新時代の扉 フジキセキと柳の木について

映画面白かったね(IQ2)

映画ウマ娘「新時代の扉」めちゃくちゃ面白かったですね。
もともと期待はしていましたよ。それでもそれを上回る「ウマ娘映画」をご用意いただけるとは…
CygamesPicturesは石神井にあるんですね。ベッドの向き注意してそちらに足を向けないようにしします。

アニメ映画としてメチャクチャ完成度が高いです。マジで。
ストーリーやキャラクターの素晴らしさは言わずもがな、演出面の巧さも目を見張るものがあります。
特にコンテ、画面構成の良さがとにかくすごくすごいです。すごい!

本当に「上手い!」と思ったところがいくつかあったので、自分なりの読み解き方を書き残しておきます。
あと何回か見てまた違う答えが出た自分や、違う人の意見を聞いてみたいなという人に向けて。
※できるだけ映像の用語は使わないようにします
※偏見と思い込みを含みます。

一応このnoteは一回は見た人のが読むことを想定しているので、まだ見てないって人がいたらできれば一度見てから読んでね(ネタバレが重要な映画ではないけど一度はフレッシュな感覚で見て欲しい)

そして「これが正解だ!」と言ってるわけでなく、自分はこう受け取ったよ!というだけの文章なので、みんなも自分の感想を大事にしてね!


キャラクターを表現するもの

この映画でかなり意図的に多用されている演出がキャラクターと画面の間、もしくはキャラクターとキャラクターの間にメタファーとなる物を配置するというもの。
特に珍しい演出ではなく、様々な作品で多用されているのを見かけますが今作ではとにかく分かりやすく、そして効果覿面といった感じでしたね。

フジキセキと柳の木 それが意味するもの

これは印象的だったのでいいなって思ってた人も多かったはず。
フジキセキがジャングルポケットと話をする時、画面上にはとにかく柳の木がついて回ります。
トレーニングの帰り道、もとは自分のトレーナーだったナベさんをダービートレーナーにしてほしいと頼む時、柳の木は不自然なほどにフジキセキに影を落としています。

みなさんは川沿いの柳の木といえば何を思い浮かべるでしょうか?
そう、幽霊ですね。

ちょっと待って、ブラウザバックしないで。フジキセキが幽霊と言いたいわけではないです。

幽霊とは死者であるが成仏せずにこの世にあらわれるもの。つまり柳の木とは「現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)のはざま」と言えるのです。
今作で言うところの現世とは作品内の世界。つまりウマ娘が活きているアニメ内の世界です。
では幽世とは何か。そうですね、ウマ娘のモチーフになった競走馬の生きる世界。我々のいる現実世界です。(ややこしい

馬とウマ娘

アニメのウマ娘はアプリ版よりも原作(実在の競走馬)の歩んできた馬生を濃く受け継いでいます。レースの結果も基本的には同じようになります。
実馬のフジキセキがそうであったように、今作中のフジキセキも朝日杯を無敗で勝利した後、クラシック初戦の皐月賞を前に故障を発生して現役を退いています。

柳の下で会話をするとき、フジキセキは引退したという実馬の運命に強く影響を受けている状態です。だからジャングルポケットに自分の願いを託します。もう自分ではかなえることは不可能だと思っているから。

これを明確に口にするのが合宿での祭りのシーン。
あ、あなたここ柳の木なかったじゃんって思いましたね。え?気づいてた?そうです。ここでフジキセキが着ていた浴衣の柄が柳なのです。
「もう私の時代ではないから」と、すでに自分は終わってしまったウマ娘であると語るフジキセキに「笑えないっすよ」と返すジャングルポケット。ほんとだよ。
ここはスランプに陥っているジャングルポケットへお礼と励ましの言葉を送るハズのシーンなのだけど、やはり全く届いていない様子がこれでもかというくらいに描かれています。

それはまだこのシーンのフジキセキが半分幽世に足を突っ込んでいるから。だから励ましも感謝も、ジャングルポケットには届かない。

そしてウマ娘へ

話は前後してしまうがダービーの前、目標を失い自分を追い詰めるようなトレーニング詰むジャングルポケットとそれを心配するナベさんが語る川沿いのシーン。ここでも柳の木が出てきていました。
陰で二人の会話を聞いているフジキセキと画面の間に柳の葉が揺れていたと思います。
ここでナベさんは「お前はタキオンの走りから何を感じた?」「ウマ娘を理解できるのはウマ娘だけ」と言う話をしていて、フジキセキもそれを聞いている姿が描かれていますが、おそらくこれが祭りのシーンでの励ましにつながるのではないでしょうか。

