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『ハッピーバレンタイン』
ギターをかき鳴らす母の陽気さに心が微笑みながら頭は腕を組んでうなっていた。
バレンタインの大晦日。
やっぱりどうしても作りたくなってしまう。普通はつまらないから、捻ったものを作りたい。気分は芸術家。料理やお菓子作りって頭使うなあ。手も使う。久しぶりに細かい作業をしたからか、手がふかふかになった。使うって大事だ。心も頭も手も使う、そんなバレンタインが好き。バレンタインを噛みしめてしたらいつの間にかギターの音がやんでいた。
夜中に甘いのものを作ったから、今日は素っぱい一日にした。
素がいっぱいな素っぱいデー。
起きて甘いカケラを食べて素っぴんのまま自転車を漕ぐ。バックにタオルとゴーグルを詰めて。何年ぶりだろう。6年くらいかな。久しぶりに東西線色をしたプールにダイブした。気分はマーメイド。なんて言えないくらい、はあはあした。こんなに息切れしたっけかな。一時間丸々なんて泳ぎ続けられなくて15分泳いで15分歩行してを繰り返した。それでも水の中ってやっぱり楽しい。全身が喜んでいた。
気分良くプールから上がり、鏡を見ると、ゴーグルパンダになっていた。
外に出て、駐輪場で隣に停めていたおばちゃんに「お疲れ様!外は寒いね!」と言われた。全然寒くなかったけれど、運動終わりの「お疲れ様」という言葉はいいものだなと思った。
素っぴんついでにそのまま銭湯へ向かい、清澄白河にある野菜屋さんにも寄った。色んな地域の野菜や果物に会えるお店。長野に行くといつも赤カブのおいしさに感動するのだけれど、あのいつも感動するお漬け物が置いてあって迷わず手に取った。ちょっとすっぱい赤カブちゃん。自分でも作ってみたくって赤カブを探すけれど、東京で赤カブにはなかなかお目にかかれない。
せっかくここまで来たからあそこも寄ろうかなと思い立ち、深川不動尊までてくてく。梅があちらこちらに咲いていた。元気なピンク色した梅はもう赤カブにしか見えなかった。眺めているとうぐいすが飛んできた。うらやましいくらい良い色してたなあ。そうそう、ここでは水琴窟の音に耳を澄ますのも忘れずに。
それから大安だったからね、ひな人形を出しました。心なしかみんなビックリした雰囲気出してたなあ。「今年は早いね」って。
バレンタインは二番目に好きな行事でひなまつりは三番目に好きな行事。ひな人形は大好きだったおばあちゃんからの贈り物。だからおばあちゃんにありがとうって毎年伝えたくて大人になっても出すんだ。一般的な意味合いとは違うかもしれないけれど、バレンタインもひなまつりも大切な人に感謝を贈れるありがたい行事。素をたくさん褒めてくれるあったかい心へ、届くといいな。
ありがとう。