AMYGDALA MV 整理
今回のnoteは『AMYGDALA MVを整理してみた』です!
こちらの素晴らしいブログの内容をもとに整理していきました。
補足的にWeverse 『SUGA 'D-DAY'Live』2023.4.25で語っていたユンギ本人のコメントや、わたしの考えも混ざっています。
ぜひお時間がある方は元記事も読んでみてください。
記事を書く前にひとつだけ。
MVはこのような警告が入ります。
このnoteに使用した画像には当該箇所は避けていますが、苦手な方はここから先は読まないことをおすすめします。
まず、おもな登場人物を紹介します。
このブログの特徴としてアミグダラに出てくる登場人物をこまかく分けている点がとても面白いなと思いました。
このnoteで整理するにあたり自分なりにわかりやすくするため名前を変えました。
もちろん、すべてミン・ユンギであることが前提です。
🧠おもな登場人物紹介🧠
Amygdala:扁桃体とは
脳の左右にある神経細胞の集まりで、アーモンドのような形をしていることから「扁桃(アーモンドの和名)」と名付けられた。
目の奥あたりに位置する。
過去に経験した否定的な感情を伴う経験に対する記憶形成に深く関与し、特に恐怖、不安と関連した記憶の形成に重要な役割をする機関。 不安/恐怖に関連する反応を示す神経回路上に存在。精神的なストレスに心と体が対応するために必要。
MV概要(本人談)
ではこれらをふまえ、さっそく整理していきたいと思います!
意識を失ったように眠っているグレーD。
I don't know your name
唇がかすかに動いて口の形から
「お母さん、お父さん」だと推測される。
これから取り出していく記憶とつながる。
ここは"あの部屋"だ。
アミグダラ(扁桃体)の中、
あるいは記憶の中と考察されている部屋。
コンサートでは「舞台」と解釈される場所。
ドアは閉まっている。
「最近 気分はどう?」
この言葉に呼応するように配達Dが振り返る。
まるでいまその場所で聞かれたように。
ただ視線はこちらと合わない。
精神相談で一番最初に受ける質問が
「最近気分はどう?」だという。
本人も何度もきいた言葉なのかもしれない。
I don't know your name
配達Dはまだトラウマをはっきり認識できず
そこにいる"子たち"に気づいていないみたい。
「最近気分はどう?」という言葉と共に治療が始まり、そのために消し去りたい記憶を一つ一つ取り出していったのだろう。
なるほど、ここから過去と現在が行き来し始めるのか。
そう考えると、その装置としてドアの存在という見方もできる。
部屋の中のグレーDは眠ったままだ。
記憶を取り出そうとするが
深く埋もれているようだ。
だからあの配達Dはなにも"気にすることなく"
バイクに乗り走り出す。
「最近 気分はどう? 」
配達D「(いまは記憶から消し去っているから=グレーDが眠ったままだから)大丈夫」
そんなふうに答えそう。
しかし事故が起きて
グレーDが驚いて目を覚ます。
トラウマの自覚だ。
目覚めたグレーDは立ち上がり
ドアのほうへ向かう。
部屋から抜け出そうとするのだ。
振り向くとそこにはもうひとりのDが眠っている。無意識の中に埋められていたトラウマが
ひとつではなかったことを意味するのだろう。
そう、あの事故はトリガーだった。
そして部屋から抜け出す機会を逃す。
アーモンドを噛んで飲み込むDが登場。
淡々と正面を向いたままアーモンドを食べ続ける様子は"感情麻痺"のようにもみえる。
メイキングでは、もともとはアーモンドを食べるシーンをやる予定ではなかったと話してました。薬を飲んでいるシーンとの対比なのだという。
小説"アーモンド"では、息子の脳が正常に戻るよう願いをこめて母親がアーモンドを食べさせていた。
効果などないのはわかっていながらもただ信じて、そこまですがりつきたいほど回復を望んでいた…。
ドキュメンタリーでも言及されたが
「会社から追い出されるかと思って
事故について話せなかった」
なぜそうしたのか。
それが"最善の選択"だと信じてたからだろう。
トラウマを無意識の中に埋めておくこと、
記憶から消し去ってしまえば
苦痛はなくなるのか?