その後ジャングルポケットは菊花賞にも負け、自信を喪失していきます。

さて、夜の自販機のシーン、もちろんここにも柳の木が登場しますが、ここでは柳の木の葉はフジキセキだけでなくジャングルポケットにも垂れ下がっているカットがあります。
いくつか言葉を交わしたのち、ダービーを勝とうが最強じゃなかったと嘆くジャングルポケット。
これは当時の実馬に対しても投げかけられた「アグネスタキオンが引退してなかったら結果は分からなかった」という言葉を描写したシーンだと思いますが、史実を知らない人も柳の木が画面上にある時は何かに縛られてるんだろうなと分かるかなとは思います。

「でも君はまだ走っている」と励ますフジキセキ。
そして「これは明日の朝まで預かっておく」とジャングルポケットのサンキャッチャーを持って行きます。

明けて川沿いのコースのシーンですが、ここでは柳の木に加えてさらに2つの「境界」が出てきます。
「夜明け」と「橋(もしくは川)」です。

ここが、今こそがフジキセキが境界を超えるシーンだという、これでもかというサインです。
やるんだな!?今ここで!

最初に話した通り境界とは「現世(アニメの世界)」と「幽世(現実の競走馬がいる世界)」です。

そして勝負服を着たフジキセキが現れた時こそが、ウマ娘のキャラクターでありながら実馬の成績のトレースをしてきたフジキセキが、再びこの世界でのウマ娘のフジキセキになった瞬間ではないでしょうか?

柳の木のカーテンを潜り抜け、ぼくたちのフジキセキがウマ娘として帰ってきたこのシーンは、積み重ねて積み重ねた演出により最大の感動を持って迎えられるように作られているのです。

※あとこの河原でのレースのシーンはコンテの、特に上手(かみて)下手(しもて)の使い方とスイッチの仕方がうますぎてこれも語りたいのでまた今度描きます。

そしてこのレース以降のフジキセキのカットには、同じロケーションである直後のカットでも、一切柳の木が写らない。

おかえり。

ウマ娘とタラレバ

レースにタラレバは禁物、フジさんも言っていたように実際の競馬でも「あの馬が怪我しなかったら」「あそこで不利が無ければ」は言ってもしょうがない。基本的にタラレバは禁物です(話すのは楽しいけどねw)

しかしウマ娘というコンテンツは今作でフューチャーされたフジキセキ、アグネスタキオンのように、一瞬の輝きを見せ引退した競走馬をモチーフにしたキャラクターが多数登場し、本来引退したレースの後もプレイヤーが育てていけるようになっています。

自分はこの本来なかった歴史をifとして触れられるのはこのコンテンツの肝の一つでもあると思っています。
ともすれば、実馬やその関係者に失礼ではないか?というチャレンジングな扱い方をしているキャラクターもいると思うのですが、どのキャラクターのシナリオも良く練られており、丁寧にifの未来を描かれている。だから僕らファンも、諸手を挙げて「引退しなかったフジキセキ」を応援できるわけです。

今作のラストではフジキセキに加えてアグネスタキオンも現役復帰している描写が描かれてて締めくくられます。

そして

映画の冒頭やテレビアニメでも使われているナレーション
「この世界に生きるウマ娘の未来のレース結果は、まだ誰にもわからない。」

につながるわけです。

完璧

ウマ娘映画として完璧…

 
もう駄目だ、映画見たくなってきた。
仕事終わったら映画館行ってきます。


描かれたモチーフ

今回はフジキセキと柳の木について書いてみましたが、他のキャラクターとモチーフの扱い方、魅せ方がうまいな~というところがたくさんあります。

ジャングルポケットの夢を象徴するサンキャッチャー、アグネスタキオンに部屋にあったあるものが画面に映る時何が行われているのか、地下バ道の柱、いろんな意味が込められていてどれも映画を効果的に盛り上げていました。6回見てなんかまだ見落としているものがある気がするな~思うくらいには。


これは複数回見る映画だ!

2回目以降を見に行く時に気を付けてみてみると、キャラクターやシーンに対する理解度が高まってもっと、もっと映画が面白くなってると思います。
ジャングルポケットがダービーとジャパンカップに勝つなんてググったら一瞬で出てきちゃう歴史の事実です。それでもレースや映画の結末が分かっていても面白いように作られているのが今作。

何回だって何度だって、映画館に通いたくなる作品でした


一つの画面に詰め込まれた意味

途中でちらっと話しましたがこの映画、コンテがうますぎる。
画面構成、キャラクターの位置関係、レース中の画面の動き、とにかくこだわって作ってある。話足りない。

次は特に好きなタキオンの準備室のシーンを使ってこの話したいと思います。

つづく


2024/06/13 ちょっと誤字修正
日本語が下手すぎる


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