バワの建築を求めて①
今でも、よく覚えている海外旅行はスリランカである。
当時私は22歳くらいで、ツアー参加者の中では一番年下だった。
成田空港から飛行機で約7時間。
発展途上国の中でも、高い生活水準を維持しているスリランカに到着した。
アジアならではの簡素な造りをしている家々が立ち並ぶ中に、私が宿泊する宿はあった。
今回のスリランカ旅行の一番の目的は建築家、ジェフリー・バワの建築したホテルに泊まることだった。
そもそも最初は、何の計画もなく、もちろんスリランカという国すらも知らず、次の旅先がスリランカだと思ってもいなかったのだ。
きっかけは、一冊の建築雑誌だった。
当時、安藤忠雄の建築にハマっていた私は、近所の図書館である分だけたくさんの建築本を読み漁っていた。
そんな最中、海外のホテル建築に関する本を見つけ、ジェフリー・バワの存在を知ることとなった。
インフィニティプールという言葉を聞いたことがあるだろうか。
有名なところでいうと、シンガポールのホテル、「マリーナベイサンズ」である。
プールの縁が水面で覆われており、その先にある海や空に繋がっているように見えるプールのことである。
ジェフェリー・バワは、このインフィニティプールの生みの親なのだ。
そして、このインフィニティプールが一番最初に生まれたのが、スリランカにある「ヘリタンス・ガンダマラ」というホテルなのである。
建築好きを豪語している私としてみれば、行かないという選択肢はない!そう思って急遽、スリランカの航空券を取ったのであった。もちろんホテルはヘリタンスで。バワの建築したホテルは、スリランカ国内にいくつもあって、調べれば調べるほど、どこのホテルも魅力的に見えた。しかし今回それでもヘリタンスを選んだのは、このホテルが建っている場所に、魅力を感じたからである。
調べればわかることなのだが、このホテルがあるのは、森の中なのだ。
どこからが建物で、どこからが森なのか。まるで、木々の中から自然と浮かび上がってきたようにすら思える。ホテルのロビーには、実際に岩がそのままの姿で宿泊客を出迎えてくれるのだ。
自然と共存するようにバワの建築は今もなお、その姿を保っている。
そんなこんなで慌ただしくも旅行の準備をし、ツアーを予約し、スリランカの地に降り立ったというわけである。
続く