事故が繰り返し起こり
そのたびに驚いて目覚めるグレーD。
単に事故の記憶だけが苦痛ではないようだ。
これまで埋めておいた過去のトラウマたちも
この事故をきっかけに次々現れたから。
そして"あの"シーン。
「Agust D」誕生のシーンとも言えるだろう。
トラウマを抱え
極限まで追い込まれたらどうなるか。
自己を破壊すること
または他者を破壊すること。
そうすることが唯一の脱出方法、
自分の生存方法だと誤解しまう。
やはり最善の選択だと信じていただろうから。
Agust Dに
目の傷ができた。
(右手はカッターを持って自分を脅かしているが、その下の左手は右手を塞いでいるように見える。実際にあの手の形を真似してみると、右手を支えてくれるのではなく、押し出すのが自然な姿勢になる。つまり自傷行為をしながら生存することを選んでいた)
自分に新しい傷をつくり他者へ怒りを放出(Agust Dの怒りに代表される楽曲)して苦痛を克服しようとしたが、それも根本的な解決策ではなく、以前と同じように苦痛を忘れようとすること(トラウマを眠らせること)に過ぎない。
当時のユンギは過去の苦しみを乗り越えるために怒りの放出を選んだ。
そうして誕生したのがAgust Dじゃないか。
そしてこの試みは一見成功したかのように見える。
ドアが開いたのだ。
グレーDはこの部屋から抜け出すためにまた近づいていく。
以前のように振り返ることはせず
ドアのほうへまっすぐ歩いていく。
2016年、怒りと攻撃性でいっぱいのミックステープを出して気持ちが楽になった(そんな考えだった)ミン・ユンギ aka Agust D
この時、配達Dがこちらを見つめる。
でも、さっきの配達Dと、このDはどうも違う子のようだ。
先に出た配達Dが事故に遭ったあの頃のユンギなら、この子は事故後のメタ的なユンギ、
事故のことを認識して思い出している未来のユンギが宿っているのではないか。
だから視線が合う。
この子は認識Dとよぶ。
トラウマであるグレーDを気にしていなかった配達Dとは違って、認識Dの目はこちらを見つめる=トラウマの部屋のグレーDの存在を認識している。
でも表情は読みづらい。
「最近気分はどう?」と聞かれたら
この子は何と答えるんだろう。
「よく分からない」と答えるかな。
自己の内面とどう向き合えばいいのかは
まだ答えを出せなかったように見える。
現実が忙しなくなりそれを扱う余裕がない。
ただ傍観しているだけ。
Agust Dを生み出したことでどうにか解決した(と思い込んでる)から、もうこの部屋にいるグレーDのことは忘れてもいいんだ。
ドアが閉まる。
グレーDが辿り着く直前に
ドアが閉まってしまう。
苦痛を癒すための(=トラウマを克服するための)方法で破壊と怒りを選んだし、それが最善の選択だと思って(実はダメだと分かっていながら)ドアを閉めてしまった認識D。
こうやって部屋の中のグレーDはまた抜け出すことがかなわず閉じ込められる。
光の点滅が激しく、ドアの向こう側から光が透けているのでいまにも開きそうなのに
開けられない。
そして現れたのは熱唱する革ジャンD。
このDはMV内でもとても異質な存在だ。
これまでの子たちとは雰囲気がまるで違う。
このシーンのDこそ公演をするステージの上のAgust Dの姿ではないか。
D-DAYツアーの舞台がこのAmygdalaのトラウマの部屋で、ソファ、電灯、積まれた本など実際に使われたアイテムも似ている。
エスクワイアのインタビューで語った「行ったり来たりする内面状態」かもしれない。
グレーDは懸命にドアを開けようとする。
でもだめみたい。
認識Dが閉めちゃったから。
再びソファの上に落ちて意識を失う=これまでもそうしてきたように苦痛を飲み込んで、また無意識の世界で眠りにつく。
これも当時のユンギとしては最善の選択だったんだろう。
2:30〜2:55は画面が激しく切り替わっていく。ユンギの記憶のような映像が次々と通り過ぎていく。
トラウマ/苦しい記憶がフラッシュバックで降り注いできたようにも見える。
これまでのインタビューや歌詞を通じてファンが知っていたことは一部で、実際にどれほど多事多難な記憶と痛みを持っていたのか、はかりしれない。
ちなみにこの区間は先に公開されたグリッチフィルムと比較しやすい場面が多いらしい。
そこまで考えるのはさすがにむりです。どなたかやってみませんか?(他力本願)
おそらく事故が起きた時よりも若いユンギが出てくるので古い記憶なのがわかる。
錠剤を飲むシーンは視線も表情も状況も描写されない。苦痛を消すのに必死だ。
錠剤の数も倍以上に増える。
過去の多事多難と比例するかのよう。
MV公式和訳では「耳元には母の心臓が刻む音」となっているけど原文は"귓가엔 엄마 심장 시계 소리"
これをそのまま訳すと
「耳元には 母の心臓 時計の音」になる。
