのか、
クリニックから歩いて3分くらいで
そのお店に着くので、
もうそこに行くしか脳がなかった。
階段の前に着いた。
メニューが書かれた黒板、
いちおう一通り目を通したが
内容は一つも入ってなかっただろう。
健診後のアドレナリンの勢いで、
階段を登りきった。
真っ白な壁、
いろんな大きさの木の机と椅子。
レジ横に置いてある
木枠とガラスのショーケースの中は
タルトやスコーンで満ちている。
そこは
今にも真っ白な天使がふわふわと
舞出てきそうな
純白な空気で包まれていた。
脳みそふわふわ状態のまま席に着き、
ハンドドリップ珈琲と
小夏とマスカルポーネのタルトを注文した。
待っている間、
前の日に購入した文庫本、
「陰翳礼讃」を読むことにした。
この「陰翳礼讃」、
またなんとも脳がうずうずする
文章構成と字体だ。
のろのろとその本を読んでいると、
最初に珈琲がやってきた。
丁寧に、
時間をかけて淹れられたの、わかる。
そして少ししてから、
タルト登場。
まさに真っ白い天使だ。
オレンジ色の帽子と
緑色の髪飾りをつけた、
オメカシエンジェル。
しかもこのお皿、
ちょこんと金継ぎしてある。
この金継ぎちょこんなお皿と
ぽってり真っ白なエンジェルタルトの
なんともいえないバランス感。
こんなの、
きゅんきゅんが止まらない。
お腹ぺこぺこなので
本当だったら秒でたいらげられるのだが、
本能に従って、
一口ずつ丁寧にフォークを進めていった。
至福の時間は、
あっという間に過ぎ去ってしまった。
次の健診診断、
その後は何を食べに行こうか。
「 エンジェル。」
coromo-cha-ya
東京都武蔵野市吉祥寺南町1-8-11 弥生ビル2F
11:00-19:00(L.O.18:00)
休)火曜日