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素敵な嘘

確かまだ幼稚園の年長くらいだったと思う

ちょっとしたおつかいを母から頼まれるように

ある日
母と一緒に何回も行ったことがある
近所の豆腐屋におつかいを頼まれました
木綿豆腐を一丁
「いい、“もめん”よ“木綿豆腐一丁”ね!」

頭の中で復唱しながら
(もめん、もめん、もめん…)
左手にはボウル
右手に五百円札を小さく折り畳んで握りしめて

子供の脚で歩いても5分かからないくらいでしょうか
でも、かけっこして行きました

息を切らしながら
「もめんどうふいっちょうください!」
と言ってボウルを差し出します

そして、顔面蒼白…😨
右手になにも無いことに気がつきました
かけっこの途中でお札を放ってしまったようです

慌てて来た道をキョロキョロ戻ります

ウチの母は学生時代バレー部でした
東洋の魔女に憧れたゴリゴリの体育会系
当時は体罰全盛期で女子といえども例外ではなく
ビシバシやられたようで
そのせいか
子育てでも先に手が出るタイプでした
仏壇の落雁を盗み食いした時
便器の上で両足を持って逆さ吊りにされ
「罰当たりめ!吐きなさい!」
トラウマです

五百円札は見つからないまま
ついに家まで来てしまいました
これで帰ったら間違いなくビンタか…🥺
もう泣きながらキョロキョロ再び豆腐屋へ

すると
知らないおばさんに声を掛けられました

「あなた、さっきからキョロキョロどうしたの?」

(お金、落としたの)

「いくらよ?」

(五百円札)

「さっき、そこに落ちてたの拾ったけど、もしかして、これがそうかしら?」

(!!!!!!!!!!)🙌🙌🙌 ٩(ˊᗜˋ*)وワーイ

キチンとお礼を言ったのか?
まったく記憶にありません

兎にも角にもこれでビンタの心配がなくなり
ホッとしました

やっとこさ
木綿豆腐一丁を無事手にすることができました

母は
「遅かったね」のひとことだけ



😳ハッとしたのは
夜、寝床についてから

あのおばさんは《嘘つき》でした!

財布から取り出して渡された五百円札は
【ピン札】だったのです。



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