ビヨンド・ザ・ストーリーの中で、引越しの歌詞は『僕が生まれたことを引越しに例えた』と語っている。
"かすかな記憶 俺の引っ越しの代償は
母さんの心臓の機械と大きな傷痕だった"
ずっと長い間苦しんでいた記憶も
「傷跡は全部自分の心構え次第で 全ての傷跡は自分自身が作る」という言葉にもあるように
"最善の選択"だと受け入れられたってことなんだ……(滝涙)
たった25秒だけど情報量がものすごい。
絶え間のない試練と、
消し去ることができなかった過去。
ユンギの眼球が左右に揺れるのはトラウマを克服するための行動(EMDR)だという。
EMDRは人為的に眼球運動をさせて苦しい記憶を鈍感化させる治療方法。
また、脳細胞や何かが飛び出る映像なども脳波の安定のためのトレーニングを示唆しているようだ。ニューロンフィードバックという目に見えない脳の神経活動を脳波で測定に見せることで、どんな信号に脳波が安定するのか自分で認識できるようにする脳トレーニング法があるという。
多くの苦痛にもかかわらず、それを克服するために絶えず努力してきた。
その選択が最善だと信じて。
蓮の花は泥沼の中でも華やかに花咲かすから、D-DAYにも出てきた歌詞。なにかが変わってきたのか。
そして再びあの部屋に戻った。
グレーDがドアに近づいていく。
もう眠ってはいないし、怒りの状態でもない。
しかし、これまで無意識の中にあった全ての苦痛を引き出したせいなのか、立ち上がることができない。
傷に直面して乗り越える過程は苦しみそのものだ。部屋は傾き、機能しない身体で這いつくばりながら手を伸ばす。
雨が降ってきた。
ここで雨について、以前も引用したこちらを紹介しておきます。
https://x.com/lyna91fr/status/1350542564475154439?s=46&t=I2tioPMrnXFEJ96m_4FkCA
ユング心理学では「火+水=再生」を意味する。
これまでAgust DやシュガのソロMVに出てきた火。ユンギと火は切っても切れない。
しかしこのアミグダラMVには火が一切出てこない。
確実に変わり始めている前兆なのかもしれない。
部屋の中にも雨が降り注ぐ。
認識D登場。
この認識Dは先に出た認識Dとは違う人物。
なぜならさっきはただこちらを見つめていただけだから。
この子は内面の苦痛までも感じて直視できるようになった、成熟した認識Dだ。
彼も一緒に雨に降られている。
先に登場した認識Dのところには雨が降らなかったはず。
3:32部分、グレーDが「助けて」とつぶやく。
その声をすぐにキャッチした認識D。
これまでのDとはあきらかに違う反応を見せる。
自己の苦痛を直視して、自分自身を救うためにバイクを捨て走っていく。
トラウマから抜け出そうとする自分と、
そのために努力した自分がついに一致する。
もうこれ以上無意識の中に埋めておいたり、
怒りとして外へ出したりもしない。
ユンギのこれまでの発言から、その過程には自分に対する許しと寛容が含まれていただろう。
でも、
結局、ドアを開けることができない。
グレーDは降り注ぐ雨に打たれながら
部屋の中に閉じ込められたまま。
MVはここまでだ。
このまま終わってしまう。
そしてこのシーンはD-DAYコンサートの冒頭のシーンに繋がるのだろう。
雨が降って倒れている姿。
片足を折りたたんだディテールまで同じ。
D-DAYコンサートはアミクダラMVの過程を
もう一度再演しているかのようだった。
過去のユンギが実際にどのような方法でトラウマを克服しようとしたのかは分からない。
ただ、全ての痛みから解放される""D-DAY""はこれまでの方法では来なかった。
ではなにが必要だったのか。
それは...愛だ。
どう考えても愛だ。
物理的に強制的な別れの期間が来る前に
ユンギがコンサートツアーをすることで
たくさんの愛を経験し
ついにドアを開けて挨拶できた。
https://x.com/_oxygeno2/status/1688162356529102849?s=46&t=I2tioPMrnXFEJ96m_4FkCA
おわりに
以上がアミグダラMVの整理でした。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
MVの結末がD-DAYコンの最後にやってきたのは、何度思い出しても言葉にならない。
トラウマや苦痛がアミの声援と愛で取り除かれていく過程をわたしたちは目撃したってことだね。
"D-DAY"を歌うとき、さらにアミに近づいていったのが印象的だった。
その愛を全身に受けながら、かつてトラウマ保管庫だったその場所で、良い記憶だけをどんどん集めていって。
そしてドアの開け、外へ出ることができた。
アミグダラのとなりにある場所は海馬だという。
彼はきっと、愛で満たされた記憶の場所で生きている。