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【覚書】 SUGA Agust D TOUR D-DAYを考察する
わたしのSUGA Agust Dツアーが終わった。
VCRを含めセトリや構成について自分なりに考えたことや感じたことがたくさんあったので、覚書を残したいと思う。
※まだツアーは続いてます!これからライブを観る方はこの先読まないことを全力でおすすめします!!
雨と炎が重要なキーになってるのは言わずもがなだけど、これについてはもうひとつ別にBU視点のツアー考察を書く予定(ほんとに?)なのでそのときに。書きましたのでよろしければドゾ。
さっそくVCRについての覚書から。
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オープニングでは雨の中倒れているひとりの人物が映し出される。生まれてからいままでの記憶がフラッシュバックし、瞳の中に火種が宿る。この人物はだれなのか、Agust DなのかSUGAなのか、もしくは………。
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本名であるYunKi(ユンギ)は「Exist in Memory」で登場する。ユンギはDの仲間によって襲われ連れ去られる。首謀者Dには微かだが傷が残っていた。
ステージにいるのはSUGAもしくはAgust Dであってミン・ユンギではない。彼はもう記憶の中でしか存在していないのか、Dのいうとおりすでに"死んだ(俺が殺した)"のか。
「Lost in Memory」はSUGAが登場する。
BUストーリーの中で、彼はライターを弄るくせがあった。そして火を放ち死のうとする。
物語のなかで彼は二度、命を救われている。
一度目は炎の中からジョングクに助けだされたとき。
そして二度目がこのVCRにも登場する彼女にライターを取り上げられたときだ。
物語のなかでユンギ(※BUストーリーのSUGAの役名)は荒廃した生活を送っていたが、彼女はそんな彼をピアノ(音楽)に導くことに成功している。物理的に命を救っただけでなく、ユンギを再び音楽に結びつけた。そのきっかけとなるのがこのY.K.ライターだ。
びっしりと壁一面に貼られた過去の写真。繰り返し再生されるビデオ。焦げたY.K.ライターは失われた記憶を呼び覚ますのか。
Agust Dは「The Chaser」、やはり銃を手にしている。
Dの別名は[怒り]で、金、名声、権力に貪欲でありトラウマとも密接に関わっている。
DはユンギとSUGAを執拗に追いかけ撃とうとしているようだ。
自らの手についた汚れを見て、追いかけていた人物が自分自身と同一だと気づたのか、その場で意識を失う。
最後のVCRではDのいる部屋に火を放った。それを見つめる自分、さらにそれを見つめる自分、というような構造が印象的。(結局それを見てたのはスタジオにいた人物であって、急に夢オチみたいな怖さもあった)
彼の自我は完全に分離していたわけではなかった。火を放つ自我と燃やされる自我のあいだに立つのはだれなのだろう。
セットリストもステージ演出もまさに芸術だった。
落雷の轟音の合図で倒れたままステージに現れ、ある楽器の音で覚醒する。抑圧的な事象に対する解放と報復の歌であるHaegeum。まさにショーの"解禁"だ。
冒頭のセクションは、ステージ全体が客席より高い位置にあった。
王の帰還の祝祭に誰もがひれ伏す。他者から受けた痛みや憎しみが増殖していく。しかし彼はいまスナイパースコープの中にいる。またしてもDが狙っていることを示唆する。さらに巨大なDが現れ操り人形のようにステージを弄びますます不安定だ。
SDLやpeopleのような内省的な歌では他者との関わりや愛について自身の人生を振り返った。楽曲の変化を通して確実に変貌をとげていく様を見せる。
しかしBurn Itで燃え盛る炎の中に突き進みステージから消えてしまう。
雨に打たれた状態から[怒り]が覚醒し、火の中へ消えたあと、次のセクションで現れるのはBTSのSUGAだ。自己を分析する歌Shadowから始まるのはあまりにも象徴的。
CypherやDdaengなど、世界で最も成功したグループのメンバーとしての感情が渦巻く。
中盤はステージが剥がれ、十字架のような形になる。
印象的なのは、モニターやソファ、ピアノなどはステージの下部のフラットな部分にあったことだ。
ステージのどの位置に立っているかで、彼のキャラクターは変化する。ステージは自我の切り替え装置だったのが凄い。
さらに深く個人的なメッセージが乗った歌Snooze。敬愛する故坂本龍一とのコラボレーションは、曲そのものの美しさもさることながら、曲の合間にスクリーンに映し出された森や海をじっと見つめる後ろ姿が焼きついている。
振り返り歌い始めると彼自身にもその風景が投影された。
彼は安らかな風であり、眠りにつく森であり、さざなみを繰り返す海だった。彼は音楽そのものだった。
終盤に近づいていくと、ステージは中央部分だけが残り、その両側の2つのステージ部分が持ち上げられている。
中央だけ残ったステージのまわりを炎が取り囲み、AMYGDALAで再びトラウマを探求すると、力尽きたようにその場に倒れ込む。
(LA公演はステージのまわりも実際に炎が出て曲調に合わせ強くなったり弱くなったりした)
最後は、ステージ全体が引き上げられ、下部に置かれたすべての小道具が顕になった。ステージがなくなり客席とフラットになったところに颯爽と現れD-DAYが始まる。ついに"その時"がきたのだ。
そう、現れたのはユンギだった。
花様年華のテーマNEVER MINDのあと、自己を蝕んだ病理までも言及する最も脆弱で感情的な歌The Last。
これまで何度かスクリーンには過去の姿(VCRでDが収集していた写真)や、ヒビが入り屈折した残像が映し出されていたが、The Lastでは取り囲む9台のカメラがユンギただひとりの姿を映し出す。
歌が終わると彼は自身の足で振り向くこともなく前を見据え歩き出した。
それは過去を焼き尽くすことではなく受容したことを表明した瞬間でもあった。
この叙情的なストーリーテーリングは、トラウマである傷痕を軸に、それでも未来へ前進しようとする彼の意志が深く表現されていた。
ライブを通して彼の感情や生き方に共鳴できたことは本当に貴重な追体験だった。