名無し4
「〜〜じゃね?」「〜〜笑笑笑」
入学式から早3ヶ月が経った。
うちにも友達ができて、クラスにも馴染めてきた。
そして、隣だったあの人とは席が離れた。あの人は予想とはかけ離れた凄く明るい性格だった。席も離れたことでなんだか遠い存在になってしまったように感じて、切なくなった。そんなことを考えてる頃にはもうあの人に心惹かれていたんだと思う。
一方中学に上がってからの友達である夕凛は、うちの仲のいい友達・蒼弥と上手くいっていた。羨ましかった。元々通路を挟んで隣の席だった2人は、席替えをしても斜め同士で、いつも話していた。2人は不釣り合いだったけど、お互い好意が全面的に出ていて周りは薄々勘づいていたように思う。
夏休みを迎えた。
と同時に、案の定夕凛と蒼弥は付き合った。2人の仲介人をしていたうちには、1番最初に報告が来た。おめでとうという気持ちももちろんあった。けど。素直に喜べない自分もいた。多分そこには、妬みや自分の恋愛が上手くいかないという悔しさも込められていたんだと思う。
夏休みが入ってすぐ、うち、夕凛、蒼弥、あの人、そして夕凛の幼なじみで全員の共通の友人玲(りょう)の5人で遊びに行くことになった。 うちは心底嬉しかった。蒼弥伝いにあの人の好きな服装を聞いてもらったり、夕凛にメイクをしてもらったり、うちは浮ついた心持ちで当日を迎えた。
そうして迎えた当日午前9時42分。うちと夕凛は遅刻していた。集合は40分。電車は10時発。駅まであと5分ちょい。印象が崩れる!!!
「お、来た」
「わっ」
歩道橋を渡り終えたと同時にあの人と玲と遭遇した。迎えに来てくれたらしい。
「おせーよー。俺ら15分前ぐらいからいたんだぞ。なあ琉生(るい)」
「俺はもっと前からいたけどな笑笑」
「ごめんじゃん笑笑」
3人の会話を聞き流しながら、うちは1人あの人_琉生くんの私服を堪能していた。いつも見た目にそぐわない学ラン姿かジャージだから、私服は本当に貴重だった。琉生くんの私服は、黒のTシャツにスポーツメーカーの半ズボン、ウエストポーチに走りやすいと評判の運動靴。テニス部で焼けた肌が太陽に照りつけられ、より琉生くんの存在が眩しかった。Tシャツの蟻の絵文字と×10の文字がすごく気になったけど。
「琉生の私服思ってた通りじゃね?」
夕凛が耳打ちしてきた。
「まあ、確かに」
「何緊張してんだよー笑あ、蒼弥駅ついたってー!」
「おーまじ?お前らが遅いから待たせてんじゃねーかー」
「ごめんてー笑笑女子は準備に時間かかんの!笑」
いいなぁ、夕凛は。男女共に仲良くできて。うちも琉生くんと話した…
「美空ちゃん」
「るるる琉生くん?!」
「そんな驚かなくても笑私服、意外だね」
「変かな…?」
「そういう意味じゃなくて。いいと思うよ」
「ほんと!ありがとう」
「蒼弥ー!!!」
玲が駅に見える蒼弥を大声で呼んだところでうちと琉生くんの会話は途切れた。うち、ぎこちなくなかったかな。ちゃんと笑えてたかな。『いいと思う』 だって。嬉しいな。貯めてたお年玉崩した甲斐があったな。けど…『可愛い』っては、言ってくれないんだなあ。
美空 1章終
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